43 / 44
8 -Huit-
サプライズ大作戦
しおりを挟む「堂々とテオを紹介してやりなさい。こっちもサプライズだ」
そう言っておじいちゃんは、お茶目な顔でウィンクをした。
僕はこのサプライズ大作戦を伝えるため、テオの家へ戻った。また布団に潜っているテオの横に座って話をすると、テオは慌てて飛び起き、急いで支度をはじめる。僕も一緒に洗面台の前に立ってボサボサの髪を整えていたら、鏡の中でテオと目が合って、二人で思わず吹き出して笑った。二人で並んで歯磨きをして、身だしなみチェックをしたら最後にちょっとだけキス。すると今度はおじいちゃんから電話があり、お父さんとお母さんが最寄りのバス停を降りて向かってきていると教えてくれた。
「よし、行こう」
頷き合って手を繫ぎ、二人で家を出る。おじいちゃんの家のソファに座って寛いでいても、なんだか妙に落ち着かない。心なしかテオも緊張した顔をしていて、顔が強張っていた。そして連絡があってから数分した後、玄関からチャイムの音がした。
「おっ、来た来た」
おじいちゃんの作戦通り、僕たちはまだ姿を見せず、ソファに座って待つ。そして玄関まで行って二人を迎え入れると、おじいちゃんは軽い挨拶を済ませて家の中へ招き入れた。
「お久しぶりです、お父さん。元気でしたか?」
「ああ元気だ。凛々子さんは?」
「私も元気にやってましたよ」
「父さん、優理は?」
「ん? 奥で待ってるよ」
先導して歩きながら、ソファに座っている僕たちにウィンクする。作戦通り『出ておいで』の合図を見た僕たちは、二人で立ち上がり姿を見せた。
「やあお父さん、お母さん」
「優理! おお、元気そうだな」
「よかった、優理! 今年のクリスマスは仕事が立て込んでて連絡もできなかったけど、元気にしてた? なんだか顔色が良さそう」
二人からのハグを受け、僕は素直にそれを受け止める。
「急すぎてビックリしたよ~」
「年末年始は休みが取れたから、オリヴィエとも話してこっちに来ようって計画してたの。優理がどうしてるか心配だったし、それに……」
何かを言い掛けて、お母さんは僕の後ろに立つテオに目を向けた。そしてお父さんと顔を見合わせ二人でニヤリと笑い合ったと思ったら。
「優理の大切な人にも会いたかったからっ!」
むず痒そうな声でそう言って、お母さんはテオの腕にしがみついた。
「はあ?! えっなんで僕まだ何も」
「ふっふっふっ。隠し通せると思ってるの? 優理の情報ツウがずっとそばに付いてたのに?」
その言葉を聞いて、僕はハッとした。僕の情報ツウ、それは……
「おじいちゃん?!」
「サプラーイズ」
何そのテッテレーみたいなの!
おじいちゃんは両手を広げておどけてみせる。日本のドッキリネタばらしみたいな感じで。
「え、なにわかんない。結局僕が騙されたってこと?」
「騙されたんじゃなくて、サプライズっ。ね、テオさん」
「え? はあ……」
巻き込まれたテオも、お母さんに腕を組まれたまま固まって、僕みたいに困惑した顔をしている。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
年上の恋人は優しい上司
木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。
仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。
基本は受け視点(一人称)です。
一日一花BL企画 参加作品も含まれています。
表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!!
完結済みにいたしました。
6月13日、同人誌を発売しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる