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航ちゃんに視姦されてみたい

普通の会話が心地いい②

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「冷めないうちに食べよ?」
「だね。いただきます」
「いただきまーっす」

 ハフハフして、焼肉を頬張る。肉に絡んだ炭火風味の甘辛いたれが鉄板で焼かれて香ばしくなっていて、ご飯と一緒に食べるともう最高!
 うん、やっぱ焼肉に変更して正解だったわ。航ちゃんはどうかな?
 そう思ってチラッと隣に目を向けてみたら、俺を見て微笑んでいる航太朗と目が合った。

「っ! ンっげふ」
「あっくん大丈夫?」
「……びっ、くりしたぁ……ッなん、ゴホっ」
「ほら、水」

 やばい。やばいやばい。不意打ち過ぎる。てかなんで俺のこと見てんの。あーもう心臓ビックリしすぎて一瞬止まったかと思った。
 正常に飲み込み損ねた肉汁やらなんやらが気管に入って、咳が止まらない。
 受け取ったコップの水を飲み干すと、航ちゃんが背中を強めに擦ってくれた。

「ん、ありがと。てかなんだよ、もぉ」
「ごめん。あっくんが幸せそうに食べてるから、見ちゃった」

 あぁぁぁぁー……ダメだ、すき。
 今めっちゃ胸がキュゥンってなったのが、自分でハッキリわかった。
 俺が美味しそうに食べてるだけで、そんな顔すんの?
 え? 前からそんなだったっけ?
 まるで航ちゃんも、俺のこと好き、みたいな……

 っていやいや待て待てうぬぼれるなって。そんなわけないんだから。航ちゃんは親友。この優しさは、みんなのもの。俺が特別なわけじゃない。落ち着け俺、そうだ深呼吸しろ。

「な、なんだよそれぇー。ははは」
「そういえばさ、高校の時、よくみんなで地元の焼肉屋に行ったよね」
「あぁー行ったね! なんか節目とかで、テスト終わりとかな」
「体育祭の後は食欲エグかったよね。あれ覚えてる? ケンがさ……」

 よし、そうだ、大丈夫。こうして普通の話をしていれば、胸の高鳴りだって治まっていく。

「あの店の味知ったら、チェーン店は味気なく感じるよね」
「わかるぅー。量を食うには食べ放題がいいけど、肉と向き合うならあの店だよなやっぱ」
「今度向こう帰ったら行こうか、またみんなで」
「おお、いいね! へへ、航ちゃんの先々の予定ゲットぉー」
「あははっ、なにそれ」

 航ちゃんとこうして普通に会話できるのは、やっぱりいい。すごく心地好くて、好きだ。
 暖かい日差しとそよぐ風。穏やかな航太朗の声も弾んでいて、時折見せる笑顔がキラキラで眩しい。
 俺のせいでカンケイを歪ませてしまったけど、でもごめんね。俺は航ちゃんを、どうしても手放したくないや。
 航ちゃんが許してくれる限り、俺はずっと、囲われ続けたい。

「――……ごめん、あっくん」
「へ?」
「ごめん」
「な、なにが」

 会話が途切れて、二人無言で景色を眺めながら定食を食べていたら、唐突に謝られた。
 喉の奥から絞り出したような、小さな声で。

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