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5 -Cinq-
ルーブル美術館近くのチュイルリー公園
しおりを挟む「ふふ、テオ子供みたい」
「はあ?」
抱き着いて髪をぐしゃぐしゃにしてくる。こんな戯れも楽しくて、思わず声を上げて笑ってしまう。するとテオがふいに微笑んで、僕の手を握った。
「さあ、チュイルリー公園に行って食べよう」
「うん!」
握られた手から伝わるテオの体温に、胸がトクンと音を立てる。久しぶりに感じる、この胸の感覚。甘く、優しく、穏やかに鳴る鼓動。
僕は、この感情を知ってる。
彼の顔を見上げれば、キラキラと眩しく輝いている。
もう、チョロくたっていいや。そう思って僕は、彼の手を握り返した。
「ほら、着いたよ」
要塞のような高い壁。そこを潜ると広い敷地が開けて、それだけでド肝を抜かれたっていうのに、少し歩くと左手にはあの有名なルーブル美術館。テレビとかで見たことあるガラスのピラミッドが目に飛び込んできてすぐにわかった。
「ルーブル行きたかった?」
「行きたいっていうか、実物初めて見たから感動して……」
僕が足を止めてつい見入ってしまったら、テオも足を止めて横に立つ。
「じゃあ今度、中に入ってみよう。今日はこっちね」
手を引かれるまま公園の凱旋門を潜って、僕たちはお隣のチュイルリー公園へ足を踏み入れた。
チュイルリー公園は開放感あふれる広大な庭園で、丁寧に剪定された樹木や彫刻が立ち並ぶ。白の地面に緑の芝生が映えて、この風景を見て歩くだけで心が洗われるみたいだ。
しばらく歩いていくと、噴水の広場が見えてきた。噴水の周りには一人掛けのベンチが囲うように並んでいて、色んな人たちがそれぞれ好きなように過ごしている。お喋りしている女性たち。目を瞑って日光浴をしてるおじさん。足を組んでゆったり読書している男性や、噴水を眺めながら何かを食べている老夫婦。この優雅なひと時を堪能している姿に、なんだか心がほっこりする。
「ユウリ、俺たちも座ろう」
ちょうど並んで二つ空いていたベンチに、僕たちも座った。
「疲れてない? 大丈夫?」
「うん。むしろ楽しい!」
「そっか、なら良かった。パン食べようか。どれにする?」
「んー、まずは惣菜パンかな」
「甘いのは最後ね、オッケー」
そう言うとテオはトートバッグの中を探った。そしてカリカリに揚がっているウインナーパンを取り出して一つを僕の前に差し出したら、少し不安そうな目をして僕の様子を窺うように上目遣いで見つめてくる。
「ん?」
「Euh……ソ、ソウザイパン? bon appétit」
初めてテオの口から紡がれる、つたない日本語。でもそれが妙に嬉しくて、息を漏らすように笑ってしまった。
「え、変だった?」
「ううん、変じゃない! ……嬉しい……Merci Théo」
僕のために、日本語を使って覚えようとしてくれている。彼は、本当に優しい人。
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