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第四章 別離の足音~義兄の献身

11.父娘の生き方

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 エリザベスは、ビルヘルムが自分の体に腕を回したことで、ビルヘルムを手に入れたと勝利を確信した。


 領主の次男は夜な夜な街に出ては、女が相手する酒場に出入りしていた。
 商才もなく、勤勉ですらないにもかかわらず野心ばかりを持つ父の企みで、エリザベスはこの酒場で働き、領主の次男に近づいた。

 エリザベスは次男を酔わせ、次男と関係することに成功し、以来、次男に宿屋に呼ばれては関係を持った。
 父は、避妊はせず、子を孕めと急かした。たとえ夫人となれずとも、子をなした相手には生活の保障をせざるを得ない。
 子は私生児といえども貴族の血を引く子であり、その母の家族には何かしらの恩恵があるはずだ。
 しかし、次男はすぐにエリザベスに関心を失い、別の女と関係するようになった。

 エリザベスが貴族の男すら陥落させる価値があると思った父は、ちょうど商談に訪れた侯爵家の次男を狙った。
 ウィストリア侯爵家との商談は決裂し、面会の機会はなくなり、訪れたビルヘルムは真面目で領主の次男の時のように近づける余地はない。
 ビルヘルムの誠実そうな人柄に合わせ、娘が商談の場で恋に落ちたという手紙で興味を引こうとした。
 本来であれば、侯爵家が相手にするはずのない話であった。侯爵夫人がビルヘルムに見せようともしなかった手紙である。しかし、クリスタから、皇室から、最も離れることを考えていたビルヘルムがこの話を利用したのだ。

 エリザベスも、父の命で領主の次男に近づいたものの、貴族に選ばれたことに満足した。それだけの価値のある自分の体を、これまでのように平民の平凡な男に許すことが惜しく思えるようになった。
 たとえ選ばれたのが男たちに快楽を仕込まれた体や淫らな技であったとしても、それが自分の女としての価値を示していると思えた。

 侯爵家の次男、皇太子の婚約者の兄もまた、自分を求めるのだと早く勝利を得たかった。
 そして、自身との体の関係で、侯爵家次男をとの婚約を確かなものにしたかった。
 領主の次男には早々に飽きられ、捨てられたというのに、自身にはそれだけの価値があると思い込んでいた。

 愚かな父娘の正体をもはや見抜いているビルヘルムだったが、自身がこの罠にはまることは問題ではなかった。
 後でビルヘルムが侯爵家と縁を断ち、実家の男爵家に戻った上で婿入りするつもりであり、エリザベスが皇太子妃と義姉妹にはなれないと知り、そしりを受けたとしてもどうでもよい。ただ、クリスタが皇太子妃として、皇后として曇りなく王道を進めさえすれば。
 そのためには皇太子の純粋な愛情をクリスタに向ける必要があった。

 ただ、そのためだけに、ビルヘルムはこの父娘に自分を与えようとしていた。
 皇太子に、自分がクリスタの横を完全に離れるつもりであるのを示すために。


 エリザベスはビルヘルムと唇を合わせ、ビルヘルムの口腔に舌をねじ込んだ。
 舌をからめ、自分が相手を欲しがっているのを示した。これまでの男たちが喜んだように。
 ビルヘルムは、エリザベスが求めるまま、ねじ込まれた舌を受け入れ、その動きに合わせた。

 薄い夜着越しにエリザベスの乳房がビルヘルムの胸に上から押し付けられその柔らかさ、重みがビルヘルムに伝わった。体を押し付けながら、エリザベスの手はビルヘルムの股間へ伸びた。

「うっ」
 服越しにエリザベスの指で刺激され、ビルヘルムはとっさにエリザベスの腕をつかんでその動きを制した。

「ビルヘルム様…怖いことなんかありません。私が、お情けを頂戴したいのです。遠慮は不要です。」
 エリザベスは身を起こし、ナイトウェアを脱いだ。豊満な胸が月あかりに浮かんだ。
 そして、ビルヘルムの手を自分の両胸にいざない、ビルヘルムの手の上からに自分の手を重ね、揉みしだきながらから身をくねられて甘い声を漏らした。
 腰をくねらせる度、ビルヘルムの腰をまたいだエリザベスの股間とビルヘルムの男根が布越しに擦れた。

 なんの感情も抱かない相手と淫らな行為をしている自分をビルヘルムは哀れで、汚いものに感じたが、それゆえに、この娘と婚姻する目的に近づいたと思えた。

 エリザベスはビルヘルムの脚の間にうずくまりビルヘルムの男根を取り出し直接指で刺激した。
 ビルヘルムには屈辱だったが、愛情という清いものから遠い薄汚い性交が自身とクリスタと遠ざけてくれると思えた。

 拒絶しないビルヘルムが自身の愛撫を喜んでいるものと信じるエリザベスの行為はより淫らなものになった。
 エリザベスの口腔の温かさと、その巧みな刺激により、ビルヘルムの雄が目覚め、固く猛った。エリザベスはこの勝利に喜び、自身の下着をはぎ取ると、ビルヘルムの顔をまたぎ、指で開いて見せた。
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