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@藤堂side
4.4月1日19:46 乾杯@藤堂side
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俺はさくらと一緒にエレベーターで会社の入る建物を出た。
仕事場を離れて、さくらと二人でいることに、わくわくしている。
「さくらさん、何食べたい?」
「私はなんでも…。」
「う~ん。お酒のむ店でいい?ちょっと飲みたい気分なんだ。金曜だし。」
「はい。おまかせします。」
合コンで知り合った子とかだと「なんでもいい」って言われるとちょっとイラっと来るんだけど、今はさくらを誘い出せたことが嬉しいのが勝る。
どこがいいかな、旨いもん食わせてやりたい。
「居酒屋だけど、魚うまい店があるんだ。いい?」
「はい。」
気負って気取った店連れて行って、浮かれた気持ちを見抜かれたくなくて、行きなれた店に連れていく。
こういう感じ、久しぶりだな。
店に着くまで、この二人で歩くのに慣れなくて、ふたりの距離とか歩くスピードとか、なんだかぎこちない気がする。
さくらが気まずく感じなければいいな。
暖簾をくぐり、店に入る。横並びのカウンター席へ。向かい合うより話しやすい。
肩を並べて座ってみて、すぐ近く、触れ合いそうな距離にさくらの肩、近くにさくらの顔があってドキッとする。
同じメニューを見る。肩が自然と触れる。
「藤堂課長、よくいらっしゃるんですか。」
「うん、同期とか、課の連中とかと何度か。」
あ、会社の奴らが来ないといいな。でも知らない店で失敗したくなかったし。
「じゃあ、課長のおすすめを。」
「ほんと?じゃあ、選んじゃうね。飲み物は?」
さくらは梅酒のソーダ割、俺は生ビール、それにこの店で旨いつまみを頼んだ。
「さくらさん、好き嫌い、ない?」
「はい。なんでもおいしくいただきます。」
「で、甘いものも?」
「はい。」
さくらは笑った。
「チョコレートは常備してますし、休みのたんび、ケーキ買ったり、甘いもの食べに行ったりしちゃいます。藤堂課長も、チョコレートお好きなの、意外でした。」
「うん、コーヒー甘くしないで、一緒に甘いも食べんのが好き。でも詳しくないんだよね。こんど、連れて行ってよ。」
さりげなく、「次」へつなぐ。
返事はない。流されたか…。
お通しをつつく。
「今日さ、昔から世話になってる担当さんのいるところ行ってて、いつもと違う感じのプラン出してきたの。別プランで保険掛けて。」
「藤堂課長でも、そんなチャレンジされるんですね?」
「うん。その担当さん、辞めることになってて、一緒にやる最後の仕事だから、妥協なく、俺の納得いくのを見てほしくて。でも悩んじゃってたの。」
さくらは興味深そうに話を聞いてくれている。
「さくらさんのね、チョコレートと紅茶のおかげでいいプランできた。」
「ええ?あれのおかげですか?」
「うん。あれのおかげ。ありがとね。」
さくらの顔を覗き込む。
さくらは照れたように笑う。
やべ。かわいい…。
「さくらさん、入社3年?えっと、25?」
「はい。ちょうど3年ですね。25になりました。藤堂さんは…10年?」
「うん。10年だね~。よく知ってるね?32だよ~。あ、おじさんって思ってる?」
「思いませんよ。あ、来た来た」
飲み物が届く。
「よし、乾杯。お疲れ様~。」
「お疲れ様です。」
グラスを持ち上げ、口をつける。広沢さんにあの案を採用されたこと、さくらをこうして連れ出せたこと、ビールがうまい。
「か~っ、うまい!」
ジョッキの半分ほどを一気に飲むとさくらは目を丸くした。
「藤堂課長、すごい。CMみたい。」
なんだ、この子、よく笑うじゃん。会社では難しい顔してるけど。気を許してくれたのかな。
「ね、『課長』やめようよ。もう退勤したんだし。」
「え?あ…じゃあ、藤堂さん?」
「そ。」
仕事場を離れて、さくらと二人でいることに、わくわくしている。
「さくらさん、何食べたい?」
「私はなんでも…。」
「う~ん。お酒のむ店でいい?ちょっと飲みたい気分なんだ。金曜だし。」
「はい。おまかせします。」
合コンで知り合った子とかだと「なんでもいい」って言われるとちょっとイラっと来るんだけど、今はさくらを誘い出せたことが嬉しいのが勝る。
どこがいいかな、旨いもん食わせてやりたい。
「居酒屋だけど、魚うまい店があるんだ。いい?」
「はい。」
気負って気取った店連れて行って、浮かれた気持ちを見抜かれたくなくて、行きなれた店に連れていく。
こういう感じ、久しぶりだな。
店に着くまで、この二人で歩くのに慣れなくて、ふたりの距離とか歩くスピードとか、なんだかぎこちない気がする。
さくらが気まずく感じなければいいな。
暖簾をくぐり、店に入る。横並びのカウンター席へ。向かい合うより話しやすい。
肩を並べて座ってみて、すぐ近く、触れ合いそうな距離にさくらの肩、近くにさくらの顔があってドキッとする。
同じメニューを見る。肩が自然と触れる。
「藤堂課長、よくいらっしゃるんですか。」
「うん、同期とか、課の連中とかと何度か。」
あ、会社の奴らが来ないといいな。でも知らない店で失敗したくなかったし。
「じゃあ、課長のおすすめを。」
「ほんと?じゃあ、選んじゃうね。飲み物は?」
さくらは梅酒のソーダ割、俺は生ビール、それにこの店で旨いつまみを頼んだ。
「さくらさん、好き嫌い、ない?」
「はい。なんでもおいしくいただきます。」
「で、甘いものも?」
「はい。」
さくらは笑った。
「チョコレートは常備してますし、休みのたんび、ケーキ買ったり、甘いもの食べに行ったりしちゃいます。藤堂課長も、チョコレートお好きなの、意外でした。」
「うん、コーヒー甘くしないで、一緒に甘いも食べんのが好き。でも詳しくないんだよね。こんど、連れて行ってよ。」
さりげなく、「次」へつなぐ。
返事はない。流されたか…。
お通しをつつく。
「今日さ、昔から世話になってる担当さんのいるところ行ってて、いつもと違う感じのプラン出してきたの。別プランで保険掛けて。」
「藤堂課長でも、そんなチャレンジされるんですね?」
「うん。その担当さん、辞めることになってて、一緒にやる最後の仕事だから、妥協なく、俺の納得いくのを見てほしくて。でも悩んじゃってたの。」
さくらは興味深そうに話を聞いてくれている。
「さくらさんのね、チョコレートと紅茶のおかげでいいプランできた。」
「ええ?あれのおかげですか?」
「うん。あれのおかげ。ありがとね。」
さくらの顔を覗き込む。
さくらは照れたように笑う。
やべ。かわいい…。
「さくらさん、入社3年?えっと、25?」
「はい。ちょうど3年ですね。25になりました。藤堂さんは…10年?」
「うん。10年だね~。よく知ってるね?32だよ~。あ、おじさんって思ってる?」
「思いませんよ。あ、来た来た」
飲み物が届く。
「よし、乾杯。お疲れ様~。」
「お疲れ様です。」
グラスを持ち上げ、口をつける。広沢さんにあの案を採用されたこと、さくらをこうして連れ出せたこと、ビールがうまい。
「か~っ、うまい!」
ジョッキの半分ほどを一気に飲むとさくらは目を丸くした。
「藤堂課長、すごい。CMみたい。」
なんだ、この子、よく笑うじゃん。会社では難しい顔してるけど。気を許してくれたのかな。
「ね、『課長』やめようよ。もう退勤したんだし。」
「え?あ…じゃあ、藤堂さん?」
「そ。」
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