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7.初夜が明けて

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 翌朝、ローズが陽の光を感じて目を覚ますと、大公の姿はなかった。
 ベッドの端で大公の腕の中でそのまま気を失うように眠ってしまったが、枕に頭を乗せ、大きなベッドのほぼ中央に横たえられていた。
 目の前の枕にもへこみがある。大公もここで一晩一緒に眠っていたのだろうか。自分が来ているのが大きなナイトガウンなのにも気づいた。大公のもののようだ。ナイトドレスは眠っている人には着せにくいので大公のガウンをまとわせてくれたようだ。

 初夜にほかの男を呼び、あのようなひどい仕打ちをしながら、大公が時折ローズへの愛情を垣間見せていたように思えた。護衛騎士にローズを辱めさせていた時は冷酷で非道であったのが、体をつなげるときには、痛みに耐えるローズを気遣い、手を握らせ、優しくあちこちに口づけをし、愛おしそうに見つめていた。
 ところどころ記憶はあいまいだが、不思議なことを言っていた
―おちる・・・?どこにって言ってたかしら…
 ほかの男の前で衣服をはぎ取りながら、眠るローズに自分のガウンを着せて・・・
 婚儀が済み、体をつないだ。でも心は遠く、大公の気持ちをうかがい知ることができなった。
 すべて夢であったような気もするが、体に残る違和感が、現実だったと教えていた。

 大公は、寝室にローズを残し執務室にいた。
 海賊討伐に皇都を離れた日々を思い返す。
 長く婚約者のローズに会えない日々を過ごしながら、早く帝都に帰り、まだ少女のローズを腕に掻き抱き、そのまま唇を奪いたいと夢想した。美しい金髪に顔をうずめ、ローズの香りに溺れたいと。そして何もかもすべて自分のものにしたいと。

 勝利をおさめ、ずっと軍服の中に忍ばせていたローズの刺繍入りのハンカチとともに皇都に帰還した時、ローズはすました顔で優雅な一礼を見せた。涙にぬれた顔を見せることも、思わず抱き着くこともなく、ドレスをつまみ、腰を低くし頭をさげ、完璧な礼をして
「公爵閣下、戦勝、お祝い申し上げます」と冷静に迎えた。自分との思いの差に愕然とした。

 まだ少女のローズを汚す想像をしてしまう自分と、淑女として気高く、美しく、穢れなく存在しているローズ。その距離は大公位を授かり、国中に称えられるカーライルを孤独に突き放した。

 とうとう昨夜、ローズの貞操を奪い、自分のものにした。護衛騎士の前で裸を晒し、拘束して護衛に口淫させ、自身の男根に娼婦のように口で奉仕させた。
 それでも辱めに抗うローズは美しく、恥辱に耐えながら、気高く、大公は自分の中にあるローズへの愛情や執着も、劣等感をも打ち消すことはできなかった。美しく、高潔な婚約者、今は妻となったローズを自分のように淫らに相手を求めるふしだらな存在にしてしまいたかった。そうすれば、自身の劣等感や罪悪感が消えると思った。しかし、残ったのは後悔だけだった。行為の後、眠るローズは穢れには程遠く、神々しく美しかった。
 それでも、体をつないだあの時、ローズは口づけを返してきた。
 夫ではない護衛騎士の与える快感に達してしまったローズ。ほかの男に溶かされた蜜壺に、夫のものを迎えて純潔を散らしたあの時、二人は一緒に淫らに堕ち、真に一つであった気がした。

 また彼女と一つに堕ちることができたなら・・・。
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