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愛されてるって錯覚しそう
ナギ先輩の直感
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「何もない、っていうのが心地よかったんだよね。別に趣味が合うわけじゃないし、弾むような会話があるかって言ったらそうでもないわけ。デッサンモデルやってるときに向けられるあの目とさ、俺を特別にしないっていうのが、よかったはずなんだけど……」
「……けど?」
「うん。『恋愛なんて興味ないし、そんな暇は俺には無い』って言葉を耳にした瞬間、ああー……って。ちょっと傷付いてる自分に気づいちゃった。俺、あの人の特別になりたくなってたんだなって。いつの間にかね」
また、嘲笑う。傷付く自分を笑う姿に、何とも言えない気持ちになる。
「なんだろねぇ。俺だって恋愛になんて興味なかったクセにねぇ。でももう遅いじゃん? それ言われたら、ムリじゃん。だからせめて、友人とか、作品のモデルとか、その辺りでテキトーに上手く一緒にいられたらそれでいいやって、自分の恋い慕う気持ちを閉じ込めた。そしたらあの人……大学辞めてパリに行くって……っ」
「えっ、パリ? フランス? なんで?」
「向こうの日本画コレクターに見初められたからってさ。一緒にすらいられなくなっちゃった。なんだよパリって、自由すぎんだろ、ほんと……」
苦い顔をして笑って、瞳には涙が滲んでる。あのいつも軽そうに振る舞ってる先輩の、心に秘めた本音。こんな大事なことを、俺なんかに吐露するなんて。よっぽど余裕をなくしてるんだろうなと思う。
「っ……はは、ごーめんっ! なんかベラベラ喋っちゃった!」
俯いて肩を震わせていたけれど、突然パッと顔を上げて満面の笑みを見せた。俺が今まで見てきた、『いつもの先輩』の顔。
「はーあ。もう、あっくんが聞き上手だから、うっかりうっかり~。今のはぁ、先輩とあっくん、二人だけの秘密だぞっ」
「ちょっ、うざ! ツンツンすんな!」
「あはは! それだよそれ、いいねぇ~」
ほっぺたをムニムニと突かれて、悪態をつくと嬉しそうに笑う。もうすっかり、いつもの知ってるウザ先輩……ナギ先輩だ。
「ちなみにだけど、俺は篤志くんもコータも好きだよ」
「はい?」
「二人は目も口も嘘がないからね。態度も素直でわかりやすい。だから好き」
俺の頬に優しく触れて、指先で軽く叩きながら微笑む。
「だから、二人には俺と同じ後悔はして欲しくないんだ」
「……先輩?」
「はいっ、おしまい! あ、そうだ。あれコータにお願いしてみた?」
「え?」
「んもう、俺がしてもらってたプレイの話!」
「ああ……はい」
急に話が飛ぶから、ついていけずに呆けた返事をしてしまった。
「で、どうだった?」
「どうって……」
「好奇心旺盛な篤志くんならもう、コータにお願いしてみたでしょ。どう、耐えられた?」
まるで俺のことを解ってる口振り。目を輝かせて俺を見つめる先輩の方が、好奇心旺盛なんじゃないかと思う。
「……耐え……られなかったです」
「やっぱり?! あっくん、このプレイは絶対気に入ると思ったんだ」
嬉しそうにテンション上がってる。まるで自分のことのように喜んで、ナギ先輩はやっぱり、変わった人だ。
「なんで、わかるんですか」
「え、直感」
テーブルに頬杖をつき、俺の顔を覗き込んでニコッと笑う。直感とか言いつつ全て見通されてる感覚。この人の観察眼に、思わず息を詰めて生唾を飲む。
「あっくん、コータのこと好きでしょ」
「は?!」
「……けど?」
「うん。『恋愛なんて興味ないし、そんな暇は俺には無い』って言葉を耳にした瞬間、ああー……って。ちょっと傷付いてる自分に気づいちゃった。俺、あの人の特別になりたくなってたんだなって。いつの間にかね」
また、嘲笑う。傷付く自分を笑う姿に、何とも言えない気持ちになる。
「なんだろねぇ。俺だって恋愛になんて興味なかったクセにねぇ。でももう遅いじゃん? それ言われたら、ムリじゃん。だからせめて、友人とか、作品のモデルとか、その辺りでテキトーに上手く一緒にいられたらそれでいいやって、自分の恋い慕う気持ちを閉じ込めた。そしたらあの人……大学辞めてパリに行くって……っ」
「えっ、パリ? フランス? なんで?」
「向こうの日本画コレクターに見初められたからってさ。一緒にすらいられなくなっちゃった。なんだよパリって、自由すぎんだろ、ほんと……」
苦い顔をして笑って、瞳には涙が滲んでる。あのいつも軽そうに振る舞ってる先輩の、心に秘めた本音。こんな大事なことを、俺なんかに吐露するなんて。よっぽど余裕をなくしてるんだろうなと思う。
「っ……はは、ごーめんっ! なんかベラベラ喋っちゃった!」
俯いて肩を震わせていたけれど、突然パッと顔を上げて満面の笑みを見せた。俺が今まで見てきた、『いつもの先輩』の顔。
「はーあ。もう、あっくんが聞き上手だから、うっかりうっかり~。今のはぁ、先輩とあっくん、二人だけの秘密だぞっ」
「ちょっ、うざ! ツンツンすんな!」
「あはは! それだよそれ、いいねぇ~」
ほっぺたをムニムニと突かれて、悪態をつくと嬉しそうに笑う。もうすっかり、いつもの知ってるウザ先輩……ナギ先輩だ。
「ちなみにだけど、俺は篤志くんもコータも好きだよ」
「はい?」
「二人は目も口も嘘がないからね。態度も素直でわかりやすい。だから好き」
俺の頬に優しく触れて、指先で軽く叩きながら微笑む。
「だから、二人には俺と同じ後悔はして欲しくないんだ」
「……先輩?」
「はいっ、おしまい! あ、そうだ。あれコータにお願いしてみた?」
「え?」
「んもう、俺がしてもらってたプレイの話!」
「ああ……はい」
急に話が飛ぶから、ついていけずに呆けた返事をしてしまった。
「で、どうだった?」
「どうって……」
「好奇心旺盛な篤志くんならもう、コータにお願いしてみたでしょ。どう、耐えられた?」
まるで俺のことを解ってる口振り。目を輝かせて俺を見つめる先輩の方が、好奇心旺盛なんじゃないかと思う。
「……耐え……られなかったです」
「やっぱり?! あっくん、このプレイは絶対気に入ると思ったんだ」
嬉しそうにテンション上がってる。まるで自分のことのように喜んで、ナギ先輩はやっぱり、変わった人だ。
「なんで、わかるんですか」
「え、直感」
テーブルに頬杖をつき、俺の顔を覗き込んでニコッと笑う。直感とか言いつつ全て見通されてる感覚。この人の観察眼に、思わず息を詰めて生唾を飲む。
「あっくん、コータのこと好きでしょ」
「は?!」
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