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@藤堂side
3.4月1日19:12 お礼のメシ@藤堂side
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そして、今日、幸和製菓で新製品の広告プランを広沢さんたちにプレゼンした。
俺が得意とする、クールなCGを使ったキャッチーなヴィジュアルやコピー。幸和の若手を中心に反応は上々。
「藤堂さんらしいね。」
広沢さんもうなずいている。
「子どもだけじゃなく、大人も手に取ってもらえる感じで、おしゃれで、いいんじゃない。」
おれも、この案で、問題ないとは思っている。だけど…
「広沢さん、採用するかどうかはともかく。もう一案作ってきたんで、見てもらっていいですか?」
「二つも作ってくれたの?」
企画書をカバンから出して渡す。
「これまで俺がやってきた感じとは全然違うんで、正直、幸和さんの期待とは外れると思います。」
広沢さんが興味深げに見てくれる。
もう一案は幸和製菓のもともと持ってた懐かしさを感じさせるコンセプトだ。映画やアニメの、誰かにお菓子を渡されてて食べるシーンを集めたビジュアル。
誰かに気遣われて、お菓子をもらう幸せ、親からおやつをもらう子供の幸せ、そんな広告。さくらから夜遅くにもらったチョコレートとノンカフェインのお茶みたいに染みる優しさ。
広沢さんはしばらく黙って企画書を見ていた。
「藤堂君、これは…」
「わかってます。幸和製菓さんの懐かしいお菓子っていうイメージを、俺は広沢さんと壊してきました。でも、今回の新製品は、無添加にこだわって、食べる人をいたわった製品です。これは、本来の幸和さんの優しさや、なつかしさに通じます。10年、広沢さんと俺でそのイメージを壊してきたからこそ、このイメージが、かえって新鮮だと思うんです。」
広沢さんが考え込む。広沢さんのところの若手が広沢さんの手から企画書を受け取って見始めた。
「へえ~!藤堂さんにしては、ずいぶんロマンチックですね~。これいいですね!」
俺と広沢さんがその若手の顔を見る。
「エモいって感じだし、CG使ったおしゃれなヴィジュアルって、正直もうありふれてるでしょ。」
広沢さんが俺の目を見てうなずいた。
「こっちで行こうよ、藤堂君。」
社に帰って、採用されたプランでの制作手配をする。映画やアニメの権利関係、役者の手配、音楽の選定…
ずっと企画を作るのに残業していたので早めに切り上げようかな、と思って19時過ぎ、部下の仕事の確認をしていると通路をさくらが通るのが目に入った。スプリングコートを着てバッグを肩にかけている。さくらも今日は早く帰れるのか。
俺は席を離れ、さくらに声をかける。
「さくらさん、今日は、もう帰り?」
「藤堂課長!お疲れ様です。はい、お先に…」
「今日なんか予定ある?メシ行かない?」
「えっ?」
「予定あった?」
「いえ…」
「じゃ、行こうよ。この間のお礼におごるから。」
「この間?」
「うん、チョコレートと紅茶。おかげでいい仕事できたから。」
たまに挨拶するだけの他部門の課長にメシに誘われてさくらは戸惑っている。
「そんな、お礼なんて…」
「遠慮すんなよ。俺が付き合って欲しいんだから。ちょっと待って、すぐ用意してくる。」
やや強引だったのは自覚している、パワハラかな。
でも、この子ともっと話してみたいし、本当にお礼したい気分だった。
俺が得意とする、クールなCGを使ったキャッチーなヴィジュアルやコピー。幸和の若手を中心に反応は上々。
「藤堂さんらしいね。」
広沢さんもうなずいている。
「子どもだけじゃなく、大人も手に取ってもらえる感じで、おしゃれで、いいんじゃない。」
おれも、この案で、問題ないとは思っている。だけど…
「広沢さん、採用するかどうかはともかく。もう一案作ってきたんで、見てもらっていいですか?」
「二つも作ってくれたの?」
企画書をカバンから出して渡す。
「これまで俺がやってきた感じとは全然違うんで、正直、幸和さんの期待とは外れると思います。」
広沢さんが興味深げに見てくれる。
もう一案は幸和製菓のもともと持ってた懐かしさを感じさせるコンセプトだ。映画やアニメの、誰かにお菓子を渡されてて食べるシーンを集めたビジュアル。
誰かに気遣われて、お菓子をもらう幸せ、親からおやつをもらう子供の幸せ、そんな広告。さくらから夜遅くにもらったチョコレートとノンカフェインのお茶みたいに染みる優しさ。
広沢さんはしばらく黙って企画書を見ていた。
「藤堂君、これは…」
「わかってます。幸和製菓さんの懐かしいお菓子っていうイメージを、俺は広沢さんと壊してきました。でも、今回の新製品は、無添加にこだわって、食べる人をいたわった製品です。これは、本来の幸和さんの優しさや、なつかしさに通じます。10年、広沢さんと俺でそのイメージを壊してきたからこそ、このイメージが、かえって新鮮だと思うんです。」
広沢さんが考え込む。広沢さんのところの若手が広沢さんの手から企画書を受け取って見始めた。
「へえ~!藤堂さんにしては、ずいぶんロマンチックですね~。これいいですね!」
俺と広沢さんがその若手の顔を見る。
「エモいって感じだし、CG使ったおしゃれなヴィジュアルって、正直もうありふれてるでしょ。」
広沢さんが俺の目を見てうなずいた。
「こっちで行こうよ、藤堂君。」
社に帰って、採用されたプランでの制作手配をする。映画やアニメの権利関係、役者の手配、音楽の選定…
ずっと企画を作るのに残業していたので早めに切り上げようかな、と思って19時過ぎ、部下の仕事の確認をしていると通路をさくらが通るのが目に入った。スプリングコートを着てバッグを肩にかけている。さくらも今日は早く帰れるのか。
俺は席を離れ、さくらに声をかける。
「さくらさん、今日は、もう帰り?」
「藤堂課長!お疲れ様です。はい、お先に…」
「今日なんか予定ある?メシ行かない?」
「えっ?」
「予定あった?」
「いえ…」
「じゃ、行こうよ。この間のお礼におごるから。」
「この間?」
「うん、チョコレートと紅茶。おかげでいい仕事できたから。」
たまに挨拶するだけの他部門の課長にメシに誘われてさくらは戸惑っている。
「そんな、お礼なんて…」
「遠慮すんなよ。俺が付き合って欲しいんだから。ちょっと待って、すぐ用意してくる。」
やや強引だったのは自覚している、パワハラかな。
でも、この子ともっと話してみたいし、本当にお礼したい気分だった。
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