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5 -Cinq-
テオと始める刺激的な一日
しおりを挟む翌朝支度を済ませると、テオさんが家まで迎えに来てくれた。
「Bonjour!」
「Bonjour, Théo.」
完璧に決め切らない、極めてラフなスタイルで現れたテオさん。もしかして僕に気負わせないための気遣いだったりするのかな。
「今日はいい天気だよ。晴れて良かったね」
「うん」
「Salut Théo, bonjour.」
「Bonjour, monsieur Gaspard.」
声を聞きつけてリビングから出てきたおじいちゃんが、テオに挨拶をしにやってきた。
「今日は優理を頼んだよ」
「はい、任せてください」
それだけ言うとおじいちゃんは、僕の肩を叩いてまた家の中へ入っていく。
「ユウリ、準備はできた?」
「はいっ」
「Allez, on y va !」
さあ行こう!
そう言って僕の手を握ったテオさんは、玄関先から連れ出すように僕の手を引いた。
「今日は、徒歩とバスの旅です。メロンパンのお店に行って、チュイルリー公園で食べながらのんびり過ごして、そしたらバスで移動してアンドレ=シトロエン公園の気球に乗ろう。途中気になる所があったら立ち寄ってもいいからね」
エレベーターで降りてパッサージュの中を通り、いよいよ外の世界へ。
「すごく楽しみ」
まだ見ぬ歩いたことのない場所に連れて行ってくれることに、めちゃくちゃワクワクした。そんな思いで僕が笑い掛けると、テオさんは口をムニュムニュッと動かす。そしてその口を手で覆い隠して絞り出すような声で「かっわいい」と言った。
二人で歩く、パリの街。テオさんと他愛のない話をたくさんして、僕は思った。
父さんと普段からフランス語で話をしてきて良かったって。
もちろん普段の生活では日本語だし、父さんだって日本語が喋れるわけだけど、物心ついた頃から勉強も兼ねて話すようにして来たそれが今、すごく役に立ってる。
大通りへ出てひたすら真っ直ぐ歩いていくと、見慣れた日本語の文字が目に飛び込んできた。漢字の店名と、おにぎりの写真。それを見られただけでホッとしてしまう。
おにぎり、ラーメン、うどん……この辺りは、日本食のお店が軒を連ねている。フランス価格だけどわりと手ごろに食べられるみたい。
「俺もこの辺初めて来たけど、日本食が食べられる店が纏まってあるから、日本の味が恋しくなった時に来るといいね、ここは。あ、ほらメロンパンのお店あった」
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