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航ちゃんに視姦されてみたい
会いたくない人
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翌日、午前の講義を終えて学食に向かっていると、中庭の通りで偶然会いたくない人に出会ってしまった。
「おぉ、篤志くんだ。やっほー」
「うわ……」
「ねえ、うわって酷くない?」
とか言いつつナギ先輩は、面白そうにクツクツ笑っている。
俺が露骨に嫌な顔をしてみせているというのに、気にも留めていない。それどころか、そばに寄ってきて勝手に腕を組んできた。覗き込んでくる目と合わないように、俺は視線を逸らす。
「敵意剥き出しだねぇ~」
「わかってるんだったら離れてください」
強めに腕を引き解いても、楽しそうに笑みを浮かべている。
「で? 仲直りしたの? コータ……あぁ、航太朗くんと」
なんだ? 呼び名マウントか? 自分には特別な呼びかたがあるって? わざとらしく一度口にして言い換えるとか、この人絶対性格悪いだろ。
「はい、しましたけど?」
「ふぅ~ん。よかったじゃん」
「えぇ、よかったです。これからは俺も、航ちゃんに囲ってもらえることになったんで」
「――……ん?」
「セフレにしてくれたんですよ」
ドヤっとした顔をしたのは、自分でもわかった。ちょっと片方の口角が上がってしまったから。すると、そんな俺を見たナギ先輩の表情が一変した。ポカンとした顔をしたあとピクッと一瞬眉間にシワを寄せる。
「え、待ってセフレ?」
「はい」
明らかに動揺している。俺を見る瞳が、揺れている。
「コータはそれでいいって言ったの?」
「納得してくれました。優しいんですよ、航ちゃん。昨日、他の人たちともしてるなら俺にもしてって言ったら、キス、してくれましたし」
先輩は、みるみる呆れ顔になっていった。そして後頭部辺りの髪をクシャッと掴んだ後、俺の目をじっと見据えて声のトーンが一段低くなる。
「あのさ篤志くん。俺に止める権利なんてないけど、それは……良くないと思うな」
「は?」
「俺たちはプレイで、コータに相手してもらってる。あくまでも、相手してもらってるの。キスもプレイ中たまにすることがあっても、本気のやつじゃない。でも君らはさ、違くない?」
「何が違うんですか? 俺だって、相手してもらってますよ」
「そうじゃなくて」
焦っているのか? 俺と航ちゃんのカンケイに。ただの親友ポジだった俺がセフレに発展したから、自分の特別枠が奪われるとでも?
俺が好きでも、航ちゃんは違う。だから、『相手してもらってる』で間違ってはないはず。
何がそうじゃないっていうんだ。
俺は彼を煽るように迫ると、近い距離で見下ろした。
「とにかく。これで俺も、先輩に並びましたよ」
「並んだ……って……」
俺より身長の低い先輩が、怪訝そうな顔で見上げてくる。
「あなたから奪ってみせますから、俺」
「え? あ、うん。それはどうぞ」
スン。突然冷静になったように、そんな顔をした。
「軽いな。余裕綽々ってやつですか」
「いやいや」
「先輩は、航ちゃんのお気に入りなんでしょ?」
「あぁ俺がね? でもあいつはそう思ってないよ。にしても……」
先輩がふと顔を下に向け、何かをボソッと呟いた。俺のことを言ってそうなのに、小さすぎて聞き取れない。思わず眉間にシワを寄せたら、再び顔を上げた先輩が俺と目を合わせてニコリと笑う。
「……ま。二人がその関係で踏み出したなら、期待に応えてあげちゃおうかな。さっき奪うとか言ってたよね。いいよ、俺も本気出すから」
「おぉ、篤志くんだ。やっほー」
「うわ……」
「ねえ、うわって酷くない?」
とか言いつつナギ先輩は、面白そうにクツクツ笑っている。
俺が露骨に嫌な顔をしてみせているというのに、気にも留めていない。それどころか、そばに寄ってきて勝手に腕を組んできた。覗き込んでくる目と合わないように、俺は視線を逸らす。
「敵意剥き出しだねぇ~」
「わかってるんだったら離れてください」
強めに腕を引き解いても、楽しそうに笑みを浮かべている。
「で? 仲直りしたの? コータ……あぁ、航太朗くんと」
なんだ? 呼び名マウントか? 自分には特別な呼びかたがあるって? わざとらしく一度口にして言い換えるとか、この人絶対性格悪いだろ。
「はい、しましたけど?」
「ふぅ~ん。よかったじゃん」
「えぇ、よかったです。これからは俺も、航ちゃんに囲ってもらえることになったんで」
「――……ん?」
「セフレにしてくれたんですよ」
ドヤっとした顔をしたのは、自分でもわかった。ちょっと片方の口角が上がってしまったから。すると、そんな俺を見たナギ先輩の表情が一変した。ポカンとした顔をしたあとピクッと一瞬眉間にシワを寄せる。
「え、待ってセフレ?」
「はい」
明らかに動揺している。俺を見る瞳が、揺れている。
「コータはそれでいいって言ったの?」
「納得してくれました。優しいんですよ、航ちゃん。昨日、他の人たちともしてるなら俺にもしてって言ったら、キス、してくれましたし」
先輩は、みるみる呆れ顔になっていった。そして後頭部辺りの髪をクシャッと掴んだ後、俺の目をじっと見据えて声のトーンが一段低くなる。
「あのさ篤志くん。俺に止める権利なんてないけど、それは……良くないと思うな」
「は?」
「俺たちはプレイで、コータに相手してもらってる。あくまでも、相手してもらってるの。キスもプレイ中たまにすることがあっても、本気のやつじゃない。でも君らはさ、違くない?」
「何が違うんですか? 俺だって、相手してもらってますよ」
「そうじゃなくて」
焦っているのか? 俺と航ちゃんのカンケイに。ただの親友ポジだった俺がセフレに発展したから、自分の特別枠が奪われるとでも?
俺が好きでも、航ちゃんは違う。だから、『相手してもらってる』で間違ってはないはず。
何がそうじゃないっていうんだ。
俺は彼を煽るように迫ると、近い距離で見下ろした。
「とにかく。これで俺も、先輩に並びましたよ」
「並んだ……って……」
俺より身長の低い先輩が、怪訝そうな顔で見上げてくる。
「あなたから奪ってみせますから、俺」
「え? あ、うん。それはどうぞ」
スン。突然冷静になったように、そんな顔をした。
「軽いな。余裕綽々ってやつですか」
「いやいや」
「先輩は、航ちゃんのお気に入りなんでしょ?」
「あぁ俺がね? でもあいつはそう思ってないよ。にしても……」
先輩がふと顔を下に向け、何かをボソッと呟いた。俺のことを言ってそうなのに、小さすぎて聞き取れない。思わず眉間にシワを寄せたら、再び顔を上げた先輩が俺と目を合わせてニコリと笑う。
「……ま。二人がその関係で踏み出したなら、期待に応えてあげちゃおうかな。さっき奪うとか言ってたよね。いいよ、俺も本気出すから」
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