37 / 48
@さくらside
17.お久しぶりです@さくらside
しおりを挟む
30周年パーティの営業側の担当が藤堂さんと恵ちゃんに決まった。
総務部の担当は課長と私と言われた。
私はそんな大役勤まらないなど、あっちの業務が忙しい、こっちもあると散々抵抗したが、課長にも、主任にも、適任だの、お前なら大丈夫だの言われて逃げきれなかった。
仕事だ。
私的感情で藤堂さんから逃げるために仕事断るなんてダメだ。そんなの憧れてた藤堂さんや高峰さんからほど遠い。
休憩室で藤堂さんが、あんな風に私を腕に閉じ込めたのも、私が避けてたからだろうし。
藤堂さんからすれば、あの夜のことはなんてことないんだろう。私が自意識過剰なのかもしれない。
なんでわざわざベッドで私の体に付けた痕のことなんか言ったのか、わからないけど…。
あの痕も、今はもうすっかり消えてしまった。
藤堂さんたちとの打ち合わせにMeeting Roomに入る。
藤堂さんと恵ちゃんが入ってくる。
奥の上座に上司の木村課長を座らせてたので、当然課長の藤堂さんがその前に座ると思っていたのになぜか藤堂さんは恵ちゃんを奥に誘導して私の前の席の後ろに立つ。
なんで?
木村課長が、紹介しようとする。
「小林はご存じでしたかね?」
藤堂さんが満面の笑顔で私を見る。
口角は上がっているけど、目の奥が笑っていないような気がする。
営業スマイルってやつ?
「ええ、よく、知ってますよ。ねえ、さくらさん。」
よくって?私は藤堂さんの含みのある言い方を払拭しようとする。
「お久しぶりです…」
私は目を反らしたまま頭を下げる。
「うん。久しぶりだね。…なんでだろう?」
な、なんで?
「え、あの、まあ、部も違いますし…」
「んんっ?」
そうしてだろう。笑顔の藤堂さんに怒られている気がする…。
木村課長が説明している間も、藤堂さんの視線がずっと私を突き刺しているのを感じる。
足首に何かが当たる。
反射的にひっこめるとすねをくすぐるように何かが動く。
何?体温を感じる。
藤堂さんが、見てる、じっと見てる。藤堂さんが足に触れてるんだ。
どうしよう。
藤堂さんに、触れてもらえていることが、嬉しいって思ってしまう。
もっと、触れてほしいと思ってしまう。
もう、断ち切らなきゃいけないのに、相手のいる人に、横に立つのに気後れする、憧れの人にいつまでも思いを残していても報われないのに。
打ち合わせが終わると、木村課長は次の打ち合わせがあるので、片付けを私に任せて出て行ってしまう。
まあ、これで藤堂さんも恵ちゃんと一緒に営業部に戻るだろうと思っていたら、恵ちゃんも上司の藤堂さんを置いて、さっさと出て行ってしまう。
「では、よろしくお願いします。」
デスクの上を急いで片付ける。
藤堂さんがドアの方に行くので、ああ、出ていくんだと思ったら、藤堂さんは内側に残ったまま、ドアを閉めてしまう。
え?なんで?
「やっと、ちゃんと、俺を見たね。」
「あの、失礼します。」
慌てて出ようとすると前に藤堂さんが立ちふさがる。
「さくら、さっき、俺に足触られて、嫌だった?」
藤堂さんが近づいてくる。
「ねえ?どうなの?嫌なら、セクハラで訴える?ねえ?さくら?」
耳元で、藤堂さんの声で、名前を呼ばれる。
セクハラだなんて思わないよ、触れられて、嬉しいって思っちゃってたんだもの。
「あ、あの…」
「何?」
なんて言ったらいいの?憧れてる気持ちはまだ消えないけど、私はこの思いから卒業するって決めたんだもの。
ふうっと、藤堂さんが耳に息を吹きかける。
思わず抱えていた書類や手帳を落としてしまう。
「さくら、耳、弱いもんね。」
どうして、また、あの夜を思い出させるの?
ただ、一晩、慰めてくれただけでしょう?
これ以上、藤堂さんに地方に赴任中の高峰さんを裏切らせたくない。
藤堂さんが、そんな人であって欲しくないし、そんな人にしたくない。
あれは一度の間違い、私を慰めるための、特別。そうですよね?
「ねえ、嫌?」
嫌なわけない。
首を横に振る。
「さくら…なんで、避けるの?」
あからさまに避けている。打ち合わせ中も藤堂さんの目線から必死に逃げてしまった。
「…ごめんなさい…。」
確かに、変だよね。意識してる私、藤堂さん、困るよね。
ドアノブがガチャっと鳴る。藤堂さんが距離を取る。
「あ、まだここだった。課長、部長が探してますよ。あれ?さくらさん、落としちゃいました?」
恵ちゃんが書類を拾ってくれる。来てくれて助かったよ恵ちゃん。
「あ、ごめん。」
一緒に書類を集める。
藤堂さんが部屋を出ていく。ほっとした。
「さくらさん、丸菱の杉下さんとその後、どうなんですか?」
「あ、うん。ちょこちょこ連絡してるよ。またご飯行くの。」
あれから、この半月ほどの間に、杉下さんとは2度、会社帰りに待ち合わせして一緒にご飯を食べた。
「え、ほんとに?順調ですね~」
「そんなんじゃないよ。総務同士、情報交換。」
「まった~」
恵ちゃんに冷やかされる。
杉下さんもそんなつもりじゃないと思うけど、仕事の話が尽きなくて、一緒にいて楽なのは確か。
総務部の担当は課長と私と言われた。
私はそんな大役勤まらないなど、あっちの業務が忙しい、こっちもあると散々抵抗したが、課長にも、主任にも、適任だの、お前なら大丈夫だの言われて逃げきれなかった。
仕事だ。
私的感情で藤堂さんから逃げるために仕事断るなんてダメだ。そんなの憧れてた藤堂さんや高峰さんからほど遠い。
休憩室で藤堂さんが、あんな風に私を腕に閉じ込めたのも、私が避けてたからだろうし。
藤堂さんからすれば、あの夜のことはなんてことないんだろう。私が自意識過剰なのかもしれない。
なんでわざわざベッドで私の体に付けた痕のことなんか言ったのか、わからないけど…。
あの痕も、今はもうすっかり消えてしまった。
藤堂さんたちとの打ち合わせにMeeting Roomに入る。
藤堂さんと恵ちゃんが入ってくる。
奥の上座に上司の木村課長を座らせてたので、当然課長の藤堂さんがその前に座ると思っていたのになぜか藤堂さんは恵ちゃんを奥に誘導して私の前の席の後ろに立つ。
なんで?
木村課長が、紹介しようとする。
「小林はご存じでしたかね?」
藤堂さんが満面の笑顔で私を見る。
口角は上がっているけど、目の奥が笑っていないような気がする。
営業スマイルってやつ?
「ええ、よく、知ってますよ。ねえ、さくらさん。」
よくって?私は藤堂さんの含みのある言い方を払拭しようとする。
「お久しぶりです…」
私は目を反らしたまま頭を下げる。
「うん。久しぶりだね。…なんでだろう?」
な、なんで?
「え、あの、まあ、部も違いますし…」
「んんっ?」
そうしてだろう。笑顔の藤堂さんに怒られている気がする…。
木村課長が説明している間も、藤堂さんの視線がずっと私を突き刺しているのを感じる。
足首に何かが当たる。
反射的にひっこめるとすねをくすぐるように何かが動く。
何?体温を感じる。
藤堂さんが、見てる、じっと見てる。藤堂さんが足に触れてるんだ。
どうしよう。
藤堂さんに、触れてもらえていることが、嬉しいって思ってしまう。
もっと、触れてほしいと思ってしまう。
もう、断ち切らなきゃいけないのに、相手のいる人に、横に立つのに気後れする、憧れの人にいつまでも思いを残していても報われないのに。
打ち合わせが終わると、木村課長は次の打ち合わせがあるので、片付けを私に任せて出て行ってしまう。
まあ、これで藤堂さんも恵ちゃんと一緒に営業部に戻るだろうと思っていたら、恵ちゃんも上司の藤堂さんを置いて、さっさと出て行ってしまう。
「では、よろしくお願いします。」
デスクの上を急いで片付ける。
藤堂さんがドアの方に行くので、ああ、出ていくんだと思ったら、藤堂さんは内側に残ったまま、ドアを閉めてしまう。
え?なんで?
「やっと、ちゃんと、俺を見たね。」
「あの、失礼します。」
慌てて出ようとすると前に藤堂さんが立ちふさがる。
「さくら、さっき、俺に足触られて、嫌だった?」
藤堂さんが近づいてくる。
「ねえ?どうなの?嫌なら、セクハラで訴える?ねえ?さくら?」
耳元で、藤堂さんの声で、名前を呼ばれる。
セクハラだなんて思わないよ、触れられて、嬉しいって思っちゃってたんだもの。
「あ、あの…」
「何?」
なんて言ったらいいの?憧れてる気持ちはまだ消えないけど、私はこの思いから卒業するって決めたんだもの。
ふうっと、藤堂さんが耳に息を吹きかける。
思わず抱えていた書類や手帳を落としてしまう。
「さくら、耳、弱いもんね。」
どうして、また、あの夜を思い出させるの?
ただ、一晩、慰めてくれただけでしょう?
これ以上、藤堂さんに地方に赴任中の高峰さんを裏切らせたくない。
藤堂さんが、そんな人であって欲しくないし、そんな人にしたくない。
あれは一度の間違い、私を慰めるための、特別。そうですよね?
「ねえ、嫌?」
嫌なわけない。
首を横に振る。
「さくら…なんで、避けるの?」
あからさまに避けている。打ち合わせ中も藤堂さんの目線から必死に逃げてしまった。
「…ごめんなさい…。」
確かに、変だよね。意識してる私、藤堂さん、困るよね。
ドアノブがガチャっと鳴る。藤堂さんが距離を取る。
「あ、まだここだった。課長、部長が探してますよ。あれ?さくらさん、落としちゃいました?」
恵ちゃんが書類を拾ってくれる。来てくれて助かったよ恵ちゃん。
「あ、ごめん。」
一緒に書類を集める。
藤堂さんが部屋を出ていく。ほっとした。
「さくらさん、丸菱の杉下さんとその後、どうなんですか?」
「あ、うん。ちょこちょこ連絡してるよ。またご飯行くの。」
あれから、この半月ほどの間に、杉下さんとは2度、会社帰りに待ち合わせして一緒にご飯を食べた。
「え、ほんとに?順調ですね~」
「そんなんじゃないよ。総務同士、情報交換。」
「まった~」
恵ちゃんに冷やかされる。
杉下さんもそんなつもりじゃないと思うけど、仕事の話が尽きなくて、一緒にいて楽なのは確か。
2
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる