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おじいちゃんのお店とパッサージュの人たち
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適当に荷物を置いたら、今度は緩い螺旋階段で下りていく。このアパルトマンとパッサージュは、エレベーターと階段で行き来できるみたい。階段を降りながら、昔はこの階段しかなくエレベーターは数年前に設置されたのだと教えてくれた。
鉄の格子扉を開けてパッサージュへ出ると、おじいちゃんが歩きながら案内してくれた。布地や手芸用品を扱うお店、DIYに使う工具などを扱うお店、アクセサリーや宝飾店、骨董品店や内装がオシャレなカフェなど。色んなお店が軒を連ねている。その中に、おじいちゃんが営んでいる書店があった。店の鍵を開けてドアを開け、店内へ入る。壁一面の書棚には、パリのことが書かれた本や、フランスの作家さんの本、それから日本の漫画の翻訳版も置いてある。これを置いてから、日本が好きな人たちがよく集まるようになったらしい。
「家の中にいてもいいし、ここで本を読んでもいい。どこかへ出かけたっていいし、優理の思うまま、自由に過ごすといいよ。ただし、危険なことだけはしないこと。わかったか?」
「わかった。ありがとう、おじいちゃん」
「存分に楽しみなさい」
おじいちゃんは、寛大な人だと思う。こんな僕を受け入れてくれて、本当に感謝しかない。
店内に仕舞っていた本を表に出すのという作業を手伝いながら、お父さんやお母さんの近況を話す。すると地下から突然、扉をノックする音が聞こえてきた。
「ガスパール、戻ったのか?」
その声を聞いておじいちゃんが店の端にある階段を下りドアを開けると、おじいちゃんと同じくらいの見た目をした男性が入ってきた。
「優理、このパッサージュで骨董品店をやってる」
「フェリックスだ。君がガスパールの孫か! 綺麗な顔をしているなぁ、見惚れるようだよ」
「おい俺の孫を口説くなよ」
「こんなじじぃに興味ないだろう。なあ?」
そう言って僕にウィンクするフェリックスさん。そのスマートな振る舞いが、妙にカッコイイ。
「まったく、色ボケが」
おじいちゃんは、面白くなさそうに毒づく。
「ガスパールと俺は若い時からこのパッサージュで一緒にやってるんだ」
「昔馴染みの腐れ縁ってやつだな」
「コイツのこういうところが好きで、なんだかんだ付き合いが長い」
フェリックスさんは豪快に笑いながら、おじいちゃんの肩を抱く。
おじいちゃんも満更ではなさそうに、口角を上げて小さく笑っている。
「だからガスパールの孫は俺の孫みたいなもんだ。ここでわからないことがあったらなんでも聞いてくれ」
「ありがとうございます」
「あぁそうだ、こうしちゃいられないな。みんなにも話さなきゃ」
じゃあな、と言って出て行くフェリックスさん。随分忙しない人だったけど、明るくて良い人そう。
そのあとフェリックスさんの話を聞いたらしいおじいちゃんの昔馴染みだという人たちが、この店に訪れた。
アクセサリー店のマリーさん、手芸店のエヴァンさん……みんな、いい人たちだった。優しくて、あたたかく迎えてくれて、日本から来た僕が聞き取りやすいように、ゆっくり丁寧に言葉を紡いでくれて。だから僕も、甘えてばかりじゃなくてもっとスムーズにみんなとしゃべれるようになりたいと思った。これから暫く、ここで暮らすのだから。
「おじいちゃん」
「ん?」
「ありがとう」
「ゆっくりでいいんだ。自分らしくな」
そう言っておじいちゃんは、僕を抱き締めて背中を撫ででくれた。
鉄の格子扉を開けてパッサージュへ出ると、おじいちゃんが歩きながら案内してくれた。布地や手芸用品を扱うお店、DIYに使う工具などを扱うお店、アクセサリーや宝飾店、骨董品店や内装がオシャレなカフェなど。色んなお店が軒を連ねている。その中に、おじいちゃんが営んでいる書店があった。店の鍵を開けてドアを開け、店内へ入る。壁一面の書棚には、パリのことが書かれた本や、フランスの作家さんの本、それから日本の漫画の翻訳版も置いてある。これを置いてから、日本が好きな人たちがよく集まるようになったらしい。
「家の中にいてもいいし、ここで本を読んでもいい。どこかへ出かけたっていいし、優理の思うまま、自由に過ごすといいよ。ただし、危険なことだけはしないこと。わかったか?」
「わかった。ありがとう、おじいちゃん」
「存分に楽しみなさい」
おじいちゃんは、寛大な人だと思う。こんな僕を受け入れてくれて、本当に感謝しかない。
店内に仕舞っていた本を表に出すのという作業を手伝いながら、お父さんやお母さんの近況を話す。すると地下から突然、扉をノックする音が聞こえてきた。
「ガスパール、戻ったのか?」
その声を聞いておじいちゃんが店の端にある階段を下りドアを開けると、おじいちゃんと同じくらいの見た目をした男性が入ってきた。
「優理、このパッサージュで骨董品店をやってる」
「フェリックスだ。君がガスパールの孫か! 綺麗な顔をしているなぁ、見惚れるようだよ」
「おい俺の孫を口説くなよ」
「こんなじじぃに興味ないだろう。なあ?」
そう言って僕にウィンクするフェリックスさん。そのスマートな振る舞いが、妙にカッコイイ。
「まったく、色ボケが」
おじいちゃんは、面白くなさそうに毒づく。
「ガスパールと俺は若い時からこのパッサージュで一緒にやってるんだ」
「昔馴染みの腐れ縁ってやつだな」
「コイツのこういうところが好きで、なんだかんだ付き合いが長い」
フェリックスさんは豪快に笑いながら、おじいちゃんの肩を抱く。
おじいちゃんも満更ではなさそうに、口角を上げて小さく笑っている。
「だからガスパールの孫は俺の孫みたいなもんだ。ここでわからないことがあったらなんでも聞いてくれ」
「ありがとうございます」
「あぁそうだ、こうしちゃいられないな。みんなにも話さなきゃ」
じゃあな、と言って出て行くフェリックスさん。随分忙しない人だったけど、明るくて良い人そう。
そのあとフェリックスさんの話を聞いたらしいおじいちゃんの昔馴染みだという人たちが、この店に訪れた。
アクセサリー店のマリーさん、手芸店のエヴァンさん……みんな、いい人たちだった。優しくて、あたたかく迎えてくれて、日本から来た僕が聞き取りやすいように、ゆっくり丁寧に言葉を紡いでくれて。だから僕も、甘えてばかりじゃなくてもっとスムーズにみんなとしゃべれるようになりたいと思った。これから暫く、ここで暮らすのだから。
「おじいちゃん」
「ん?」
「ありがとう」
「ゆっくりでいいんだ。自分らしくな」
そう言っておじいちゃんは、僕を抱き締めて背中を撫ででくれた。
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