チョコよりも甘い恋

朝賀 悠月

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君に打ち明けよう

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 準備は着々と進み、いよいよ文化祭は前日に迫っていた。
 家が遠いものは必ず終電までに終わらせて帰ること、と担任と約束をして、お化け屋敷の製作は佳境に入った。
 戸山は実行委員の写真撮影担当として各教室を周り、自分のクラスも手伝いに入りながら、合間に皆の充実した表情を写真に収めていく。
 そこへ、駅前アーケードにあるファストフード店へ夜食を買いに行っていた北野や数名の生徒が戻ってきた。手分けして人数分のハンバーガーを渡していくのを見守りながら、戸山が静かに教室を離れようとすると、ふいに行く手を、自分よりも大きな身長で塞がれた。
 戸山はすぐに、それが北野であると解った。
 それなのに……胸がトクン、と音を立てるのに、戸山は顔を上げられない。

「戸山の分も買ってきたから。あと……これ」
「えっ……」
「無くなりそうだったでしょ?もうすぐ」
(なんで……見てるんだよ……っ)

 戸山の目線の先に差し出されたのは、コンビニの袋から取り出した、赤いキューブチョコのボトル。
 いちいち包みの中から取り出すものはやめにして、最近ではこのボトルを机の中に忍ばせるようにしていた。それを、北野は知っていたのだ。
 戸山は顔を上げることなく手のひらを返してそれを乗せてもらう形で受け取ると、嬉しさと切なさで、涙が滲んでくる。

「さんきゅ……」
「がんばれ」

 北野はその四文字を戸山に伝えると、肩をポンポンっと叩いてやって作業に戻っていった。
 北野に叩かれた肩が、熱くなる……
 戸山はその熱を振り払うようにして教室を出ていくと、気持ちを切り替えてその足で、写真部の展示スペースへと向かった。



「お前、本当にこれでいくの?」

 写真部の設営をしていた星崎が、戸山が額に入れて出した大きな写真を見て、怪訝そうに顔をしかめた。

「うん。良く撮れてるだろ?」
「まあそうだけど……」
「これが今まで撮ってきた中で、一番好きな写真だからさ」
「だけどこれ……」
「いいじゃん!最後なんだし。俺別に、これ出して本気で嫌われても後悔しないもん。もう……」

 自棄を起こしたようにも思える戸山の発言を聞いて心配になり、写真から目を離して戸山の顔をチラリと見ると、これが意外にもしっかりした顔をしていて、本当に最高の瞬間が撮れたのだとでも言いたそうに、写真を見つめながら戸山の目は輝いていた。

「……わかったよ」

 戸山の意思表示を肯定して受け取り、星崎は戸山のその大きな写真を、誰よりも目立つ場所に配置した。

「まあいっか。最後だしな」
「おう」
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