【R-18】藤堂課長は溺愛したい。~地味女子は推しを拒みたい。

絵夢子

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@藤堂side

15.合コンへ@藤堂side

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 定時を迎え、西島恵が席を立った。「お疲れさまでした」と、荷物をもってエレベーターとは逆の方向へ消える。
 総務部か。さくらを合コンに連れていくのか。

 なんとか目の前のパソコンでの作業を続ける。
 今日は全然進まない。気づくとさくらのことを考えている。

 ああだめだ。入社して10年。
 最初に先輩と一緒に幸和製菓の案件にかかわって、打ちのめされて以来、仕事だけはきっちりしっかりやってきた。
 だからこそ同期のうちで一番早く、先輩たちを追い越して課長職に着いた。
 さくらのことを早く解決しなければ。

 解決…どうすれば解決になる?
 さくらが俺を避ける理由を聞ければ解決?もう一度抱ければ?俺を「憧れ」って言ったよなって俺への気持ちを確認できれば?

 とりあえず、今日の合コンには黙って行かせるしかないのか?

 通路の方が少し騒がしい。定時を過ぎ、社を出ていく社員たちの中に、西島と…さくら。
 いや待て、あれはだめだろ。

 朝、休憩室で会ったときはストレートだった黒髪がふわふわに巻かれている。
 さくらもその髪を気にして触っている。
 これまでのお堅いイメージが払しょくされ、いわゆる「愛され女子」化している。
 いつものさくらを合コンに置いておいても、なかなか手を出しにくいかもしれないが、あれはだめだ。

 西島も、いつも同様に髪をふわふわにして、かわいい服を着ているが、あれは男慣れしていかにも感がある。
 しかし、さくらは清純で男慣れしていない、不器用な感じはそのままで、柔らかい雰囲気になっていて、この子が合コンにいたら、確実に本気で近づこうとする男がいる。

「恵ちゃんすごいね。美容師さんみたい。」
「毎朝やってますから~。」
 お前の仕業か、西島。

 ふたりがエレベーターホールの方へ向かっていく。
 俺はなすすべなく見送る。

 仕事は進まないが帰る気に慣れず、進まない仕事をしているふりをする。
 幸和製菓の仕事、部を挙げての大きな顧客のプロジェクト、部下たちの担当案件のフォロー。やることはたくさんある。たくさんの人が俺を頼りにしてくれている。
 でも、俺の頭の中はさくらひとりでいっぱいだった。

 一週間前の夜、さくらと二人でいたのに、一緒に朝まで…いや、朝起きたときには消えていたが…、なぜ今日はさくらが合コンに行くことになっているんだ…。
 そして俺はそれをこんな風に見送らなければいけないんだ・・・。

 俺はがっくりと頭を下げた。

 通路から「お疲れ様で~す」という聞き覚えのある声。
 小林賢祐だ。
 さくらのスケジュールを確認する癖ができ、同じ総務部の奴の名前の漢字が「小林賢祐」なのを知った。

「小林君」
 俺は気づくと席を立って、声を掛けていた。
「飲みに、行かない?」
「え?藤堂課長が、俺とですか…?」

 俺は少しでもさくらの通じるものに、すがりたかった。
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