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23.話さなきゃ@藤堂side
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まず、さくらとちゃんと話したい。
真面目で、ずっと処女だったさくら。
お互いの関係をちゃんと決めないまま、抱いてしまった。
だから、身体だけ求められてるって思ってる?
そういう男だと思われてる…?
なんか、避けられている理由が、これで解決するような気がする。
だから、「ずっと横にはいられない」って?
俺は今更、ちゃんと好きって、付き合いたいって話をしていないことに気づく。
泣いた彼女を慰めて、キスしたら嫌じゃないって言ってくれて、ホテル連れて行って…。
それで俺は勝手にさくらを彼女にできたって思ったのに、避けられて…。
彼女にしてみれば泣いて弱ってるところつけ込まれた…感じ?
俺は頭を抱えて椅子に座りこんだ。
これまで遊んでた相手と何となくくっついたり離れたり
その作法が通じるさくらじゃない。
ふと、腕時計を見る。
結構な時間が過ぎている。
俺は自分が使っていたノートPCを手に会議室を出て、自分の席へ向かった。
会議室を出て、階段を下りる。
思いがけず目の前にさくらだ。
「さくらさん?」
はっとしてこちらを見たさくらの見ていた携帯の画面が目に入る。
画面の上に『杉下くん』
俺はさくらに絡む問題をもうひとつ思い出した。
画面にはたくさんの吹き出しが相互に交わされている。
おれはさくらの個人的な連絡先すら知らない…!
一瞬で気持ちが泡立つのを抑え、何とか挨拶を絞り出す。
「お疲れ様。」
「お疲れ様です!」
ふたりの間には何も特別なことはないというような白々しい挨拶。
俺は少しいらだつ。
さっきまでの濃厚な時間を取り戻し
すれ違うときに足を止め、少しかがんで
「大丈夫?」
とささやく。
これだ。これがダメなんだ。
まずは話そうって決めたのに!
今回もとっさにさくらが身を反らして俺を避けるようにする。
「…はい!お気遣いなく!」
俺は自分の意志の弱さに呆れ、がっかりしてしまう。
「あの…さ、…少し…話す時間取れないかな?会社の外で?」
絞り出すように声に出す。
「えっと…ちょっと…しばらくは…忙しくて…。」
ああ、やっぱり…そうだよね。
「…そっか…。ん…じゃ、また。」
ここでこれ以上、ふたりが話しているのも不自然だ。
俺は自分の席に戻ったが、居心地が悪い。
さっき鏡の前で身なりを整えられてよかったが
見落とした痕跡が残っていないか、会社内で真面目な女子社員にあんなことしたって
誰かに見抜かれるんじゃないか…
「課長」
「えっ?」
西島恵に呼ばれて飛び上がる。
「?あの、受付から宅配便の連絡あったので、取って来ました」
「あ、ああ、ありがとう。」
「どうかしました?」
「え?いや、ごめん、ちょっと考え事してて。」
宅配便は幸和製菓から、広告の依頼を受けた新商品の試作品だった。
幸和製菓を退職した広沢さんもきっと見てくれるだろう。
俺が関わるPOPやポスターが広沢さんが継いだスーパーの店頭にも並ぶかもしれない。
大事な仕事場で、何してるんだ・・・
でも、さくらが目の前にいると、すべてが吹っ飛んでしまう。
逃げようとする彼女を逃さないように、そして拒まれず触れ合えることが嬉しくて…
ちゃんと話をして、もし、さくらが俺が望んでいるような気持ちを持っていなかったらと思うと怖い。
スギシタってやつがさくらとどんな付き合いなのか、聞いてしまうのも怖い…。
でも、次こそ、ちゃんと話そう。
真面目で、ずっと処女だったさくら。
お互いの関係をちゃんと決めないまま、抱いてしまった。
だから、身体だけ求められてるって思ってる?
そういう男だと思われてる…?
なんか、避けられている理由が、これで解決するような気がする。
だから、「ずっと横にはいられない」って?
俺は今更、ちゃんと好きって、付き合いたいって話をしていないことに気づく。
泣いた彼女を慰めて、キスしたら嫌じゃないって言ってくれて、ホテル連れて行って…。
それで俺は勝手にさくらを彼女にできたって思ったのに、避けられて…。
彼女にしてみれば泣いて弱ってるところつけ込まれた…感じ?
俺は頭を抱えて椅子に座りこんだ。
これまで遊んでた相手と何となくくっついたり離れたり
その作法が通じるさくらじゃない。
ふと、腕時計を見る。
結構な時間が過ぎている。
俺は自分が使っていたノートPCを手に会議室を出て、自分の席へ向かった。
会議室を出て、階段を下りる。
思いがけず目の前にさくらだ。
「さくらさん?」
はっとしてこちらを見たさくらの見ていた携帯の画面が目に入る。
画面の上に『杉下くん』
俺はさくらに絡む問題をもうひとつ思い出した。
画面にはたくさんの吹き出しが相互に交わされている。
おれはさくらの個人的な連絡先すら知らない…!
一瞬で気持ちが泡立つのを抑え、何とか挨拶を絞り出す。
「お疲れ様。」
「お疲れ様です!」
ふたりの間には何も特別なことはないというような白々しい挨拶。
俺は少しいらだつ。
さっきまでの濃厚な時間を取り戻し
すれ違うときに足を止め、少しかがんで
「大丈夫?」
とささやく。
これだ。これがダメなんだ。
まずは話そうって決めたのに!
今回もとっさにさくらが身を反らして俺を避けるようにする。
「…はい!お気遣いなく!」
俺は自分の意志の弱さに呆れ、がっかりしてしまう。
「あの…さ、…少し…話す時間取れないかな?会社の外で?」
絞り出すように声に出す。
「えっと…ちょっと…しばらくは…忙しくて…。」
ああ、やっぱり…そうだよね。
「…そっか…。ん…じゃ、また。」
ここでこれ以上、ふたりが話しているのも不自然だ。
俺は自分の席に戻ったが、居心地が悪い。
さっき鏡の前で身なりを整えられてよかったが
見落とした痕跡が残っていないか、会社内で真面目な女子社員にあんなことしたって
誰かに見抜かれるんじゃないか…
「課長」
「えっ?」
西島恵に呼ばれて飛び上がる。
「?あの、受付から宅配便の連絡あったので、取って来ました」
「あ、ああ、ありがとう。」
「どうかしました?」
「え?いや、ごめん、ちょっと考え事してて。」
宅配便は幸和製菓から、広告の依頼を受けた新商品の試作品だった。
幸和製菓を退職した広沢さんもきっと見てくれるだろう。
俺が関わるPOPやポスターが広沢さんが継いだスーパーの店頭にも並ぶかもしれない。
大事な仕事場で、何してるんだ・・・
でも、さくらが目の前にいると、すべてが吹っ飛んでしまう。
逃げようとする彼女を逃さないように、そして拒まれず触れ合えることが嬉しくて…
ちゃんと話をして、もし、さくらが俺が望んでいるような気持ちを持っていなかったらと思うと怖い。
スギシタってやつがさくらとどんな付き合いなのか、聞いてしまうのも怖い…。
でも、次こそ、ちゃんと話そう。
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