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23.話さなきゃ@さくらside

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 藤堂さんとこんなことしていて、
 藤堂さんへの気持ちが、推しから恋愛感情に移行してたと今更気づいて
 杉下くんへの返事を保留している。

 ああダメ。
 まずは杉下くんにちゃんと話そう。
 このまま、藤堂さんとどうこうするの、杉下くんに、すごく申し訳ない。

 兎に角、杉下くんに、会わなくちゃ。
 私は化粧室を出て、階段側の人気ひとけのないスペースに立った。

 SNSのアプリを開く。
 杉下くんとのトーク画面を開いてメッセージを打つ。

「さくらさん?」
 そこに上の階から藤堂さんが下りてきた。
 しまった、藤堂さん、まだ役員フロアにいたんだ。

 杉下くんにまず、ちゃんとごめんなさいしなきゃって焦って…。
「…。」
 まずい、言葉が出てこない…
「お疲れ様。」
 藤堂さんが何事もなかったかのように挨拶する。
 あ、そっちでいいのか。
「お疲れ様です!」
 私も同僚としてあいさつを返す。

 すれ違いざま、藤堂さんが私の耳に口を寄せて
「大丈夫?」
 とささやく。

「…はい!お気遣いなく!」
 身を反らして藤堂さんから離れる。
 そんな私の態度を見て、藤堂さんは心なしかがっかりしたように見える。

「あの…さ、…少し…話す時間取れないかな?会社の外で?」
 ドキッとする。藤堂さんも、私たちの間の何かについて話す必要があると思ってるのかも…。

「えっと…ちょっと…しばらくは…忙しくて…。」
「…そっか…。ん…じゃ、また。」
 右手を肩の高さに上げて見せて、私の前を通り過ぎて営業部へ向かった。
 ほっとしてしまう。

 いずれ藤堂さんともちゃんと話さなきゃいけないのは分かってる。
 でも、まだどうやって話せばいいのかわからないし、
 今さっきのあんな行為の後でほかの社員の目のある中で落ち着いて話できない。
 藤堂さんの『大丈夫?』の意味を考えると恥ずかしくて顔が真っ赤になる。
 まだ、藤堂さんに溶かされ、絶頂まで連れていかれた感覚が残ってる。

 それに、まず
 杉下くんとちゃんと話さなきゃ。
 杉下くんを待たせたまま、藤堂さんとの関係に答えを出すのは失礼だ。
 っていうか、杉下くんの気持ちを聞いておいて、答えを出さずに
 藤堂さんとキスして…しかもあんな…深い…
 でもって、性交渉…、いや、れてはないけど…
 ダメだよね…

 好きな人がいる。だから杉下くんの気持ちに応えられない。
 まず杉下くんと話さなきゃ。
 藤堂さんへの気持ちと向かい合うのはそれから。
 そして、何より杉下くんとちゃんと話すまで、もう藤堂さんに流されない!
 絶対拒まなきゃ。

 私は杉下くんへのメッセージの続きを入力した。

『お疲れ様。今週、忙しい?会える?』
 杉下くんも仕事中のはず。
 席に戻った。
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