12 / 20
11
しおりを挟む
仕事したり電話したり荷物を纏めたり課の先輩方の相談に乗ったり魔法少女仲間が銀行強盗にあっていたのをちょっと手助けしたり仕事したりして、週末。
「これで終わりか?」
「えぇ、後は戸締まりして終わりです」
「そうか。なら、家に向かおう」
2週間しかいなかった部屋を後にして、先週もお世話になった濃いピンク寄りの赤色の車に乗る。
楠木さんには、引っ越しまで手伝ってもらって申し訳ないが本当に助かった。平日はともかく、休日なら浮気野郎のいる横浜から往復できる距離だし、住所まではバレてないだろうが駅バレの可能性が捨てきれないから一緒に居てくれるだけで有り難い。荷物の郵送代も浮くし。
「こんなに早く引っ越しできるなんて思っても見ませんでした。楠木さんのおかげです」
「いや、女性一人で引っ越しとか大変だろ?当たり前だよ」
「それでも助かってるのは事実なので。ありがとうございます」
そもそも、引っ越しは運び出しだけでも仲川に頼もうと思っていたのだ。
****************
木曜日、ぼちぼち片付けていた荷物が思いの外多かったことに気づき、一人で引っ越しは厳しいと考えていたところ、出勤してきた仲川がデスクに座るのを見て、そういえば相談料を貰ってないことを思い出し、手伝ってもらおうと声をかけた。
来るときの郵送代は本当に高かった。会社が出してくれたから良かった・・・引っ越し業者に頼むと高いし、使えるやつは使わねば。一人でやると、午後に来る前の家で使っていた荷物と、ベッドとソファの搬入に間に合わない。
「よっしー、この前の相談料として引っ越し手伝って。レンタカー借りてやるから、一人でやると時間かかるのよ」
「えー、いつ?」
「土曜日」
「えぇよ・・・・あ、や、ごめんやっぱ無理」
頷いたと思ったら、青い顔をして首を思いっきり横に振られる。
具合悪いのか?と顔を寄せようとしたら、ぽんと肩を叩かれた。
「おはよう、海野、仲川」
「楠木さん、おはようございます!」
「お、おはようございます・・・」
振替ると、楠木さんが立っていた。
今日も笑顔がお美しいいいあ、あ、きれいな御手が肩に肩にああああああと荒ぶる内心を抑えて挨拶を返す。
「何の話してたんだ?」
「あぁ、今週末には引っ越し、荷物が意外と増えてたので、仲川にこの前の相談料代わりに手伝ってもらおうと思ってたんですけど」
「ち、ちょっと、予定が入ってたの思い出しまして」
ハハハ、と引き攣った顔で笑う仲川。大丈夫かこいつ。体調悪いのか?
んん?と首を傾げていると、後ろから頭を撫でられた。
「それなら手伝うよ」
「え、先週も付き合ったもらったのに、何度もお手数かける訳にはいかないですよ」
「予定もないし、住むマンション一緒だから、全然手間じゃないし」
「う、うぅ・・・」
「それに、引っ越してすぐ買出しとかもしたいだろ?人手があった方が早く終わるし」
「そ、れは、そうですけど・・・・」
「ウミ、手伝ってもらえよ。一人でやるのキツいんだろ?」
上司にそんなに手伝ってもらってばかりで申し訳ない、しかし人手はいるしと迷って迷っていると、仲川が引き攣った顔のまま勧めてくる。
何か汗までかいてるが、どうした。風邪か?
額に手を当ててみたが、特に熱はないようだ。
「ヒッ」
「んー、熱はないみたいだけど、あんた顔色ヤバいよ。大丈夫?」
「だっ大丈夫大丈夫!!それよか、引っ越し引っ越し!」
「あぁ、う~~ん・・・あの、お願いしてもいいですか?」
「勿論だ。土日と同じ時間でいいか?」
「はい、よろしくお願いします」
じゃ、と仲川に手を振り楠木さんと一緒にデスクに戻る。
その後、相談料として夢の国のシーのパークチケットをもらった。
やった、夢の国の夏イベ満喫じゃ!!!
****************
という事で、仲川が都合がつかず、再度楠木さんにお願いすることになってしまったのだ。何度も申し訳ない。
何かお礼がしたいが、何がいいかさっぱり分からないのだ。出来れば好みに合わせたいし。装飾品も考えたが、いつも身につけてるものがお高そうな物ばかりなので却下だ。お財布に相談する前に門前払いをくらうわ。無理。
むーん、と考えていると、いつの間にかマンションに着いていた。
「さ、着いたよ」
「・・・・・・」
「? どうした?」
「イエナンデモアリマセン」
お、乙女ゲームのスチルかと思った・・・車のドア開けて手を出してくる仕草が似合うとか紳士かよこの人攻略キャラだったのか系統は爽やか大天使系紳士か日の光が似合いすぎ大天使ィと頭に一気に駆け抜けたところで現実に戻った。ヤバいよこの人、何がヤバいって、ヤバいって言葉しか出て来なくなるところがヤバい。語彙が死ぬ。
差し出された手を無視できず、取り敢えずその美術品みたいな手に自分の手を乗せると、そっと引かれて立つ。そのまま腰に手をまわされマンションに向かって歩き出す。
あれ、荷物は!?
「あぁ、コンシェルジュが台車で運んで行ったよ」
「え!?」
「ほら、あそこ」
エレベーター前に、荷物を乗せた台車を1台ずつ押している男女のコンシェルジュさんが居た。い、いつの間に。
慌てて追いかけて、エレベーターに乗りこみ、3階へ向かう。
「これで終わりか?」
「えぇ、後は戸締まりして終わりです」
「そうか。なら、家に向かおう」
2週間しかいなかった部屋を後にして、先週もお世話になった濃いピンク寄りの赤色の車に乗る。
楠木さんには、引っ越しまで手伝ってもらって申し訳ないが本当に助かった。平日はともかく、休日なら浮気野郎のいる横浜から往復できる距離だし、住所まではバレてないだろうが駅バレの可能性が捨てきれないから一緒に居てくれるだけで有り難い。荷物の郵送代も浮くし。
「こんなに早く引っ越しできるなんて思っても見ませんでした。楠木さんのおかげです」
「いや、女性一人で引っ越しとか大変だろ?当たり前だよ」
「それでも助かってるのは事実なので。ありがとうございます」
そもそも、引っ越しは運び出しだけでも仲川に頼もうと思っていたのだ。
****************
木曜日、ぼちぼち片付けていた荷物が思いの外多かったことに気づき、一人で引っ越しは厳しいと考えていたところ、出勤してきた仲川がデスクに座るのを見て、そういえば相談料を貰ってないことを思い出し、手伝ってもらおうと声をかけた。
来るときの郵送代は本当に高かった。会社が出してくれたから良かった・・・引っ越し業者に頼むと高いし、使えるやつは使わねば。一人でやると、午後に来る前の家で使っていた荷物と、ベッドとソファの搬入に間に合わない。
「よっしー、この前の相談料として引っ越し手伝って。レンタカー借りてやるから、一人でやると時間かかるのよ」
「えー、いつ?」
「土曜日」
「えぇよ・・・・あ、や、ごめんやっぱ無理」
頷いたと思ったら、青い顔をして首を思いっきり横に振られる。
具合悪いのか?と顔を寄せようとしたら、ぽんと肩を叩かれた。
「おはよう、海野、仲川」
「楠木さん、おはようございます!」
「お、おはようございます・・・」
振替ると、楠木さんが立っていた。
今日も笑顔がお美しいいいあ、あ、きれいな御手が肩に肩にああああああと荒ぶる内心を抑えて挨拶を返す。
「何の話してたんだ?」
「あぁ、今週末には引っ越し、荷物が意外と増えてたので、仲川にこの前の相談料代わりに手伝ってもらおうと思ってたんですけど」
「ち、ちょっと、予定が入ってたの思い出しまして」
ハハハ、と引き攣った顔で笑う仲川。大丈夫かこいつ。体調悪いのか?
んん?と首を傾げていると、後ろから頭を撫でられた。
「それなら手伝うよ」
「え、先週も付き合ったもらったのに、何度もお手数かける訳にはいかないですよ」
「予定もないし、住むマンション一緒だから、全然手間じゃないし」
「う、うぅ・・・」
「それに、引っ越してすぐ買出しとかもしたいだろ?人手があった方が早く終わるし」
「そ、れは、そうですけど・・・・」
「ウミ、手伝ってもらえよ。一人でやるのキツいんだろ?」
上司にそんなに手伝ってもらってばかりで申し訳ない、しかし人手はいるしと迷って迷っていると、仲川が引き攣った顔のまま勧めてくる。
何か汗までかいてるが、どうした。風邪か?
額に手を当ててみたが、特に熱はないようだ。
「ヒッ」
「んー、熱はないみたいだけど、あんた顔色ヤバいよ。大丈夫?」
「だっ大丈夫大丈夫!!それよか、引っ越し引っ越し!」
「あぁ、う~~ん・・・あの、お願いしてもいいですか?」
「勿論だ。土日と同じ時間でいいか?」
「はい、よろしくお願いします」
じゃ、と仲川に手を振り楠木さんと一緒にデスクに戻る。
その後、相談料として夢の国のシーのパークチケットをもらった。
やった、夢の国の夏イベ満喫じゃ!!!
****************
という事で、仲川が都合がつかず、再度楠木さんにお願いすることになってしまったのだ。何度も申し訳ない。
何かお礼がしたいが、何がいいかさっぱり分からないのだ。出来れば好みに合わせたいし。装飾品も考えたが、いつも身につけてるものがお高そうな物ばかりなので却下だ。お財布に相談する前に門前払いをくらうわ。無理。
むーん、と考えていると、いつの間にかマンションに着いていた。
「さ、着いたよ」
「・・・・・・」
「? どうした?」
「イエナンデモアリマセン」
お、乙女ゲームのスチルかと思った・・・車のドア開けて手を出してくる仕草が似合うとか紳士かよこの人攻略キャラだったのか系統は爽やか大天使系紳士か日の光が似合いすぎ大天使ィと頭に一気に駆け抜けたところで現実に戻った。ヤバいよこの人、何がヤバいって、ヤバいって言葉しか出て来なくなるところがヤバい。語彙が死ぬ。
差し出された手を無視できず、取り敢えずその美術品みたいな手に自分の手を乗せると、そっと引かれて立つ。そのまま腰に手をまわされマンションに向かって歩き出す。
あれ、荷物は!?
「あぁ、コンシェルジュが台車で運んで行ったよ」
「え!?」
「ほら、あそこ」
エレベーター前に、荷物を乗せた台車を1台ずつ押している男女のコンシェルジュさんが居た。い、いつの間に。
慌てて追いかけて、エレベーターに乗りこみ、3階へ向かう。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる