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キミのそばにいられるなら何だって叶えてあげよう
囲ってあげるからそばにいさせて
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「意味ってなに。わかんない。俺が航太朗の言うソッチ側だったらいいわけ?」
「とにかくちょっと冷静になろう? あっくん。意地になってすることじゃないから、こういうのは」
「……はは、ほら。やっぱり迷惑なんじゃん」
「だからそうじゃないって」
篤志の口から漏れる、空笑い。その瞳は悲しげに揺れたようにも見える。
あぁ。このまま想いを伝えられたら、どれだけいいだろう。『好きだから、大切にしたいんだ』って今、言えたなら……
優しくこの腕で包み込んで、その目尻にキスできたなら……
「だったらどうすればいいんだよ。女の子とも別れてフリーになった、なのにまだそうやって拒否する。あと俺は何をしたら、他の人たちみたいに航ちゃんに囲ってもらえるの?」
「あっくんだって、こだわってる。なんでそこまでして俺に囲われたいの」
「そ、れは……っ」
篤志は言葉を詰まらせ、そのまま俯いてしまった。
「あっくん?」
顔を覗き込んでみると、眉根を寄せて困ったように瞳を泳がせている。手は拳を握ったり開いたり。何かを言いたそうなのに、それはどうしても口にできないみたい。そして次にはギュッと目を瞑り、そっと開くと同時に口角を上げた。
「ごめんっ! 迷惑じゃないかもだけど、こんなのやっぱ困るよな」
「え、いや……」
「さっきもほんとは、アプリで相手見つけて会ってきたんだ。航ちゃん教えてくれないから、自分で調べてさ」
「は?」
「だけど、ダメだったんだよね。ホテル入る前に怖気づいちゃって。航ちゃんじゃないと俺、ダメみたいで……」
未遂で終わってたことに、ホッとした。俺がダメって言うから篤志は、ゲイでもないのに無茶をして……
ああだから、帰ってきた時あんなにも沈んだ顔をしてたのか。
だからこんなにも、必死になってるんだ。
もう、そんな無茶をさせたくない。ここで俺が頷けば済むことだ。意味とか、そんなのどうでもいい。篤志が困ってる。俺は他の人が篤志に触るのは堪えられないし、もうアプリで相手探しなんて、してほしくない。それに俺が篤志の提案を受け入れることで、この先も離れずにいられるなら……
条件はもう、揃ってるじゃないか。
「でもそこまで嫌なら本当にもう」
「わかったするから! だから、勝手に終わりにしないで」
篤志が放とうとしている次の言葉を聞きたくなくて、俺は咄嗟に声を上げて遮っていた。
「俺に囲われたいならそうしてあげるし、みんなと同じことされたいなら、篤志の望むとおりにしてあげる」
「え、ほんと?」
「ただ、あとで後悔するのはナシだよ。きっと篤志が思ってる以上に酷いことするし引くようなこともする。それでもいいなら、っ」
「してよ、今すぐ」
早口で捲し立てるように話していると、突然ふわりと篤志に抱き着かれた。
耳元に篤志の息が掛かる。穏やかなようでいて、少し棘のある声。
「酷いこととか引くようなことを、他の人たちにはしてるんだったら、俺にもして」
まるで我儘を言うように語気を強める。どんな酷いことをされるのかもわからないのに、俺のすること全てを受け止めたいと言っているようにも聞こえて、思わず生唾を飲み込んだ。
こういうところが、妙にかっこいい。俺はきっと一生、この強さには敵わないんだろう。
「――……わかった」
そう返事をして秒にも満たない間に腕を引かれ、俺はそのまま家の中へ連れ込まれた。
「とにかくちょっと冷静になろう? あっくん。意地になってすることじゃないから、こういうのは」
「……はは、ほら。やっぱり迷惑なんじゃん」
「だからそうじゃないって」
篤志の口から漏れる、空笑い。その瞳は悲しげに揺れたようにも見える。
あぁ。このまま想いを伝えられたら、どれだけいいだろう。『好きだから、大切にしたいんだ』って今、言えたなら……
優しくこの腕で包み込んで、その目尻にキスできたなら……
「だったらどうすればいいんだよ。女の子とも別れてフリーになった、なのにまだそうやって拒否する。あと俺は何をしたら、他の人たちみたいに航ちゃんに囲ってもらえるの?」
「あっくんだって、こだわってる。なんでそこまでして俺に囲われたいの」
「そ、れは……っ」
篤志は言葉を詰まらせ、そのまま俯いてしまった。
「あっくん?」
顔を覗き込んでみると、眉根を寄せて困ったように瞳を泳がせている。手は拳を握ったり開いたり。何かを言いたそうなのに、それはどうしても口にできないみたい。そして次にはギュッと目を瞑り、そっと開くと同時に口角を上げた。
「ごめんっ! 迷惑じゃないかもだけど、こんなのやっぱ困るよな」
「え、いや……」
「さっきもほんとは、アプリで相手見つけて会ってきたんだ。航ちゃん教えてくれないから、自分で調べてさ」
「は?」
「だけど、ダメだったんだよね。ホテル入る前に怖気づいちゃって。航ちゃんじゃないと俺、ダメみたいで……」
未遂で終わってたことに、ホッとした。俺がダメって言うから篤志は、ゲイでもないのに無茶をして……
ああだから、帰ってきた時あんなにも沈んだ顔をしてたのか。
だからこんなにも、必死になってるんだ。
もう、そんな無茶をさせたくない。ここで俺が頷けば済むことだ。意味とか、そんなのどうでもいい。篤志が困ってる。俺は他の人が篤志に触るのは堪えられないし、もうアプリで相手探しなんて、してほしくない。それに俺が篤志の提案を受け入れることで、この先も離れずにいられるなら……
条件はもう、揃ってるじゃないか。
「でもそこまで嫌なら本当にもう」
「わかったするから! だから、勝手に終わりにしないで」
篤志が放とうとしている次の言葉を聞きたくなくて、俺は咄嗟に声を上げて遮っていた。
「俺に囲われたいならそうしてあげるし、みんなと同じことされたいなら、篤志の望むとおりにしてあげる」
「え、ほんと?」
「ただ、あとで後悔するのはナシだよ。きっと篤志が思ってる以上に酷いことするし引くようなこともする。それでもいいなら、っ」
「してよ、今すぐ」
早口で捲し立てるように話していると、突然ふわりと篤志に抱き着かれた。
耳元に篤志の息が掛かる。穏やかなようでいて、少し棘のある声。
「酷いこととか引くようなことを、他の人たちにはしてるんだったら、俺にもして」
まるで我儘を言うように語気を強める。どんな酷いことをされるのかもわからないのに、俺のすること全てを受け止めたいと言っているようにも聞こえて、思わず生唾を飲み込んだ。
こういうところが、妙にかっこいい。俺はきっと一生、この強さには敵わないんだろう。
「――……わかった」
そう返事をして秒にも満たない間に腕を引かれ、俺はそのまま家の中へ連れ込まれた。
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