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ゲイの親友に囲われたいと願う彼女持ちのサイテーな俺の話
親友、篤志の心中
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「好きだよ、あっくん」
意識の遠く向こうから、親友のそんな声が聞こえた気がした。
髪を梳くように頭を撫でられる感覚。その優しい手が、俺の胸の真ん中をじんわりと温かくしていく。そして、おでこに触れる柔らかな感触。これはきっと、唇だ。少し長く押し付けられ、鼻から細く漏れた息が、前髪の根元にかかってくすぐったい。
一瞬落ちていた意識が、ゆっくりと覚醒していく。
航太朗は俺が眠ってしまっていると思ってるんだ、きっと。普段の航太朗は、俺にこんなことしないから。
ここで俺が目を薄っすら開けようもんなら、この親友はきっと慌てふためいて今の行為を無かったことにしようとするんだろう。「ごめんね、ジョウダン」なんて、困ったように笑って。
(ジョウダンじゃ、なくていいのに……)
航太朗の唇がゆっくりと、離れていく。そしてすぐあとに、親指を額に押し当てて二、三度擦られる感触があった。まるで、今俺にくれた唇の痕跡を消すかのように。
「……おやすみ」
優しくも、切ない声色。ベッドのスプリングが軋んで、航太朗が離れていく。
部屋の扉を開けて出て行く音。そしてすぐ別の扉の開閉音があって、浴室からシャワーの音が聞こえてきた。
(抜いてんのかな、今)
硬くなった航太朗のモノが腰のあたりに時折掠める感触は、毎回あって分かっていた。けれど航太朗の手で乱されながら、さりげなくカラダを擦り付けようとするといつも逃げられてしまう。きっと、自分の欲望を俺に悟らせないようにしてるからだ。
親友だから。そして多分俺が、ノンケってやつだから。
航太朗は自分の欲を一切俺に見せようとしない。俺がノンケだから、ゲイである自分の欲を見せたらもう親友じゃいられなくなるとか、そんなクダラナイこと思ってるんだよ、どうせ。
俺の頼みはすんなり聞いてくれて、こうして付き合ってくれてるっていうのに。俺は性癖も、淫らに乱れる姿も丸裸になって晒してるっていうのに。
(けどアイツはどうせ、あっくんはいいんだよって、笑うんだろうな)
ゲイだとかノンケだとか、括りに拘って縛られてんのはアイツ自身だ。隔てた壁を越えさせてくれない。俺がわざとらしくエッチな言葉を口にして煽っても、なかなか誘いに乗ってきてくれない。ちんこは、硬くしてるくせに。
俺だって、誰にいじられても感じるわけじゃない。航太朗が触るから、乳首が気持ちいいんだ。
本当は、彼女にいじってもらったことがある。だけど、優しくされても痛くされても、何も感じなかった。何も。ちんこだってあんなふうにはならないし、ただ、男の本能として勃つってだけ。彼女とのセックスも本当は……きもちよくない。
高校の時、航太朗にふざけてシャツ越しに触られたあの日から、乳首に感じたビリッと微弱の電流が走ったような感覚が、忘れられなくなった。
自分で触ってもダメ。試しに他の友人何人かに触ってもらってみてもダメだった。
航太朗だけ。航太朗の指だけが、俺の内側を疼かせる。
それがわかってしまったら、俺は乳首を触りながらオナニーするのがやめられなくなった。あのたった一度ふざけて触られた感触を思い出して、航太朗にいじられてるって想像しながら自分で摘まんで捏ねて。高校の時から今まで、そうやって抜いてたんだ。ずっと。
(やば……思い出したら、勃ってきちった)
意識の遠く向こうから、親友のそんな声が聞こえた気がした。
髪を梳くように頭を撫でられる感覚。その優しい手が、俺の胸の真ん中をじんわりと温かくしていく。そして、おでこに触れる柔らかな感触。これはきっと、唇だ。少し長く押し付けられ、鼻から細く漏れた息が、前髪の根元にかかってくすぐったい。
一瞬落ちていた意識が、ゆっくりと覚醒していく。
航太朗は俺が眠ってしまっていると思ってるんだ、きっと。普段の航太朗は、俺にこんなことしないから。
ここで俺が目を薄っすら開けようもんなら、この親友はきっと慌てふためいて今の行為を無かったことにしようとするんだろう。「ごめんね、ジョウダン」なんて、困ったように笑って。
(ジョウダンじゃ、なくていいのに……)
航太朗の唇がゆっくりと、離れていく。そしてすぐあとに、親指を額に押し当てて二、三度擦られる感触があった。まるで、今俺にくれた唇の痕跡を消すかのように。
「……おやすみ」
優しくも、切ない声色。ベッドのスプリングが軋んで、航太朗が離れていく。
部屋の扉を開けて出て行く音。そしてすぐ別の扉の開閉音があって、浴室からシャワーの音が聞こえてきた。
(抜いてんのかな、今)
硬くなった航太朗のモノが腰のあたりに時折掠める感触は、毎回あって分かっていた。けれど航太朗の手で乱されながら、さりげなくカラダを擦り付けようとするといつも逃げられてしまう。きっと、自分の欲望を俺に悟らせないようにしてるからだ。
親友だから。そして多分俺が、ノンケってやつだから。
航太朗は自分の欲を一切俺に見せようとしない。俺がノンケだから、ゲイである自分の欲を見せたらもう親友じゃいられなくなるとか、そんなクダラナイこと思ってるんだよ、どうせ。
俺の頼みはすんなり聞いてくれて、こうして付き合ってくれてるっていうのに。俺は性癖も、淫らに乱れる姿も丸裸になって晒してるっていうのに。
(けどアイツはどうせ、あっくんはいいんだよって、笑うんだろうな)
ゲイだとかノンケだとか、括りに拘って縛られてんのはアイツ自身だ。隔てた壁を越えさせてくれない。俺がわざとらしくエッチな言葉を口にして煽っても、なかなか誘いに乗ってきてくれない。ちんこは、硬くしてるくせに。
俺だって、誰にいじられても感じるわけじゃない。航太朗が触るから、乳首が気持ちいいんだ。
本当は、彼女にいじってもらったことがある。だけど、優しくされても痛くされても、何も感じなかった。何も。ちんこだってあんなふうにはならないし、ただ、男の本能として勃つってだけ。彼女とのセックスも本当は……きもちよくない。
高校の時、航太朗にふざけてシャツ越しに触られたあの日から、乳首に感じたビリッと微弱の電流が走ったような感覚が、忘れられなくなった。
自分で触ってもダメ。試しに他の友人何人かに触ってもらってみてもダメだった。
航太朗だけ。航太朗の指だけが、俺の内側を疼かせる。
それがわかってしまったら、俺は乳首を触りながらオナニーするのがやめられなくなった。あのたった一度ふざけて触られた感触を思い出して、航太朗にいじられてるって想像しながら自分で摘まんで捏ねて。高校の時から今まで、そうやって抜いてたんだ。ずっと。
(やば……思い出したら、勃ってきちった)
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