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7 -Sept-

大事にしてくれるのは嬉しいけど……

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 秋の肌寒い季節も、冬になり雪の降る日も、いつだって彼がそばにいてくれた。
 食事に出掛けたり散歩をしたり、デパートや服屋に行って買い物したり、色んな所に連れて行ってくれてたくさんデートをした。
 そして、夜も。彼をしっかり受け入れられるように少しずつ、彼の指で解されていく。僕が「もう入りそう?」と何度聞いても「まだだよ。痛くしたくないから辛抱して」と返される。「先っぽだけでも入るよね?」と言ってみれば「煽らないでユウリ」と諭される。体は隅々まで愛されて、口でしゃぶり合ったり擦り合ったり、お尻を指や舌で気持ち良くしてくれはするのに、挿入は全然してくれない。そうやって焦らしに焦らされ、ついには秋も越えて年末になってしまった。
 クリスマスを目前に控えてどこかソワソワするパリの街。夜はイルミネーションが街を彩り、僕らもテオの仕事終わり、夕食がてらに散歩することが多くなった。

「はぁぁー……もう僕、限界かも」
「なに、どうしたの?」

 今日はテオが働いているパン屋へ迎えに行く前に、リュカさんのカフェへ寄った。いつものカウンター席に座って紅茶を飲み、頬杖をついて息を吐く。日本語で話し出した僕に何かを察してくれたのか、カウンターの向こう側で夜の仕込みをしていたリュカさんは、スツールを持ってきて僕の前に座り、作業をしながら話を聞いてくれた。

「テオが、全然入ってきてくれないんです」
「どこに?」
「僕のなか」

 リュカさんは、おっと! と驚いた顔をして目を見開き僕を見た。

「随分大胆な話だった」

 そう言ってクスクスと笑いながら、また作業の手を動かし始める。

「笑い事じゃないんですよぉ。お尻は解され慣れてきてジンジンするし、動いて何かしてないとウズウズしてくるし……」
「それは大変だ」
「もうそろそろ大丈夫だと思うって言っても、まだだよって。僕の誘いに全然乗ってくれないんです」
「それだけ大事にしてるってことじゃない? 優理のこと」
「うぅ……そう、かもだけど……」

 大事にされ過ぎてるせいで、僕のカラダはおかしくなりかけてる。このままじゃ、わがままで強欲な自分の醜い内面まで引きずり出されそうで、こわい。こんなふうになったのなんて、初めてだ。こんなに欲しくなったのなんて、初めて。

「ダメだ、思い出して疼きそう」
「かわいい~。ホットミルク飲む? 落ち着くかもよ」
「飲みます」

 テオの仕事が終わるまで時間がある。僕はもう少しここでゆっくりすることにした。

「まあ明日はクリスマスイブだし、期待して待ってたら? 一緒に過ごすんでしょ?」
「はい。夕方はおじいちゃんと、おじいちゃんのお友達さんとテオの四人で食事して、夜は二人でって約束してます。クリスマスも」

 フランスで過ごす初めてのクリスマス。すごく楽しみにしてた。

「あ。ほら、噂をすれば」

 リュカさんが店の入り口に目を向け、微笑んだ。

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