青の話

豆腐

文字の大きさ
上 下
19 / 20

18

しおりを挟む
「うー・・・・・・・」

喉が乾いた。
昨日お酒飲んだし、辛い系の物も食べたからかなぁ・・・?
お茶飲もう、と体を起こそうとして、違和感に気づく。
腰に重さが・・・・ん?何この腕。というか、背中が何かあったかい。つか、あたし、昨日ベッドで寝たっけ・・・・んんんん??そもそも、楠木さんと話してた気がする、けど、それ以降記憶無くない?

「・・・・・・・・」

そろー、と、後ろを、振り向く。
ボタンが開けられたシャツに、喉仏が色っぽい、男の人の太めな喉。
その上に、大天使の麗しい寝顔。
うわー背後のカーテンの隙間から入ってくる光が後光みたいになっててきれいだなーマジモンの大天使やん睫毛なっがーいチラ見えしてる鎖骨も胸板もなんだかせーくすぃー・・・

「・・・・・・はあああああああああああ!?」
「ん゛ー・・・・・・ゆずこ、うるさい・・・」

なんで!!いっしょに!!!!楠木さんが寝てるの!?!?!?



「で、何で一緒に寝てたんです?」

高速でシャワーを浴びた後、のろのろと起き出した楠木さんをバスルームに突っ込み、パンをトースターに入れ卵とベーコンを焼きながら、千切ったレタスとベビーリーフとコーンでサラダを作って朝食完成。
同時に淹れたコーヒーと、トーストと目玉焼き、ベーコンを乗せたプレートとサラダをダイニングテーブルに並べ、戻ってきた楠木さんと向かい合わせに座り、いただきます、と手を合わせたところで切り出した。
食べながらで行儀悪いかもしれないけど、取り敢えず記憶が飛んでるので聞かねば気がすまない。

柚子ゆずこが話しながら寝落ちたからベッドに運んだんだけど、離してくれなかったからね。起こそうとしたけど起きなかったし」

なんと、私有罪やないかい!!!

「す、すみません」
「いやいや、役得だったよ。好きな子と一緒に寝られたんだし」
「・・・・は?なんて?」

いま、すきなこっていわなかったか、このひと。

「言っただろう?酔ってないって」
「は、ぁ」
「大丈夫、今回は何もしてないよ」
「あ、ありがとう、ございます?」
「まぁ、次はするけど」
「な、なにを」
「知りたい?」

にこ、といい笑顔で言われ、首を精一杯横に振った。
ふふふ、って、こわっ!笑顔が怖い!!

「その様子じゃ、やっと意識してくれたみたいだな・・・・結構あからさまにしてたつもりだったけど」
「う・・・その、楠木さん」
「うん?」
「も、もしかしてー、ですけどー」
「なに?」
「好きな子って、私、だったりします?」
「そうだな、まさか本当に気付かないとは思わなかったなぁ」
「・・・・・・・」
「あぁ、もうこんな時間か。そろそろ行かなきゃなぁ」

にこにこ笑顔のまま、ご馳走様、と手を合わせて、シンクまで皿を下げてくれる。
い、いつの間に食べ終わったの。私まだ半分以上残ってんだけど。
皿を洗って乾燥機の中に並べると、ソファーに乗せたままだった鞄を取り、玄関に向かう背を後ろから着いていく。

「これからも落とすつもりで行くから、ちゃんと意識してね?」
「ぅあ、はい」
「じゃあ、今日はもう行くから。明日の夜・・・夕方から予定は空いてる?」
「あ、空いてます」
「なら、夕方から出掛けよう。準備してて待ってて」
「は、はい」

玄関のポールハンガーからジャケットを取って渡すと、そのまま手を掴まれてぐい、と引っ張られる。

ちゅ。

「じゃ、行ってきます」
「いってら、しゃーい・・・・」

腕を離され、頭を撫でられながら、外出の挨拶に返事を返す。
ぱたん、と閉まる扉を見ながら、軽い音のしていた頬に手を当てる。


・・・・・・・・・き、きすされたあああああああ!?!?!?



****************

「なぁんだ、頬にキスくらいで騒ぐなよなぁ」
「騒ぐよ!騒ぎますとも!!」

どん、と乱暴にグラスをテーブルに置きながら返す。
ランチだから、中身はお酒ではなくコーヒーなんだけど。
それを見ながら、向かいに座る井池渚いちなぎさが一口サイズに切ったサンドイッチをつまんでいる。
誰かと話したくて、ラインの魔法少女グループで呼びかけたところ、渚がコスプレ衣装は無事仕上がって暇だったようで、すぐに来てくれた。
他は何やら予定があるらしく無反応だった。
外に出るのも暑くて面倒だったため、家ランチにした。
いつものメニューでも、ワンプレートにしたり木製食器を使うだけで何となくカフェ風になるから不思議だ。

「にしても、のんとぐれの次がユズとはねぇ・・・大穴だわ」
「いやいや、まだ分からんよ?」
「絶対無理だろ。既に落ちかけてるくせに」
「うっ・・・・」
「気遣いできてー優しくてー、リードしてくれるみたいだしぃ?甘やかしてくれるんでしょ?前の奴とは大違いじゃん。何を躊躇してんの」
「だ、だって、一応この前まで、恋人いたんだし・・・早々に切り替えるのって、なんかやじゃない?」
「そんなん人それぞれじゃない。あんたの場合、相手は浮気してんだし、それ以前に扱いがほぼ家政婦だったでしょ」
「そ、そうか、な?」
「そうよ!毎日残業あろうが無かろうが飯は作らせお風呂掃除に洗濯ゴミ捨て、休みの日には掃除に布団干し。時にはヌいてやるなんざオナホ契約付家政婦じゃん」
「え、そんな酷かったっけ」
「一緒に出掛けるとかも無しなんて、本当にあんたの尽くし体質どうにかした方がいいわ。ダメ人間製造機になりたいの?」

き、今日はなんか虫の居所が悪いのか?すごくボロボロ言ってくるな??
もともと口が悪いってのはあるけど、それ以上にボロボロだな。
考えが顔に出ていたのか、渚がふぅ、と息を吐いてコーヒーを一口飲む。

「・・・・・・あのね。神奈川に就職して来たときは目は死んでるし、精神的にボロボロだったし。彼氏が出来たって報告あったから、ちょっとは元気になったのかと思えばなかなか会えなくなるし、連絡は取れないし。原因は彼氏ダメ男のお世話で忙しいとか。まぁ幸せならいいかって静観してりゃあ今回の浮気騒ぎ。この前の女子会でも言われただろうけど、みんな本当に心配してたんだから」
「うぅ、そんなに心配でしたか・・・・ごめんなさい」

そんなに心配かけてたのか。全然気付いてなかった。
凹んで俯いていると、渚が手を伸ばして頭を撫でてくれる。

「そんな訳で、恋人が出来る出来ないに関わらず、ユズにいい方向に話が落ち着けばいいなって皆思ってる」
「・・・・・うん」
「で、いつ落ちんの?」
「だからまだだよ!!」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...