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7 -Sept-
愛しいあなたへ
しおりを挟む「はあ~。もう優理、いい子すぎる! よくアレを許せたね、すごいよ。えらい」
緊張の糸が切れたリュカさんに、思い切り抱き締められた。頭を撫で回され、頬に何度もキスを施される。この状況、日本語が分からなくてもいつもならすぐに引き剥がそうとするテオだけど、何故か黙ったまま割り入ってこない。
「まあ完全に許しきれたわけじゃないけど、でも先生だって、被害者だから……」
「天使かな、優理は。いや菩薩様の化身かもしれない」
「大袈裟だよ」
リュカさんがあまりにも真顔で変なことを言うから困って苦笑したら、「もう一度キスさせて」と言っておでこにチュッとキスをされた。
「はぁ、ホッとしたら喉乾いちゃった。ここで待っててね、ホットチョコレート買ってきてあげる。Et Théo? Que veux-tu boire?(テオは? 何が飲みたい?)」
「ヴァン・ショー」
「D’accord.(了解)俺はホットシードルにしようかな。じゃあ行ってきます」
そう言ってリュカさんも、ここを離れていった。
テオと二人きりになると急に、繋いでいた手の熱さに気付く。
「テオ、ありがとう。僕の手をずっと握っててくれて」
「俺はまだ、アイツを許せない」
イライラした様子で眉間にシワを寄せているテオ。僕のことで、こんなにも怒ってくれている。彼が僕を本気で想ってくれているというのが伝わってきて、ジワジワと胸が熱くなり愛しさが込み上げてくる。
僕は堪らない気持ちになって、思わずテオに抱き着いた。
「……好き。テオが好き。大好き」
「ユウリ……?」
「こんなにも前向きな気持ちでいられるのは、テオのおかげだよ。テオが僕に、愛をいっぱいくれるからだよ。ありがとうテオ。大好き」
込み上げてきた思いを、素直に口にした。この想いが、真っ直ぐ彼に届くようにと。
抱き着いたまま彼の背中に回した腕に少し力を込めると、テオは静かに僕を抱き締め返して、耳元で熱い息を吐いた。
「帰ったら、たくさんキスしていい?」
さっきのトゲトゲしたのとは違う、優しく響く低い声。僕の耳がその声に覆われて、心臓が大きな音で鳴り始める。まるで何かを期待するみたいに、僕の体温が上がる感覚。
「……うん。して? いっぱい」
どうやらその期待が声に出ちゃったみたい。「ユウリ、今その声出すのは……」と言ったテオの耳は真っ赤に染まっている。
「やらしいなぁ、テオは」
ちょっとイタズラ心が疼いて今度はわざと、僕なりの色っぽい声をテオの耳に囁き入れてみたら、テオは僕の体を離して、キュッと鼻を摘まんできた。
「こら、煽るな」
「んぅ」
「帰ったらちゃんと、ベッドで愛してあげるから」
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