9 / 20
09
しおりを挟む
マンション下に降りて、浮気野郎の影がない事に安堵の息を吐き、電車に揺られて池袋駅に着いてから不動産屋へ行き、担当者に連れられ何件か物件を見回った。
が。
「思った物件じゃなかった?」
「そうなんですよねぇ・・・困った事に」
どの物件も会社からのアクセスや予算、間取りがどれもしっくりいかない。
妥協すれば数件あるが、住むからには妥協出来ない。
それに。
「担当者が・・・」
「あぁ、あれはないな」
池袋駅まで戻り、近くの多国籍料理店でランチを済ませ、食後のコーヒーを飲みながら息を吐く。
担当者が、何だかねちっこいのだ。
気のせいかな、と放っておいたが、やたら距離が近いし胸に目が行っているのがはっきりわかる。靴を履こうとしてしゃがむと、向こうがわざと書類を落とし、拾う振りをしてスカートの中を見ていた。楠木さんがずっと近くにいてくれたし、スカートの中はショートパンツを履いているので下着は見えなかっただろうが、不快は不快。
「あいつ、店入ってすぐに、俺の顔見て舌打ちしてたしな」
「え、本当ですか」
「あぁ。良かったな、一人で来なくて」
「うわぁ・・・もう二度とあの店には行きません」
本当に付いて来てもらってよかった。感謝しかない。
でもどうしよう。早めに家見つけないといけないのに。
マンスリーマンション代は会社が負担してくれているし、家が見つかるまでいつまででも住んでていいとは言われたが、さすがにそうのんびりはしたくない。狭いし。
「う~~~~~~~~ん」
「間取りは2LDKで、駅近くがいいんだよね?」
「そうですね、そこは譲れません」
「池袋駅じゃないとだめなのか?1個隣の駅とか」
「えぇ、会社まで乗り換えしないでいいならどこでも」
池袋は、オタ趣味のせいですすみません。乙女ロードとかメイトとか入り浸りたいだけなんです・・・あとディ○ニーまでそこまで乗り換えしなくて行けるからです・・・
「家賃は、さっきまで見てた物件くらい?」
「ですね。それ以上だと厳しいです」
「ふぅん・・・なら、いい物件あるんだけど、今から見てみない?」
「へ?いいんですか?」
「もちろん」
行こうか、と促され、会計を済ませ店を出ると、近くの機械式駐車場へ向かう。
ぴ、ぴ、と操作し、暫くして扉が開いて出てきた車を見て、固まる。
「・・・・・」
ゆずこしってる。これ、おたかいくるまや。
右ハンドルだから、国産?いや、この車の前に付いてるロゴは確実に国産じゃねぇ、確かイギリスやオーストラリアは右ハンドルだ。やはり外車か。
「? どうした?乗りなよ」
「ハイ、オジャマシマス」
余計なことをして汚したらいかん、と緊張で固くなりながら助手席へ乗り込む。
わぁ、めっちゃ乗り心地いいわー
「大塚駅の方が近いんだ、池袋駅も歩いて10分くらいなんだけど。それでも構わないかな?」
「問題ナイデス」
もう気にしない。でも何かかっちょいいから後で撮らしてもらおう。
少し走って、1つの大きいタワーマンション前に駐車すると、奥からコンシェルジュが小走りに寄ってくるのが見えた。
いつの間に降りてきたのか、どうぞ、と楠木さんがドアを開けて降りるよう促された。
「あ、ありがとうございます。えと、ここですか?」
「あぁ、ここの3階なんだ」
「ーー楠木様!お帰りなさいませ」
「車お願いするよ。連絡していた鍵は?」
「こちらです」
「ありがとう・・・・さ、行こうか」
な、なんだ今のやり取り。楠木様???
混乱している間に肩に手を回され、目の前のタワーマンションの中へ促される。
3階でエレベーターを降りてすぐのドアをカードキーで開けて中に入る。
「ここは元々は妹が住んでたんだがな、今はイギリスの大学に行ってそのまま向こうで仕事を見つけてしまったから空き部屋になってしまってな。でも次に住む人は知ってる人がいいとか無茶を言い出してね、なかなか貸せなくなってしまったんだ」
「え、わたしが住んでもいいんですか?面識無いのに」
「俺の部下だから知らない訳ではないし、妹にも許可は貰ってる」
ここが10畳、こっちがバスルームと案内されながら、この部屋が空いていた事情を知る。
うわ、アイランドキッチンだ、コンロ三口ある!!リビング広いし、ちゃんと2部屋あるし本も納まりそう・・・文句なしの物件だけど、絶対ここ高いよね。タワマンだし。
「どう?」
「こ、ここ家賃高いんじゃ」
「ああ、家賃はこのくらいでどう?」
「・・・・えっ」
指を立てて示された数字は、午前に見回った物件よりも3万も安かった。
「え、嘘、何でそんなに!?てか、勝手に決めていいんですか!?」
「勝手にじゃないよ、マンションのオーナー、俺だから問題ない」
「は、はい!?」
オーナーオレダカラモンダイナイ???なんの呪文だ???
次から次へとぶつけられる発言に頭が追いつかない。
あ、だから楠木様か!雇い主だから!!納得!!!
「正直、空き部屋よりも住んでもらった方が助かるんだよ。いつまでも空き部屋だと、なんか問題でもあるのかって勘ぐられるし」
「そ、そうなんですか」
「そうなんですよ。もちろん、嫌じゃなければだけどな」
「喜んで借りさせていただきます!!!」
どうする?と首を傾げる楠木さん。
そんな姿も大天使、と見惚れそうになりながらも、思いっきり頷いた。
が。
「思った物件じゃなかった?」
「そうなんですよねぇ・・・困った事に」
どの物件も会社からのアクセスや予算、間取りがどれもしっくりいかない。
妥協すれば数件あるが、住むからには妥協出来ない。
それに。
「担当者が・・・」
「あぁ、あれはないな」
池袋駅まで戻り、近くの多国籍料理店でランチを済ませ、食後のコーヒーを飲みながら息を吐く。
担当者が、何だかねちっこいのだ。
気のせいかな、と放っておいたが、やたら距離が近いし胸に目が行っているのがはっきりわかる。靴を履こうとしてしゃがむと、向こうがわざと書類を落とし、拾う振りをしてスカートの中を見ていた。楠木さんがずっと近くにいてくれたし、スカートの中はショートパンツを履いているので下着は見えなかっただろうが、不快は不快。
「あいつ、店入ってすぐに、俺の顔見て舌打ちしてたしな」
「え、本当ですか」
「あぁ。良かったな、一人で来なくて」
「うわぁ・・・もう二度とあの店には行きません」
本当に付いて来てもらってよかった。感謝しかない。
でもどうしよう。早めに家見つけないといけないのに。
マンスリーマンション代は会社が負担してくれているし、家が見つかるまでいつまででも住んでていいとは言われたが、さすがにそうのんびりはしたくない。狭いし。
「う~~~~~~~~ん」
「間取りは2LDKで、駅近くがいいんだよね?」
「そうですね、そこは譲れません」
「池袋駅じゃないとだめなのか?1個隣の駅とか」
「えぇ、会社まで乗り換えしないでいいならどこでも」
池袋は、オタ趣味のせいですすみません。乙女ロードとかメイトとか入り浸りたいだけなんです・・・あとディ○ニーまでそこまで乗り換えしなくて行けるからです・・・
「家賃は、さっきまで見てた物件くらい?」
「ですね。それ以上だと厳しいです」
「ふぅん・・・なら、いい物件あるんだけど、今から見てみない?」
「へ?いいんですか?」
「もちろん」
行こうか、と促され、会計を済ませ店を出ると、近くの機械式駐車場へ向かう。
ぴ、ぴ、と操作し、暫くして扉が開いて出てきた車を見て、固まる。
「・・・・・」
ゆずこしってる。これ、おたかいくるまや。
右ハンドルだから、国産?いや、この車の前に付いてるロゴは確実に国産じゃねぇ、確かイギリスやオーストラリアは右ハンドルだ。やはり外車か。
「? どうした?乗りなよ」
「ハイ、オジャマシマス」
余計なことをして汚したらいかん、と緊張で固くなりながら助手席へ乗り込む。
わぁ、めっちゃ乗り心地いいわー
「大塚駅の方が近いんだ、池袋駅も歩いて10分くらいなんだけど。それでも構わないかな?」
「問題ナイデス」
もう気にしない。でも何かかっちょいいから後で撮らしてもらおう。
少し走って、1つの大きいタワーマンション前に駐車すると、奥からコンシェルジュが小走りに寄ってくるのが見えた。
いつの間に降りてきたのか、どうぞ、と楠木さんがドアを開けて降りるよう促された。
「あ、ありがとうございます。えと、ここですか?」
「あぁ、ここの3階なんだ」
「ーー楠木様!お帰りなさいませ」
「車お願いするよ。連絡していた鍵は?」
「こちらです」
「ありがとう・・・・さ、行こうか」
な、なんだ今のやり取り。楠木様???
混乱している間に肩に手を回され、目の前のタワーマンションの中へ促される。
3階でエレベーターを降りてすぐのドアをカードキーで開けて中に入る。
「ここは元々は妹が住んでたんだがな、今はイギリスの大学に行ってそのまま向こうで仕事を見つけてしまったから空き部屋になってしまってな。でも次に住む人は知ってる人がいいとか無茶を言い出してね、なかなか貸せなくなってしまったんだ」
「え、わたしが住んでもいいんですか?面識無いのに」
「俺の部下だから知らない訳ではないし、妹にも許可は貰ってる」
ここが10畳、こっちがバスルームと案内されながら、この部屋が空いていた事情を知る。
うわ、アイランドキッチンだ、コンロ三口ある!!リビング広いし、ちゃんと2部屋あるし本も納まりそう・・・文句なしの物件だけど、絶対ここ高いよね。タワマンだし。
「どう?」
「こ、ここ家賃高いんじゃ」
「ああ、家賃はこのくらいでどう?」
「・・・・えっ」
指を立てて示された数字は、午前に見回った物件よりも3万も安かった。
「え、嘘、何でそんなに!?てか、勝手に決めていいんですか!?」
「勝手にじゃないよ、マンションのオーナー、俺だから問題ない」
「は、はい!?」
オーナーオレダカラモンダイナイ???なんの呪文だ???
次から次へとぶつけられる発言に頭が追いつかない。
あ、だから楠木様か!雇い主だから!!納得!!!
「正直、空き部屋よりも住んでもらった方が助かるんだよ。いつまでも空き部屋だと、なんか問題でもあるのかって勘ぐられるし」
「そ、そうなんですか」
「そうなんですよ。もちろん、嫌じゃなければだけどな」
「喜んで借りさせていただきます!!!」
どうする?と首を傾げる楠木さん。
そんな姿も大天使、と見惚れそうになりながらも、思いっきり頷いた。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる