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ゲイの親友に囲われたいと願う彼女持ちのサイテーな俺の話

ごめんね、ありがとう、バイバイ

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 そうだ。好き。
 俺は航太朗が好きなんだよ。
 ただ触れられたいって願望が、いつの間にか恋に変わってたんだ。
 俺も航ちゃんの肌に触れたい。キスもしてみたいし、二人で気持ちよくなることしたい。
 いつから? そんなのわからないけど、焦がれる想いが募ってた。

 けどそんなの、今更感ハンパないけどね。こんなに困らせて、もう……親友にも戻れない。
 だいたい、『好き』なんて言葉、俺には言う資格もない。

「……わかった。ごめんね、航太朗。今までありがとう」
「え、なに」
「いっぱい気持ちよくしてくれて、ワガママ聞いてくれて、航ちゃんといる時間が一番幸せだったよ」

 航太朗の顔を見ずに立ち上がる。口元にだけは、笑みを浮かべて。

「……あっくん?」

 戸惑うような航太朗の声。いま顔見ちゃったら、絶対泣きそう。

「もう、迷惑掛けないから。もう、これで終わり」
「ちょっと待って」

 服を着ようと航太朗のそばを離れたら、追い掛けてきて手首を強く掴まれた。

「痛いよ航ちゃん。服着れないから放して」
「迷惑じゃないから。俺が……っ」

 航ちゃんが何かを言い掛けた瞬間、テーブルに置いてあったスマホが鳴った。

「鳴ってる、スマホ。メッセきたんじゃない? 返してあげなよ」
「いや……」

 背中越しに聞く、躊躇ってる航太朗の声。俺は俯くまま振り返って航太朗の手を掴み、俺の手首から剥がしてソファーの方へ追いやった。
 航太朗が俺に言われるままソファーの前のテーブルからスマホを取り確認している間に、俺は適当に服を着る。そしてバッグを引っ掴んで玄関へ向かうと、また追い掛けてきた航太朗に二の腕を掴まれた。

「待ってって、あっくん!」
「なんでだよもういいって! 俺のこと他の男の子たちみたいに囲ってくれないならほんと、もう」
「だから! どうしちゃったんだよ、なんで急にそんなこと」
「急じゃないから!」

 思わず振り返って反論したら、困った顔をした航太朗と、目が合ってしまった。

「っ……やめてよ、そんな顔」

 あーやばい。涙腺ぶっ壊れる寸前。

「あっくん……」

 動揺して瞳が揺れてる。こんな顔させたいわけじゃ、なかったのに。

「……ごめんね、航ちゃん」

 俺は最後に、渾身の笑顔を航ちゃんに見せた。けどたぶん、上手く笑えてなかった気がする。泣くのを堪えて喉が絞まってたから変な声になってたし、口元もちょっと引きつってたかもしれない。だって航ちゃん、眉間にシワ寄っちゃったし。

 あーあ、ほんと、最後までどうしようもないね、俺。

 航ちゃんの手が緩んだ隙に腕を振りほどいて、靴に爪先を突っ込んで急いで玄関を飛び出した。
 俺を呼ぶ航ちゃんの声が、玄関ドアの中に消えていく。

 これでもう、本当に終わり。

 俺のワガママから始まった関係を、身勝手な理由で終わらせた。
 そんな俺に、涙を流す資格なんてない。

 熱くなった目を強く瞑って、両手で頬を思い切り叩いて自戒すると、俺は同じマンションの別の階にある自宅へ急いで帰った。




⇒次章『キミのそばにいられるなら何だって叶えてあげよう』
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