青の話

豆腐

文字の大きさ
上 下
14 / 20

13

しおりを挟む
皿洗いはするから片付けてきな、と楠木さんに言われたので、開封作業を進める。
収納できるものから片付けていると、先週購入した冷蔵庫や洗濯機などの家電や、ダイニングテーブルや本棚などの家具が次々に届く。
設置作業が終わったところで、加賀地さんの家に置かせてもらっていた荷物が届いた。が。

「あ、あれ?これだけ、ですか?」
「?はい。ご依頼頂いてるのは、このソファーとカフェテーブルと、本類と書かれているこのダンボールのみです」
「えっ・・・・え、本当に?」
「どうした?」
「あの、荷物が少なくて」

そうなのだ。他にも服や鞄を入れた箱や、推しのグッズを仕舞っている箱があるはずなのに、届いていない。
え、間違って捨てたかなぁ!?食器とか家電も古かったからじゃかじゃか捨てちゃったんだけど、一緒に捨てちゃった!?
どうしよう、とおろおろしていると、ぴんぽーん、とチャイムの軽快な音が鳴る。
やはり届け忘れか?と楠木さんも一緒にインターホンのモニターを確認すると。

『こんにちはー!』
『ちはー』
「え、佳代さん!?」
「加賀地さん?」
『荷物お届けに参りましたー』
『来ちゃった☆』

オートロックの鍵を解除し、暫く待つと加賀地さんと佳代さん、台車を押しながら新田さんが来た。
台車上のダンボールの数からして、届いていなかった分だろう。良かった、捨ててなかった。何か上に乗ってるショッパーが気になるけど。
新田さんにダンボールをベッドルームに運んでもらうようお願いすると、佳代さんからむぎゅむぎゅと抱きつかれた。

「すまん、佳代がどうしても行きたいって聞かなくてな・・・」
「だって、最近ゆずちゃん会ってくれないんだもん!」
「ご、ごめんなさい」
「で、康平さん、このお兄さんはどこの誰よ」
「あぁ、彼は今の海野の上司の楠木だよ。楠木、こっちは俺の嫁さん」
「楠木です。はじめまして、加賀地さんにはお世話になってます」
「妻の佳代です・・・・ふぅん」
「佳代さん佳代さん、苦しいです」
「あら、ごめんなさい」

回されていた腕をタップし、外してもらう。
荷物を移動してくれた新田さんを見送り、ソファーに掛けてもらってお茶を淹れる。

「佳代さん紅茶ですよね?加賀地さんと楠木さんはコーヒーと紅茶どっちがいいですか?」
「俺も紅茶で」
「俺もー」

キッチンに入りお湯を沸かしていると楠木さんが手伝いにきてくれたので、戸棚に仕舞ったお菓子と木製の器、ティーポットと背の高めのグラスを出してもらう。
今日は暑かったから、アイスティーにしよう。お湯が沸いたらティーポットをお湯を入れて温め、お湯を捨てた後に茶葉を入れて蒸す間、オレンジをスライスする。
紅茶を一度茶漉で漉しながらテーブルポットに移す。グラスにクラッシュしていた氷を大きめのを一つずつ入れ、作り置きのはちみつレモンの汁のみを注ぐ。暑いときはクエン酸とらなきゃ。夏バテ予防じゃい。
くるくる、楠木さんとふたりで氷が半溶けくらいになるまでマドラーで混ぜる。混ぜたら氷をグラスいっぱいに入れて、スライスしたオレンジを乗せる。
乗せたオレンジに向かって勢いよく紅茶を注いで、一部を残してリングカットしたオレンジを2つずつ重ねてグラスに引っ掛けて飾り付け、ベンガルタイガーの出来上がり。
お盆にのせて運ぼうとすると、楠木さんに取られた。重いものは持たせられないって、そんなに重くないんだけど。キザだなぁ。

「お待たせしましたー」
「あら、おしゃれ!かわいいわね」
「紅茶の名前はベンガルタイガーっていって、どっちかというと格好いいんですけどね」
「すまんな、片付け中だったんだろ?」
「いえいえ、休憩無しで動いていたから丁度良かったです。ね、楠木さん」
「そうだな、俺はともかく、海野ずっと動きっぱなしだったしな」

テレビ前のローテーブルにお盆を置いてもらい、配膳する。
ストローをさしてくるりと混ぜて。ひと口飲んで爽やかな柑橘の香りにひと息つく。良かった、美味しい。

「だいぶ片付いたんじゃねぇの?早いな」
「朝から動きっぱなしでしたし、配送の段取りも完璧でしたから!楠木さんのおかげです」
「それほどでも。荷物も少なかったしな」
「そうだ、手伝いといや、仲川に頼むとか言ってなかったか?」
「それがですねー、仲川用事があったみたいで」
「それに、何で楠木がいんの?さらっと流してたけど。そんなに仲良かったか?」
「楠木さん、先週の物件探しから家具家電に加えて雑貨の買出しまで手伝ってくれたんですよー!今日も朝の引っ越しから車も出してくださいまして。ほんと助かっちゃいました」
「暇だったからな。それに君、うっかりな所もあるし、秦のことまだ未解決って自覚ないし」
「う」
「? 何かあったのか?」
「実はー・・・・」

先週金曜日、渋谷駅で秦を見かけたことを話す。
そうだった。まだ、何でいたのか、偶然だったのか解決していない。
どうやら佳代さんも加賀地さんから話は聞いていたようで、厳しい顔をしている。

「それは、何か嫌な感じがするな」
「そうねぇ、その秦とやら、何かしてきそうね。職場が離れてても、あまり安心出来ないわね」
「えぇ、そうなんです。だけど、本人が楽観的過ぎて」
「? 何ですか」
「お前がアホだなって話よ」

此方を生温い目で見る三人が同時にため息を吐く。
何だ何だ、酷くないか。アホじゃないやい。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

処理中です...