9 / 48
@藤堂side
8.4月1日21:38 涙@藤堂side
しおりを挟む
俺、気づいたらさくらの頭撫でてた。
自分を認めてくれない部長の下で、みんなの役に立とうとして、一生懸命仕事して、
たまたま相談した別の部の課長のアドバイスに喜んで。けなげで、かわいい。
さくらはびっくりして、固まってる。
職場の、別の部署の後輩。こんなことして変なことになったらまずいって分かってる。
でも、もう、ほんと、愛しい子。
さくらは固まったまま、俺を見てる。
「えらいね。よくあんな部長の下で頑張って来たね。
みんなが飲んで騒いでる横で、会場中駆け回って、
申請書がめんどくさいっていう奴らにちゃんと説明して、残業してる俺に紅茶淹れてくれて…」
さくらの目から、ぽろぽろ涙がこぼれた。
「あ…ごめんなさ…い」
さくらが眼鏡をはずして自分のカバンを探る。
俺は思わず、さくらの頭を自分の肩に引き寄せた。
「泣かないで」
って言いかけたけど、違う。今、さくらはずっとため込んでいた気持ちをやっと外に出せている。
俺の前で、そんな風に泣いてくれている。
「うん。泣いちゃえ。さくらは、頑張ったんだから。」
あ、さくらって呼んじゃった。もういいや…酔っぱらいだって許してくれ…。
さくらは自分の手を俺との間に差し込んで、一生懸命涙をぬぐっている。
「いいよ、俺の肩濡らして。泣かしたの、俺なんだから。」
さくらは、しゃくりあげて泣いた。
ほかの客や店員が気にしてちらちら見るので、
俺は両手でさくらを抱え込んで、周りの視線からさくらの泣き顔を隠した。
「さくらは、いい子だよ。」
「そんなの言われたら」
「いいって」
思う存分、泣いちまえ。
俺の顎をさくらの髪がくすぐる。
泣かしといて、俺の前でさくらが、しっかりもののさくらが、泣いてくれるのが嬉しい。
思う存分、甘やかして、辛いの吐き出させたい。
「さくら、出ようか」
もっと、さくらの心の中にたまっているものを吐き出させてあげたかった。
「すみません」
「ゆっくり出てきて?」
俺はレジで会計を済ませた。ハンカチで顔を拭きながらついてきたさくらが、
泣き顔をふせたまま、バッグがら財布を出そうとする手を握った。
「いいって」
「じゃあ…、ごちそうさまです」
涙混じりの声でさくらが律儀に言う。
俺はその手を放さず、店の外を歩いた。
さくらの手を握って歩いている。涙でしっとりして、小さくてかわいい手。
離れないように、痛くないように、力の加減をする。
俺がどこに行こうとしてるのがわからないまま、さくらは何も言わず手を引かれてついてくる。
俺への信頼なのか、役職者に抗えないと思っているのか。
行先もどうするつもりかも聞かずについてくるけなげなさくら。
この一帯は会社が入るビルの間に、働く人たちが通う飲食店が並んでいる。
その隙間に、小さな公園がある。
遊具のない、小さな空きスペースにベンチと植木だけのある公園で、
昼時にはそこで食事をとる人を見かけるが今は誰もいない。
俺はさくらの手を引いてベンチに座った。さくらも倣って横に並ぶ。。
「ああ、あの、藤堂さん、落ち着いたら、私、帰りますから、藤堂さんはもう…」
俺に迷惑をかけていると思ったんだろう、さくらが気を遣っている。
落ち着いて、泣き止んではいるけれど、街頭や看板の明かりでさくらの潤んだ瞳が光る。
「泣いている女の子、置いていけるわけ、ないでしょ。」
あ、「女の子」なんて言っちゃって、セクハラ案件かなあ。
でも、一生懸命頑張って、報われなかった思いを吐き出して泣いている25歳のさくらは、かわいい女の子だった。
ここで、とことん、甘やかして、心のなかのつらい気持ちを全部涙で流させてあげたい。
自分を認めてくれない部長の下で、みんなの役に立とうとして、一生懸命仕事して、
たまたま相談した別の部の課長のアドバイスに喜んで。けなげで、かわいい。
さくらはびっくりして、固まってる。
職場の、別の部署の後輩。こんなことして変なことになったらまずいって分かってる。
でも、もう、ほんと、愛しい子。
さくらは固まったまま、俺を見てる。
「えらいね。よくあんな部長の下で頑張って来たね。
みんなが飲んで騒いでる横で、会場中駆け回って、
申請書がめんどくさいっていう奴らにちゃんと説明して、残業してる俺に紅茶淹れてくれて…」
さくらの目から、ぽろぽろ涙がこぼれた。
「あ…ごめんなさ…い」
さくらが眼鏡をはずして自分のカバンを探る。
俺は思わず、さくらの頭を自分の肩に引き寄せた。
「泣かないで」
って言いかけたけど、違う。今、さくらはずっとため込んでいた気持ちをやっと外に出せている。
俺の前で、そんな風に泣いてくれている。
「うん。泣いちゃえ。さくらは、頑張ったんだから。」
あ、さくらって呼んじゃった。もういいや…酔っぱらいだって許してくれ…。
さくらは自分の手を俺との間に差し込んで、一生懸命涙をぬぐっている。
「いいよ、俺の肩濡らして。泣かしたの、俺なんだから。」
さくらは、しゃくりあげて泣いた。
ほかの客や店員が気にしてちらちら見るので、
俺は両手でさくらを抱え込んで、周りの視線からさくらの泣き顔を隠した。
「さくらは、いい子だよ。」
「そんなの言われたら」
「いいって」
思う存分、泣いちまえ。
俺の顎をさくらの髪がくすぐる。
泣かしといて、俺の前でさくらが、しっかりもののさくらが、泣いてくれるのが嬉しい。
思う存分、甘やかして、辛いの吐き出させたい。
「さくら、出ようか」
もっと、さくらの心の中にたまっているものを吐き出させてあげたかった。
「すみません」
「ゆっくり出てきて?」
俺はレジで会計を済ませた。ハンカチで顔を拭きながらついてきたさくらが、
泣き顔をふせたまま、バッグがら財布を出そうとする手を握った。
「いいって」
「じゃあ…、ごちそうさまです」
涙混じりの声でさくらが律儀に言う。
俺はその手を放さず、店の外を歩いた。
さくらの手を握って歩いている。涙でしっとりして、小さくてかわいい手。
離れないように、痛くないように、力の加減をする。
俺がどこに行こうとしてるのがわからないまま、さくらは何も言わず手を引かれてついてくる。
俺への信頼なのか、役職者に抗えないと思っているのか。
行先もどうするつもりかも聞かずについてくるけなげなさくら。
この一帯は会社が入るビルの間に、働く人たちが通う飲食店が並んでいる。
その隙間に、小さな公園がある。
遊具のない、小さな空きスペースにベンチと植木だけのある公園で、
昼時にはそこで食事をとる人を見かけるが今は誰もいない。
俺はさくらの手を引いてベンチに座った。さくらも倣って横に並ぶ。。
「ああ、あの、藤堂さん、落ち着いたら、私、帰りますから、藤堂さんはもう…」
俺に迷惑をかけていると思ったんだろう、さくらが気を遣っている。
落ち着いて、泣き止んではいるけれど、街頭や看板の明かりでさくらの潤んだ瞳が光る。
「泣いている女の子、置いていけるわけ、ないでしょ。」
あ、「女の子」なんて言っちゃって、セクハラ案件かなあ。
でも、一生懸命頑張って、報われなかった思いを吐き出して泣いている25歳のさくらは、かわいい女の子だった。
ここで、とことん、甘やかして、心のなかのつらい気持ちを全部涙で流させてあげたい。
2
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる
春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。
幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……?
幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。
2024.03.06
イラスト:雪緒さま
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる