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@さくらside
14.藤堂さんにつかまる@さくらside
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金曜日。
仕事終わりに恵ちゃんと合コンに参加することになっている。
学生時代、何度か誘われたことがあったが、男性との出会いを求める場に参加するのは、いけないことのような、怖いことのような気がして行ったことがない。
でも、自然な出会いを待っていても、そうそうそんなチャンスは訪れてはくれない。
私のように社外の人と会うチャンスの少ない仕事では毎日の会社への往復の日々の中で運命の出会いを求めても仕方ないのだ。
ものは試しだ。
恵ちゃんとはこの1週間、賢くんも加わることも多いが、一緒にランチしたり、帰りに飲みに行ったり、急接近している。
恵ちゃん自身が面白がって、私を改造しようと意気込んでいる。
つい、会社にはパンツスーツと白シャツを選んでしまうが、そんなお堅い恰好では、男子が手を出しにくいと、これには賢くんも賛同し、昨日は手持ちのスーツのスカートを着てみた。
備品や設備の点検の時にかがんだりするのでちょっと気になるが、脚立に乗って高いところの作業をしようとしたら賢くんが替わってくれたり、まあ、何とかなるものだ。
今日の服は、会社帰りに恵ちゃんと一緒に買いに行ったワンピースだ。
さらに、眼鏡は禁止といわれて、いとこの結婚式のときに購入したコンタクトレンズにしている。髪も結ばないでみてと恵ちゃんに言われている。
なれなくて、ちょっと変。膝の出るワンピースも、すごく恥ずかしい。
でも、一歩踏み出してみよう。
先週、処女を捨てたのだ。
服を替えるくらい、なんでもない。
始業前、紅茶を淹れようと、マグカップにティーバッグをいれて、お湯を注ぎに休憩室へ行く。一歩入って、ハイテーブルの並ぶ、奥に人がいるのに気づく。この時間は自分のカップを満たして席に持っていく人が多いので珍しい。
あいさつ…と思って目を向ける。
「さくら!」
藤堂さん?なんで?こっちの休憩室、使ったことないのに!完全に油断していた。
とっさに給湯室を出ようとしてしまう。
いや待て、それはおかしい。
普通に、別の部署の課長に対する対応をするべきだ。
ここで不自然に逃げたら、処女を藤堂さんに奪われて傷ついてるって藤堂さんが誤解してしまう。
「お疲れ様です。」
平静を装い、そのままカップにお湯を注ぎに中に進む。
背中に藤堂さんの視線を感じる。
どうしたらいいの?
ほかの人がそこにいたら、私、どうふるまうっけ?
「おはよう、さくらさん。」
ああ、そうだよね。おはようって挨拶するよね。
「…おはようございます。」
少し体をひねって藤堂さんの方を向いて頭を下げる。
給茶機の方へ体の向きを戻してお湯が満たされるのを待つ。
急に、後ろから、体の両側に腕が伸び、給茶機と藤堂さんに囲まれる。
藤堂さんが、近い…!
「藤堂課長、…人が来ます。」
「だって、さくら、逃げるよね。」
ばれてる…避けてるの…。
「…困ります…」
「俺も、さくらと話せなくて困ってる。」
耳のすぐ後ろで話す藤堂さんの息が、耳の後ろに触れる。
ずっと抑え込んでいた、ドキドキが発動する。
「ご用でしたら、部でうかがいますから…」
「いいの?みんなの前で?」
「何を…」
話そうっていうの?処女を奪った後の体の心配?口止め?
「あのっ!始業時間で、朝礼なのでっ」
藤堂さんとの距離に、何を話されるかの恐怖に、腕を潜り抜けて逃げてしまう。
だめ、やっぱり藤堂さんといると、ドキドキして、しかもまた触れてほしくなる…欲が出る…。
「さくら、あの痕、消えた?」
藤堂さんが後ろで言う。痕…藤堂さんが私の内腿に付けた…
あの夜の思い出の、具体的な行為のことを口にされ、恥ずかしくて顔が熱くなる。
思わず藤堂さんを振り返る。
なんで…そんなこと言うの…?覚えてて、いいってこと?口止めしたいんじゃないの?
何を言ったらいいのかわからず、そのまま席に戻った。
仕事終わりに恵ちゃんと合コンに参加することになっている。
学生時代、何度か誘われたことがあったが、男性との出会いを求める場に参加するのは、いけないことのような、怖いことのような気がして行ったことがない。
でも、自然な出会いを待っていても、そうそうそんなチャンスは訪れてはくれない。
私のように社外の人と会うチャンスの少ない仕事では毎日の会社への往復の日々の中で運命の出会いを求めても仕方ないのだ。
ものは試しだ。
恵ちゃんとはこの1週間、賢くんも加わることも多いが、一緒にランチしたり、帰りに飲みに行ったり、急接近している。
恵ちゃん自身が面白がって、私を改造しようと意気込んでいる。
つい、会社にはパンツスーツと白シャツを選んでしまうが、そんなお堅い恰好では、男子が手を出しにくいと、これには賢くんも賛同し、昨日は手持ちのスーツのスカートを着てみた。
備品や設備の点検の時にかがんだりするのでちょっと気になるが、脚立に乗って高いところの作業をしようとしたら賢くんが替わってくれたり、まあ、何とかなるものだ。
今日の服は、会社帰りに恵ちゃんと一緒に買いに行ったワンピースだ。
さらに、眼鏡は禁止といわれて、いとこの結婚式のときに購入したコンタクトレンズにしている。髪も結ばないでみてと恵ちゃんに言われている。
なれなくて、ちょっと変。膝の出るワンピースも、すごく恥ずかしい。
でも、一歩踏み出してみよう。
先週、処女を捨てたのだ。
服を替えるくらい、なんでもない。
始業前、紅茶を淹れようと、マグカップにティーバッグをいれて、お湯を注ぎに休憩室へ行く。一歩入って、ハイテーブルの並ぶ、奥に人がいるのに気づく。この時間は自分のカップを満たして席に持っていく人が多いので珍しい。
あいさつ…と思って目を向ける。
「さくら!」
藤堂さん?なんで?こっちの休憩室、使ったことないのに!完全に油断していた。
とっさに給湯室を出ようとしてしまう。
いや待て、それはおかしい。
普通に、別の部署の課長に対する対応をするべきだ。
ここで不自然に逃げたら、処女を藤堂さんに奪われて傷ついてるって藤堂さんが誤解してしまう。
「お疲れ様です。」
平静を装い、そのままカップにお湯を注ぎに中に進む。
背中に藤堂さんの視線を感じる。
どうしたらいいの?
ほかの人がそこにいたら、私、どうふるまうっけ?
「おはよう、さくらさん。」
ああ、そうだよね。おはようって挨拶するよね。
「…おはようございます。」
少し体をひねって藤堂さんの方を向いて頭を下げる。
給茶機の方へ体の向きを戻してお湯が満たされるのを待つ。
急に、後ろから、体の両側に腕が伸び、給茶機と藤堂さんに囲まれる。
藤堂さんが、近い…!
「藤堂課長、…人が来ます。」
「だって、さくら、逃げるよね。」
ばれてる…避けてるの…。
「…困ります…」
「俺も、さくらと話せなくて困ってる。」
耳のすぐ後ろで話す藤堂さんの息が、耳の後ろに触れる。
ずっと抑え込んでいた、ドキドキが発動する。
「ご用でしたら、部でうかがいますから…」
「いいの?みんなの前で?」
「何を…」
話そうっていうの?処女を奪った後の体の心配?口止め?
「あのっ!始業時間で、朝礼なのでっ」
藤堂さんとの距離に、何を話されるかの恐怖に、腕を潜り抜けて逃げてしまう。
だめ、やっぱり藤堂さんといると、ドキドキして、しかもまた触れてほしくなる…欲が出る…。
「さくら、あの痕、消えた?」
藤堂さんが後ろで言う。痕…藤堂さんが私の内腿に付けた…
あの夜の思い出の、具体的な行為のことを口にされ、恥ずかしくて顔が熱くなる。
思わず藤堂さんを振り返る。
なんで…そんなこと言うの…?覚えてて、いいってこと?口止めしたいんじゃないの?
何を言ったらいいのかわからず、そのまま席に戻った。
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