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7 -Sept-
いざ! マルシェ・ド・ノエルへ!
しおりを挟む「Bonsoir~」
「テオ!」
「ガスパールの店に行ったら、ここに行くって言ってたって聞いたから」
コーヒーを、とリュカさんに注文して隣に座る。
「ビックリした。まだ仕事終わる時間じゃないのに」
「今日は大切な子とマルシェ・ド・ノエルに行くんだって話したら、早く行ってやれって店長が言ってくれたからさ、切り上げてきた」
僕の頬に手を滑らせて、優しい眼差しで見つめてくる。
「タダイマ」
胸が、張り裂けそうなくらいドキドキしてる。こうして見つめられるだけで、心臓がどっかいっちゃいそう。
「お、おか、オカエリ」
「ふはっ。優理までカタコトになってる。そんなに驚いた?」
そう言ってクスクス笑う姿も、なんだか眩しい。
「マルシェ、どこ行くの?」
リュカさんがテオに、コーヒーを出しながら聞く。
「今日はチュイルリーかなって。あそこは一度デートで行ったことがあるから、雰囲気変わるとどうなるのか見せてあげたくてさ」
「あぁ、あそこはいいね。俺も今日は早く店閉めて出掛けようかな」
「なら一緒に来るか?」
「そうだ、一緒に行きましょ!」
「え、でもそんな、悪いよ~二人の邪魔になるんじゃない?」
「こういうのは楽しい方がいいだろ。今日だけ特別にユウリを貸してやるよ」
「僕、物じゃないんですけどぉ~。でもほんと、リュカさんさえよければ、一緒に行きませんか? ていうか、一緒に行きたい」
「はぁ~、いい子だねぇ優理。ありがとう。じゃあ行こうかな」
お客さんが途切れた所でお店を閉めたら、早速三人でチュイルリー公園へ向かった。
ルーブル美術館の前の広場はきらびやかなイルミネーションで彩られ、マルシェの入り口付近からウインナーの焼ける香ばしい匂いがしてくる。移動式遊園地や小さなスケートリンク、出店も数え切れないほどあってワクワクが止まらない。
「ウインナー食べたい! ハーブのやつ」
「早速食い気が勝ってる」
「いいでしょ! 食べ盛りなの、僕は」
「はいはい」
お店の人が目の前で焼いているウインナー。見ているだけで涎が出てくる。焼き上がったウインナーはすぐに食べやすい大きさに切り分けられ、手に納まるサイズのエコトレイに入れて差し出される。
「Merci beaucoup」
お金を払い、ウインナーを受け取って匂いを嗅ぐ。
「ん~、いい匂い! いただきまーす」
「どう?」
「うん! おいしい! 二人も食べて」
僕を挟んで隣に並んで歩くテオとリュカさんに、フォークでウインナーを刺してそれを口に運んであげたら、二人は顔を見合わせて笑い合った。
「うん、うまい」
「肉のうまみとハーブの香りが鼻から抜けてく瞬間が、堪らないね」
「もっと色んなの食べたい! 早く行こ!」
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