2 / 5
俺の恋人
しおりを挟む
「隼斗」
月を見上げながら窓辺に立つ君が、俺の声に反応して振り返る。
「健司、おかえり」
そうやって、今年も君は相変わらずの優しい笑顔を、俺に向けてくれる。
「ただいま。ごめんな、遅くなって」
「ううん、いいよ。どうせ母さんに捕まってたんでしょ?」
「あぁ。またお前の昔話を聞かされた」
「あー……」
黒のネクタイを片手で緩め、同様の黒いジャケットのボタンを外しながら君に近づき、そばにある椅子を掴んで腰掛ける。
君は、作業台の上に腰掛けながら縁に手をついて、足を軽く前後に揺らしながら呆れたように笑った。
「元気にしてた? 健司」
「ふふっ、それお前が言うのかよ」
「言うでしょ。なんかちょっと……去年よりまた格好良くなったんじゃない?」
そう言って君は、少し真剣な表情をしながら俺の顔を覗き込む。
「そうか? 変わってないだろ別に」
「ううん、変わったよ。大人になって増々、カッコよくなった」
ふと憂いに沈んだような顔をした後で、君が目を細めて笑うから、俺の胸は張り裂けるような痛みを生んでグッと喉が詰まる。
「お前は……変わってないな」
「当たり前でしょ、何それイヤミ?」
「ふははっ、いや」
あの頃のまま変わらず、可愛い、って意味。
「そういえば夕方、飯塚さんに会ったよ」
「え?飯塚さん?」
「あぁ、お前に会いに来たって言ってた」
月を見上げながら窓辺に立つ君が、俺の声に反応して振り返る。
「健司、おかえり」
そうやって、今年も君は相変わらずの優しい笑顔を、俺に向けてくれる。
「ただいま。ごめんな、遅くなって」
「ううん、いいよ。どうせ母さんに捕まってたんでしょ?」
「あぁ。またお前の昔話を聞かされた」
「あー……」
黒のネクタイを片手で緩め、同様の黒いジャケットのボタンを外しながら君に近づき、そばにある椅子を掴んで腰掛ける。
君は、作業台の上に腰掛けながら縁に手をついて、足を軽く前後に揺らしながら呆れたように笑った。
「元気にしてた? 健司」
「ふふっ、それお前が言うのかよ」
「言うでしょ。なんかちょっと……去年よりまた格好良くなったんじゃない?」
そう言って君は、少し真剣な表情をしながら俺の顔を覗き込む。
「そうか? 変わってないだろ別に」
「ううん、変わったよ。大人になって増々、カッコよくなった」
ふと憂いに沈んだような顔をした後で、君が目を細めて笑うから、俺の胸は張り裂けるような痛みを生んでグッと喉が詰まる。
「お前は……変わってないな」
「当たり前でしょ、何それイヤミ?」
「ふははっ、いや」
あの頃のまま変わらず、可愛い、って意味。
「そういえば夕方、飯塚さんに会ったよ」
「え?飯塚さん?」
「あぁ、お前に会いに来たって言ってた」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした
月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。
人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。
高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。
一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。
はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。
次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。
――僕は、敦貴が好きなんだ。
自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。
エブリスタ様にも掲載しています(完結済)
エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位
◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。
応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。
『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

綺麗事だけでは、手に入らない
和泉奏
BL
悪魔に代償を支払えば好きな人を手に入れられるのに想いあわないと意味がないってよくある漫画の主人公は拒否するけど、俺はそんなんじゃ報われない、救われないから何が何でも手に入れるって受けの話
月夜のキス
すずかけあおい
BL
会社帰り、星治は自宅マンションの斜め向かいにある公園で実千と出会う。
高校生×社会人です。
〔攻め〕黒澤 実千(くろさわ みち)高二・17歳
〔受け〕春日 星治(かすが せいじ)会社員・25歳
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)

あの日の記憶の隅で、君は笑う。
15
BL
アキラは恋人である公彦の部屋でとある写真を見つけた。
その写真に写っていたのはーーー……俺とそっくりな人。
唐突に始まります。
身代わりの恋大好きか〜と思われるかもしれませんが、大好物です!すみません!
幸せになってくれな!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる