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8 -Huit-
父と母、突然の来訪
しおりを挟むクリスマスが過ぎ、年末ムードで街も忙しなくなっていく中、今日でついに今年が終わるとういう日になった。
テオの家のベッドで目覚め、彼の腕の中で寝返りを打つ。するとサイドテーブルに置いていたスマホが震え、着信を知らせた。時刻は、四時半過ぎ。眠い目を擦りながら薄目でスマホの画面を見ると、そこには母からのメッセージ。
『もうすぐ着くからね~』
「……もうすぐ……着くからね?!」
メッセージを見た瞬間、驚きすぎて声を上げてしまった。
「ん、なに? どうした?」
「あ……ごめんね、起こしちゃった」
「いや、いいよ」
寝ぼけた顔をしてポヤポヤした声を出しながら体を起こし、僕を後ろから抱き締める。肩口に唇を押し付けチュッと音を立てて離したら、肩に顎を乗せたテオが僕のスマホの画面を見て声のトーンが変わった。
「お母さん? 今日くるの?」
「そうみたい……てかもうすぐって、なにどういうこと」
「知らなかったの? 今日くること」
「全然」
訳が分からないので、一先ず確認のメッセージを送ってみる。
『どういうこと? 聞いてないんだけど』
『サプライズだよ~! おじいちゃんには前から伝えてあったの。 オリヴィエさんと二人で行きますねって』
『お父さんも来てるの?』
『うん。今隣にいる~』
少しして送られてきたのは、二人でピースしている自撮り写真。その背景はたしかに、パリの街だ。
「おじいちゃんは、知ってたって……」
そんなこと、一言も言われてない。
「大丈夫? ユウリ」
「僕ちょっと、おじいちゃんのとこ行ってくるね」
寝起きと困惑で回らない頭を何とか働かせながら、僕は取り敢えずベッドの下に散らばっている服を着て、おじいちゃんの自宅に戻った。急いで歩廊を渡って反対側へ行き、家の鍵を開けて玄関に入る。するとおじいちゃんはもうすでに起きていて、テレビの前で優雅にコーヒーなんて飲んでいた。
「おじいちゃん!」
「おお、優理。おはよう」
「き、今日お母さんたちが来るって! なんで教えてくれなかったの!」
「ん? だって凛々子がナイショだって言うから」
「なにそれ! もうどうしよう、テオとのことなんて言えばいい?」
「そんなの普通に話せばいい。『恋人できたよ、一緒に暮らしてるよ』って」
「い、一緒に暮らしてるはマズくない?」
「なんでだ?」
「だって、おじいちゃんと暮らしてると思ってるでしょ?」
「そんなの、生活していれば状況はいくらでも変わるだろ。ここに来て好きな人ができて、恋人になって一緒に暮らしてるなんて、優理が変われた証拠じゃないか。何をためらう必要がある」
「うぅ、た、たしかに」
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