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どんなプレイでもキミが望むなら
キス
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「ないよ」
「ほんと? ナギさんとも、ない?」
「ナイ」
「そか。……じゃあセフレの中では俺が初めてだ。やったね、一歩リードできちゃった」
少しの間。そして取り繕うような声色。
その変化が気になって、徐に横を向き篤志の顔を見ると、その顔が俺の方を向いて、同じように体勢を変えた。
じっと目が合ったまま、篤志の口が俺を探るようにゆっくり開かれる。
「……キス……したい」
あっくんの視線が、俺の唇へ移動する。
「航ちゃんから、して」
返事を敢えて声には出さず、あっくんの唇に視線を落としたら、それが薄く開いてゆっくり近づいてきた。
俺は静かに顔を寄せて、触れ合わせるだけのキスをする。
そのまま二度、三度と互いに唇を押しつけたら、あっくんがじわっと時間をかけて離れていく。まるで名残を惜しむように。
「……ありがと」
視線を外して微笑む瞳が、寂しそうに見えるのは何故なんだろう。
胸の辺りがシクリと傷んで、適切な言葉が返せない。
「俺、航ちゃんのセフレになれてよかった」
そう言って篤志は仰向けに直ってまた天井を見上げ、カラッと明るい声を放つ。
「今までは俺だけ気持ちよくしてもらってたけどさ、航ちゃんとセフレになったらなんか、豪華版の特典がついてきた、みたいな」
「はは、なにそれ」
「航ちゃんと二人で気持ちよくなれるって、セフレの特権って感じ。みんな航ちゃんと、こんなイイコト味わってたんだね……」
ごめん、あっくん。セフレだからじゃ、ないんだよ。
他の人たちとは、今まであんなプレイをしたことない。
今まで、アプリを通して会ってきた人たちとは、ただ相手の要望を叶えてあげるだけだった。Mっけのある人たちのヘンタイ的欲求を、満たしてあげるだけだった。
あっくんだから、した。
茹で上がるような愛情をかけた、濃密な竿のぶつけ合いも、セックスを連想させるような行為も。全部、あっくんだから。
「……あっくん」
「ん?」
「もっかい、してもいい? キス」
「ん。して……」
上体を起こして片肘を着いた。見下ろす篤志は、豆電球の薄明りでも、俺のキスを期待して瞳が輝いているのがわかる。
可愛いな、ほんと。なんでそんな顔してるんだろ。
俺のことが好き、みたいな顔。
絶対俺の勘違いなのに、その勘違いをうっかり信じ込みたくなるような表情と、舌で軽く唇を濡らす仕草に、脳がバグる。
「っ……」
その濡れた唇に、俺は自ら唇を寄せて触れ合わせた。
柔らかく、しっとりした篤志の唇。もう少しだけ重みをもって押し付ける。三秒、五秒……いや十秒。隙間を無くすようにそのまま口を動かしたら、篤志が鼻から小さく息を漏らす。
あぁ、好きだ。言葉にできない代わりに、この想い、キスで伝わったりしないかな。
なんて、卑怯だよな。そんなの。
唇をゆっくり離して篤志の潤んだ瞳を見つめると、己の甘さについ嘲笑めいた笑みが零れる。
「おやすみ」
篤志の揺れる瞳には気付かないふりをして、俺はズルい痕跡を消すように、親指で篤志の唇を軽く擦った。
⇒『愛されてるって錯覚しそう』へ続く
「ほんと? ナギさんとも、ない?」
「ナイ」
「そか。……じゃあセフレの中では俺が初めてだ。やったね、一歩リードできちゃった」
少しの間。そして取り繕うような声色。
その変化が気になって、徐に横を向き篤志の顔を見ると、その顔が俺の方を向いて、同じように体勢を変えた。
じっと目が合ったまま、篤志の口が俺を探るようにゆっくり開かれる。
「……キス……したい」
あっくんの視線が、俺の唇へ移動する。
「航ちゃんから、して」
返事を敢えて声には出さず、あっくんの唇に視線を落としたら、それが薄く開いてゆっくり近づいてきた。
俺は静かに顔を寄せて、触れ合わせるだけのキスをする。
そのまま二度、三度と互いに唇を押しつけたら、あっくんがじわっと時間をかけて離れていく。まるで名残を惜しむように。
「……ありがと」
視線を外して微笑む瞳が、寂しそうに見えるのは何故なんだろう。
胸の辺りがシクリと傷んで、適切な言葉が返せない。
「俺、航ちゃんのセフレになれてよかった」
そう言って篤志は仰向けに直ってまた天井を見上げ、カラッと明るい声を放つ。
「今までは俺だけ気持ちよくしてもらってたけどさ、航ちゃんとセフレになったらなんか、豪華版の特典がついてきた、みたいな」
「はは、なにそれ」
「航ちゃんと二人で気持ちよくなれるって、セフレの特権って感じ。みんな航ちゃんと、こんなイイコト味わってたんだね……」
ごめん、あっくん。セフレだからじゃ、ないんだよ。
他の人たちとは、今まであんなプレイをしたことない。
今まで、アプリを通して会ってきた人たちとは、ただ相手の要望を叶えてあげるだけだった。Mっけのある人たちのヘンタイ的欲求を、満たしてあげるだけだった。
あっくんだから、した。
茹で上がるような愛情をかけた、濃密な竿のぶつけ合いも、セックスを連想させるような行為も。全部、あっくんだから。
「……あっくん」
「ん?」
「もっかい、してもいい? キス」
「ん。して……」
上体を起こして片肘を着いた。見下ろす篤志は、豆電球の薄明りでも、俺のキスを期待して瞳が輝いているのがわかる。
可愛いな、ほんと。なんでそんな顔してるんだろ。
俺のことが好き、みたいな顔。
絶対俺の勘違いなのに、その勘違いをうっかり信じ込みたくなるような表情と、舌で軽く唇を濡らす仕草に、脳がバグる。
「っ……」
その濡れた唇に、俺は自ら唇を寄せて触れ合わせた。
柔らかく、しっとりした篤志の唇。もう少しだけ重みをもって押し付ける。三秒、五秒……いや十秒。隙間を無くすようにそのまま口を動かしたら、篤志が鼻から小さく息を漏らす。
あぁ、好きだ。言葉にできない代わりに、この想い、キスで伝わったりしないかな。
なんて、卑怯だよな。そんなの。
唇をゆっくり離して篤志の潤んだ瞳を見つめると、己の甘さについ嘲笑めいた笑みが零れる。
「おやすみ」
篤志の揺れる瞳には気付かないふりをして、俺はズルい痕跡を消すように、親指で篤志の唇を軽く擦った。
⇒『愛されてるって錯覚しそう』へ続く
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