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異世界なのか はっきりしない世界
迷える連合軍
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これはある大戦時 〇イツ軍に追い込まれて大陸から連合軍の兵士が脱出しようとしたころだった。
取り残された海辺にいる連合軍の兵士たち。
船が小さすぎて全員で乗ることができない。
しびれを切らしたタヴォットが同行していた同盟国の兵士に船から降りるように促す。
「タヴォット、やめろよ。」
同行者のレンジが止める。
「うるせえぞ!なんでオレたちが奴らの古地のために死ななくちゃならないんだ?あぁん?」
「おいタヴォット…。」
「負けたのは、この玉ねぎ野郎のせいだ。」
「おいブリーチャー…。」
「降りろ。この船から降りろ。」
「仲間割れはよせよ。」
「ならてめぇも降りるか?」
とブリーチャーは銃を向ける。
そこに遠くから何かが近づいている。
「ブリッツ軍か?」
残党の残された部隊は絶望する。
「仲間だ!」
絶望から希望に。取り残された部隊は、向かってくる部隊を待つ。
「あれは?」
「ジョー、もしかしたら、取り残された部隊なのではないか?」
とアンドリューが言う。
「だいぶ前に取り残されたのによく生き残ったなぁ…。」
「王国連合の部隊と合流できた。彼らからの武勇伝を聞きたいものだな。」
「そうだなぁ。腹が減ったときは、農家を襲って、家主を殺してニワトリとブタを食ったな。」
「…。」
「早くオレたちを王国に返してくれよ。」
「すまないな。我々は、ブリッツ軍の思わぬ反撃にあい、港に取り残された部隊だ。」
「必ずわが軍は勝つ。奴らをヘルリンまで追い込んでやろうじゃないか?」
とアンドリューは不敵な笑みを見せる。
「よし、大した数ではないが攻撃に出ることはできそうだ。逃げるなんて言うなよ?まだ戦いはこれからだ。」
「我々は、勝つ!」
「なんだ?」
「敵の攻撃です!」
「一体どこから!」
「敵のりゅう弾砲と爆撃機です!」
「バカなレジスタンスネットワークの情報では、この辺りに飛行場はないはず!」
「うわぁああああ!」
「ぐわぁあああああ!」
「ぎゃぁあああああ!」
「起きろジョー!起きろ!」
真っ暗な世界からまぶたを開けるときれいな光が差し込む。
目が覚めた時、ジョーは見覚えのない場所にいた。
「ここは?」
辺りを見渡すと生い茂った森と小道がきれいに手入れされているであろう自然的な感じに手を加え、自然と景色を美しく表現したであろう、よくある異世界小説にある景色だった。
「我々は気づいたらこの場所にいた。それしか、わからん。」
他にも起きた兵士たちが倒れている仲間を起こす。
「とにかく、現状把握が優先だ。食べ物と水。そして、辺りの偵察。そして、現地の肉食動物への警戒だ。」
「よくわからん世界だ。アンテナも電気もなそうな場所なのに、無線が使える。」
「よくある異世界小説のスキル?という奴か?」
「偵察部隊からの連絡です!」
「わかった!ただちに現場に急行しよう。」
「大丈夫なのか?嫌な予感しかしないぞ。」
「人だ!人だ!人だぁ!」
「わかったから、おちつけ。」
「あれは!」
「ジョー、馬車がゴブリンに襲われている!」
「助けに行かなくては!」
「待て!我々の今の現状把握が優先だ!」
「なに言っている!?異世界に転移したんだ。やることは決まってるだろ?」
「さあ、みんな!今ここで、オレたちの伝説を創ろうじゃないか!」
「哨戒部隊!攻撃しろ!狙いは、あの馬車を襲っているゴブリンだぁ!」
「あのぉオレたち弾がないのですが…。」
「かまわん!相手はヒノキの棒を持った原住民だ!なぶり!蹴り!そして殺せ!」
「大丈夫ですか?」
ジョーは、馬車に乗っていたであろうお嬢様に手を差し上げる。
するとお嬢は、ニヤッと不敵な笑みを浮かべる。
「ぐはっ!」
「うわぁああああ!」
ジョーの後ろで待機していたジョーの兵士たちが悲鳴をあげる。
何事かとジョーは後ろを振り向く。
なんと、ゴブリンとお嬢を守る兵隊たちが、ジョーの連れている兵士たちに襲い掛かっていたのだ!
「これは?!どうなっている!」とアンドリューは現状を見て驚く。
ジョーは現状を理解できず立ち尽くしていた。ジョーが辺りを見渡している時に背後から何者かに襲われる。
「うわ!」
ジョーは背後からの出来事に声を出してしまう。
ジョーは背後から襲い掛かってきたのは誰なのかと振り向く。するとなんということだろうか!?
ジョーを背後から捕まえてジョーを拘束していたのは、先ほど助けたお嬢だったのだ!
「え?!」
ジョーは続けて起こるこの現状についていけなかった。
さらにジョーは、拘束してきたお嬢に「武装を解除しろ!」と言われる。
ジョーは理解できず現状の把握に追いついていない。
お嬢は戸惑っているジョーに再び言う。
「早く仲間の武装を解除するように言いなさい!」
ジョーは、まったく理解できず「…ぁ。」と声に出ない声をだした。
「聞こえないの!?早く言わないとそのクソでも詰まった小さな耳の穴に、このナイフをお見舞いするわよ!」
とお嬢は止まらずさらにジョーを脅す。
そんなやり取りの最中にジョーの連れの相棒アンドリューが気づく。
「そうか!これはスコルツエニー特殊部隊の偽装攻撃だったのか!」
「我々はまんまとはめられたんだ!」
時はすでにおそく、ジョーの連れていた部隊は壊滅状態だった。
わずかな部隊の抵抗もむなしく、ジョーの部隊は次々と蹴られ、地面に倒れる。
弾のない部隊。鎧を身にまとう兵士とヒノキの棒を持つ、体を緑色に塗ったであろう男たち。
勝負は決まっていた。
「どうしてここが!」ジョーはお嬢に聞いた。
「それは、あなたが私たちの知りたい事を教えてくれるまでの、ヒミツ。」
ジョーは頭を力いっぱい振り、お嬢の顔面に一撃を与える。
「ぎゃふっ!」とお嬢は怯み拘束を解いてしまう。
ジョーは、振り返る。お嬢は鼻を強打したようで、ナイフを持っていない片方の手の指先で、強打した鼻を確認する。
指先は真っ赤で、鼻から垂れた血はかなり出ており、口元まで垂れていた。
しかし、ジョーの抵抗はむなしく、また、背後からブリッツ軍に襲われ拘束される。
「ヘヘ、中佐と少佐を捕まえたのは、運がいい。」とジョーの前に高官が現れる。
「おまえは!ブリッツフェンダー!確か聞いた話によると、おまえは敵に希望を持たせて殺すという下劣なやり方が趣味だと聞いた!」とジョーが言う。
「ほぉう、私はもう、こんなにも有名人になってしまったか?」とブリッツフェンダーは言う。
「つまり国際法で、おまえを守ってくれる奴はいないということだ。」とアンドリューは言う。
「ククククク。」と笑うブリッツフェンダー。
「何がおかしい。」と聞くジョー。
「こんな戦場で兵士の行動を監視している者などおらんよ。どの国でも都合が悪いときは、黙って殺すさ。戦死扱いできるしね。」とブリッツフェンダーは返答した。
「クソぉ…敵のりゅう弾砲で異世界に行けたかと思ったのに…。」とジョーはつぶやく。
「残念だねぇ。行けたとしても、それはあの世だ。」とブリッツ・フェンダーは、ジョーに返答した。
「クゥソォ!オレたちで遊びやがったなぁ!」と一人のユミル兵が大声で怒る。
「前の世界で落ちぶれた君が、別の世界に行ったっておんなじだよぉ。だって君は弱いんだからぁ! クヒャヒャヒャヒャヒャ!」と、さらにブリッツ・フェンダーは高笑いをする。
「どうだい?楽しかったか?異世界小説の世界に行けた気分は!」とブリッツ・フェンダーは、目の合ったユミル兵に聞く。
「くたばれ!ポークビッチ!!」
ユミル兵士たちは怒りの声を出す。
「さあて、楽しい気分も味わえたし、心残りなくあの世に行けるねぇ?」
ブリッツ・フェンダーは、腰に下げていた拳銃を取り出す。
「君と大佐は生きてもらうけど、他の奴はいらないからなぁ。」
「待て!そんなことをすれば!国際法に触れるぞ!」
「ニヒヒヒヒ!」
ブリッツフェンダーが下卑た笑みを浮かべる。すると遠くから弓矢がやってきて、ブリッツフェンダーの後頭部に刺さる。
「あひん。」
ブリッツフェンダーが倒れた。
お嬢の兵隊とゴブリンは、この現状に驚く。すると、この現場に、多くの鎧を身にまとった馬と兵隊たちがやってきたのだ!
「な、なんだ?なんだ?!」
「ぎゃぁあああああ!」
ゴブリンたちは次々とやられる。
「我が名はジャンヌダルク!神のお告げを受け、侵略者の排除に来た!」
「…ぁ…ぁ…。」
鼻血をたらしているお嬢は、この謎の展開に驚く。が、お嬢は、この現状を穏便に済まそうと試みる。
「おおう!あなたが、あの神の使いの!ジャンヌダルクですね!」
「ありがとうございます!おかげで助かりました!私は、 地方の貴族のものです。ああ、こうして会えるとは、光栄です!」
「ふっ、話上手な奴だ。それで、彼らは?」
「ああぁ!こいつらです!こいつらがゴブリンを従えていた悪魔の使徒です!」
「なに?」
「あれを見てください。」
「ふむ。」
ジャンヌの視線は、ユミル軍の部隊と合流していた連合王国の部隊の腕章だった。
「へ?」と連合王国部隊のレンジは、嫌な展開が起こりそうだと弱気になる。
「おい、タヴォット。アイツらなんて言った?」とブリーチャーが言う。
隣の男が口を開く。
「知らねえよ。」
彼がタヴォットだ。
「おまえ、フランク語わかるだろ?なんとか説明してくれ。」と男は言う。
ジャンヌは剣を抜いて近づく。そして、ジャンヌは剣先をタヴォットに向ける。
「おい、侵略者。最後に言いたいことはあるか?」
とジャンヌがタヴォットに問う。するとタヴォットは、
「口を閉じな、サレンダーモンキー。ペッ。」
と唾をジャンヌに吐いた。
ジャンヌは剣を振り、タヴォットは地面に倒れる。
剣を抜いた鎧の兵士たちは連合王国の部隊に近づく。
「待て待て待て待て!」
「ぎゃぁああああ!」
「うわぁあああああ!」
連合王国の兵やユミル兵、ブリッツ兵やゴブリンたちが次々と切り伏せられる。
「ハーッハッハッハッハッハ!お見事です!さすが神の使徒!ジャンヌダルク!」
「ジョー!殺されるぅ!」とアンドリューも口にわずかな泥を含みながら悲鳴をあげる。
そんな惨劇の中、一つの銃声が、現場の空気をきる。
ジャンヌは何事かと辺りを見る。
すでに何十人という勢力が森から姿を見せ、大戦期のような銃を持った男たちが現場をうかがっていた。
「よう、Racistes おかげでオレたちは毎日のように泥をすする毎日だ。覚悟はできてんだろうなぁ?」
とリーダーらしき赤いスカーフを首に巻いた男が言う。
「その鎧は、誰の血税でできてると思ってんだぁ?あぁああん!?」
「ナチ公もいるじゃねえか ついでだ 全員殺すか 」
「我らの土地に好きかってしやがって、てめえらは許さねぇ。自分の都合でオレたちを見下しやがって。」
「彼らは一体?」とジョーはアンドリューに聞く。
「奴らは、アンザスの民だ!アンザス・ロレーノの武装勢力だ!」とアンドリューは答えた。
「待て、これは弱いものいじめだ。話し合おう!友よ!」
と黒い軍服を着た男が抵抗勢力に問う。
「違うなぁシュヴァルツ(黒いの)。これは、強いものいじめだ。」
と男は答えた。
「待て!フランク人がソーセージを食べるのはおかしいことだろ!」
と鎧を身にまとうジャンヌの兵士は、命乞いをする。
「違うぜぇ?フレヘール(兄弟) これは祝福だ 」
と対戦時期の庶民の格好をした男が銃を向ける。
「よ、よせ!」
「死ねぇ!ナチズ! 黒カビ掃除だぁ!」
「ぎゃぁあああああ!」
近くにいたブリッツ軍の兵士やジャンヌの連れてきた兵士たちが悲鳴をあげ倒される。
銃声と剣がぶつかる金属音。逃げ惑う兵士やそれを追いかける兵士。現場の惨劇はさらに起こる。
森から馬でゆっくりと惨劇に近づく馬乗りの男。彼らはそれぞれ馬に乗り三人で現場に近づいていた。
三人の男は、鎧を着ていて腰に剣を下げている。男は惨劇の中に入る。
鎧を身にまとう兵士たちと時代に合わない軍服の男たちの奮闘。地面に倒れている緑色の体表をした男たち。
彼らの存在に見も向きもせず、進む。
流れ弾や近くの武器を持った人たちを相手にせず、まっすぐ進む。
そして、男が向かってくるのをジャンヌは気づく。
男がジャンヌに近づき、「ジャンヌ卿。今の音は?」と尋ねる。
「キサマァアアアアアア!」
とジャンヌは大声で怒り、
「見張れとイッタダロー!テメエの目は節穴かゴォラー!」
と男の胸倉をつかむ。
鼻で笑う三人の将軍。
「そろそろ死んでると思いましたよ。」
と一人の将軍が口を漏らす。
「なんだと?今なんて言ったぁ?」
とジャンヌは怒る。
そんな中、ある一人の青年の声が響く。
「やめてください!」
周りは命のやり取りで、聞く耳がない。それでも青年は何度も大きく声を出す。
「やめてください!」
青年が声を出し続けるうちに、また一人、二人と拳が止まっていく…。
軍服の男をまたぎ拳を振ろうとする鎧を身にまとう兵士。
拳銃を辺りの敵に撃ちまくった将校。
血の付いた棍棒を持つ全身緑色に塗った男たち。
「皆さん!戦争はダメです!戦争にいいことなんて一つもありません!」
「ゴブリンも人間も、みんな仲良くするべきです!」
なんなんだ?と思う状況に兵士たちは青年を見る。が、ジャンヌは、青年近づき、怒りを見せる。
「誰が戦争を起こしたと思っているんだぁ?あああん!?」
と怒るジャンヌ。
「戦争は、憎しみしか生まないんです。過去のことは忘れましょう。今ある未来を考えるべきです。」
と青年は笑みを見せる。
「彼は一体…。」とジョーがつぶやく。
「あの胸バッチは。」
気づいたアンドリューは説明する。
「彼は国際平和連合教会の者だ。最近、世界で注目されているカルト教団だ。
ある国家を金で牛耳り民主主義の国を組織票で支配しようと試みたとんでもない団体だ。
確か信徒に治療という意味で暴力を振り、動物の肉を食べるものには、両足を切断するという恐ろしき集団だ。」
それを聞いたジョーは、あまりの展開に言葉を詰まらせる。
「負けたらこの国はどうなる?アホか?バカか?ボケた事ぬかしてんじゃねぇえぞ!」
とジャンヌは青年に怒りを見せる。
「ふふっ!小説やアニメを見た人は 幻滅しちゃいますね!」
と青年が返した言葉に怒りが爆発したジャンヌは剣で青年を斬ろうとする。
「そこまでだ!」
とまた声が。ジャンヌは青年の背後にある影を見て振り向く。彼女の視線には、大きな体格の筋肉を持つ、自慢の肌に密着するスーツを着ている謎の男。
「私はマスクド・ユミル。ユミルの平和のため、ユミルのための世界平和のためなら、過去の世界だろうと異世界だろうと未来だろうとどこまでも駆けつける。悪と戦う正義の戦士!」
と自己紹介するマスクドユミル。
「なんだおまえ?こいつの保護者か?どうなんだ?」
と怒りが頂点のジャンヌがマスクドユミルに聞く。
「罪のない かわいい子どもたちを守るのが私の役目だ 彼を攻撃するなら私が許さん 」
と答えるマスクドユミル。
「ほぉう?こっちは急ぎなんだ。てめえらの平和ボケに付き合っているヒマはないんだ。殺すぞ?」
とジャンヌはマスクドユミルに威圧的な態度をとる。
「フッフッフッフ。最近の若者は血の気があっていいねぇ。」
とマスクドユミルはジャンヌを煽るような返事をする。
「てめえが言うことか? そのダサい格好して、戦地に出るとか。人のこと言えるのか?カス。」
とジャンヌもマスクドユミルの態度に答えるように態度をとる。
「過去を忘れるのは良くないことだ。また調子に乗らないようにしっかり脳裏に焼き付かせないとなぁ?えぇ?!」
とジャンヌはマスクドユミルの胸倉をつかむ。
「よせ、若者よ。私が本気で戦ったら、君が負けちゃうだろ?」
とマスクドユミルは言葉を返す。
それを聞いた三人の将軍はクスクスとジャンヌに聞こえる小さな笑いをする。
背後から聞こえた小さな笑いに機嫌が悪くなるジャンヌ。
「やっちまってください 神の使徒 」
と将軍の一人が煽る。
ジャンヌは怒り、
「コイツを斬ったら、次はおまえだ!」
と言う。
「聞け!諸君!私が勝てば君たちは武器を捨てて故郷に帰るのだ!」
現場の兵士たちは、状況がつかめずマスクドユミルとジャンヌを勝負を見届ける。
「さあ、来い!来なければ私から攻めるぞぉ!」
とマスクドユミルは、いきなり攻撃に出た。
ジャンヌはマスクドユミルの股を蹴り、マスクドユミルは、膝をつく。
そして、ジャンヌは剣を両手で握り、剣先を天に向け、マスクドユミルに振り下ろした。
マスクドユミルは、動かなくなった。
ジョーやアンドリュー、そして、現場にいる兵士たちとゴブリンたちは、その二人の現場の状況に言葉も出ず、見届けていた。
「…おわり?」
ジョーは、この冷めた展開に疑問を投げる。
待ってみるも特になにも起こらない。
ジャンヌは漫画や異世界物で見せるような聖女のような笑みを浮かべ
「次はオマエだ。」
と先ほどジャンヌを煽った将校に優しい笑みを向ける。
「かわいくないっすね。」
と将校は、状況を気にせずそっけない態度をとる。
「あぁああん?」
とジャンヌは眉間にシワをよせ、三人の将校に近づく。
「おいモーリス。言いたいことがあるなら、はっきり言えや?」
とジャンヌは将校の胸倉をつかむ。彼がモーリスだ。
「誰のおかげでうまくやれたと思っているんだぁ!?調子に乗んなよ!このカス!」
「誰がやれとおっしゃたのですか?」
「神がやれとおっしゃったのだぁ!」
「ムフフフフフ!」
「何笑ってんだ?なにかおかしいこと言ったか?こら?」
「そうだ。オマエは敵の待ち構える川を、神のお告げだとかぬかして走らせただろ?あの無謀なやり方で大勢の兵士が死んだんだぞ?うん?」
「オマエがモタモタしているから起こってしまった事だろ!」
「人のせいにするなぁ…」
「お前のせいだぁ!」
モーリスとジャンヌのアツアツホヤホヤのまるで出来立ての取り出したばかりのパンのような怒りのやり取りが始まっていた。
「わかった。そうしよう。オマエがその気ならオレもそうしよう。」
とモーリスも剣を抜く。
「祈りをしない者には、地獄が待っているぞ…!」
とジャンヌは言う。
「はあ?敗戦して探索届作って、行方くらましたオマエが言うことか?」
モーリスの言葉に言葉が詰まるジャンヌ。
この世界のジャンヌは、かなりの悪知恵が働く聖女だったようだ…。
「知らないとでも思ったか?オレは知ってるぞ?あの時オレはオマエを見ていたからな。」
と。
しかし、ジャンヌは負けずと反論する。
「うん?そうだったかなぁ?覚えてないなぁ…」
しばらく三人の将校とジャンヌは沈黙する。
「あのぉ…。」とアンドリューは、口論しているジャンヌとモーリスたちに聞く。
「我々は帰りたいのですが…。」とアンドリューは四人に気をうかがうように尋ねる。
「どうする?」
と一人の将校。
「帰して変な噂を創られてもなぁ…。」
とモーリス。
「殺す?」
ともう一人の将校。
「殺すか。」
とジャンヌ。
「え?え?」
とアンドリューはどうやってこの状況を変えようか考える。
すると突然、辺りに爆風が!
「な!なんだ!?」
とジョーは驚く。
続けて起こる爆発とともに新たな敵の軍勢がやってきた。
爆発に巻き込まれ意識が飛ぶ。
気づくとジョーは腕を縄で縛られ、拘束されていた。
「ここは?」とジョーが聞く。
「気づいたかジョー。我々はまた、敵に不意を突かれた。」
とアンドリューは答えた。
「なあ、アンドリュー ここは、異世界なのか?それとも、あのブリッツフェンダーの仕業か?」とジョーは聞く。
「わからん だが、今も、とてもまずい状況だ。」
とアンドリューは返答する。
「来たぞ。奴らのドンだ。」とアンドリューは言う。
ジョーは顔をあげると、人と人が作り出す人の階段を上から何者かが降りてくる。
その者は男。スタンダートな筋肉を見せるため、服を着ておらず、体の全身を銀色で塗りつくしている。
男が階段から降りるとジョーたちの前に立つ。
ジョーは状況がわからず男に問う。
「あんたは誰なんだ?ここは一体なんなんだ!」
とジョーは聞く。
「言葉を慎め。今キサマは神の王、カルラ・ルーチェさまの御前におられるのだぞ!」
とジョーを見張っている男が言う。
「キサマは我らが神の!」
と隣の男はジョーに説教をしようとすると、神の王カルラ・ルーチェは、右手を上げ、慎むように態度で促す。
男は頭を下げ口を閉じる。
「君は合衆国の人間だね?」
とカルラ・ルーチェがジョーに言う。
ジョーはカルラ・ルーチェの次の言葉を待つ。
「君はある力で別の世界に飛ばされた者だ。」
「君の戦いは終わった。」
「まだ終わっていない。私はまだ戦う使命が!」
「戻る手段があるのか?」
「…わからない。」
「私でも完全に力を操れるわけではない。だが、ジョー。君の役目は終わったのだ。」
「お言葉ですが、あなたに言われる立場ではありません。」
隣の男がジョーに近づこうとするとカルラ・ルーチェはまた右手を上げ慎むように促す。
男は止まりジョーの様子をうかがう。
「君はどうやってここに来た?」
「敵との戦いで…敵の爆撃に巻き込まれて…。」
「君は、その世界の君は、死んだんだ。敵の爆撃にやられて。」
「私は死んでません!」
「いや、今の君じゃない。敵との戦いで戦死した英雄の魂は、天の気まぐれなのだろう この世界に君を連れてきたんだ。」
「まるでヴァルハラみたいな話ですなぁ?」
とジョーは言う。
「わかった。君に見せてあげよう。この世界を。そうすれば信じるはずだ。」
「これが!ユミル合衆国!?建物がない?!人の住んでいる痕跡もない!」
「ホントに我々は!異世界に来てしまったのか!?」
「戻れるやり方は恐らく見つかるはずだ。それまで、我々が部屋と食事と可能な限りの娯楽を提供しよう。君たちの異世界の話をぜひとも聞かせてくれ。」
「…ああ…。」
ジョーはユミル大陸の変わり果てた景色を見て地面に膝をついた。
ボクは、もう帰れないのか…。とあきらめかけた。しかし、ある言葉が脳裏をかける。
「待ってください。カルラ・ルーチェ。」
カルラ・ルーチェは足を止めず離れる。
「あなたは確か、わたしのことを合衆国の人間とおっしゃっていましたよね?」
とジョーが言うとカルラ・ルーチェの足が止まる。
「こんなやり方でだませると思いましたか?よく見れば、見たことある顔だ。」
「あなたの正体を当てましょう あの枢軸側で参戦した独裁者ですよね?」
とジョーが聞くとカルラ・ルーチェは怪しい笑みを浮かべる。
「仮にそうだとしても、もうユミルは存在しない ここにいたければ好きにすればいい ここには何もない」
と言葉を放った。
それを聞き、寒気がしたジョーは、おとなしくカルラ・ルーチェの後についていくことにした…。
取り残された海辺にいる連合軍の兵士たち。
船が小さすぎて全員で乗ることができない。
しびれを切らしたタヴォットが同行していた同盟国の兵士に船から降りるように促す。
「タヴォット、やめろよ。」
同行者のレンジが止める。
「うるせえぞ!なんでオレたちが奴らの古地のために死ななくちゃならないんだ?あぁん?」
「おいタヴォット…。」
「負けたのは、この玉ねぎ野郎のせいだ。」
「おいブリーチャー…。」
「降りろ。この船から降りろ。」
「仲間割れはよせよ。」
「ならてめぇも降りるか?」
とブリーチャーは銃を向ける。
そこに遠くから何かが近づいている。
「ブリッツ軍か?」
残党の残された部隊は絶望する。
「仲間だ!」
絶望から希望に。取り残された部隊は、向かってくる部隊を待つ。
「あれは?」
「ジョー、もしかしたら、取り残された部隊なのではないか?」
とアンドリューが言う。
「だいぶ前に取り残されたのによく生き残ったなぁ…。」
「王国連合の部隊と合流できた。彼らからの武勇伝を聞きたいものだな。」
「そうだなぁ。腹が減ったときは、農家を襲って、家主を殺してニワトリとブタを食ったな。」
「…。」
「早くオレたちを王国に返してくれよ。」
「すまないな。我々は、ブリッツ軍の思わぬ反撃にあい、港に取り残された部隊だ。」
「必ずわが軍は勝つ。奴らをヘルリンまで追い込んでやろうじゃないか?」
とアンドリューは不敵な笑みを見せる。
「よし、大した数ではないが攻撃に出ることはできそうだ。逃げるなんて言うなよ?まだ戦いはこれからだ。」
「我々は、勝つ!」
「なんだ?」
「敵の攻撃です!」
「一体どこから!」
「敵のりゅう弾砲と爆撃機です!」
「バカなレジスタンスネットワークの情報では、この辺りに飛行場はないはず!」
「うわぁああああ!」
「ぐわぁあああああ!」
「ぎゃぁあああああ!」
「起きろジョー!起きろ!」
真っ暗な世界からまぶたを開けるときれいな光が差し込む。
目が覚めた時、ジョーは見覚えのない場所にいた。
「ここは?」
辺りを見渡すと生い茂った森と小道がきれいに手入れされているであろう自然的な感じに手を加え、自然と景色を美しく表現したであろう、よくある異世界小説にある景色だった。
「我々は気づいたらこの場所にいた。それしか、わからん。」
他にも起きた兵士たちが倒れている仲間を起こす。
「とにかく、現状把握が優先だ。食べ物と水。そして、辺りの偵察。そして、現地の肉食動物への警戒だ。」
「よくわからん世界だ。アンテナも電気もなそうな場所なのに、無線が使える。」
「よくある異世界小説のスキル?という奴か?」
「偵察部隊からの連絡です!」
「わかった!ただちに現場に急行しよう。」
「大丈夫なのか?嫌な予感しかしないぞ。」
「人だ!人だ!人だぁ!」
「わかったから、おちつけ。」
「あれは!」
「ジョー、馬車がゴブリンに襲われている!」
「助けに行かなくては!」
「待て!我々の今の現状把握が優先だ!」
「なに言っている!?異世界に転移したんだ。やることは決まってるだろ?」
「さあ、みんな!今ここで、オレたちの伝説を創ろうじゃないか!」
「哨戒部隊!攻撃しろ!狙いは、あの馬車を襲っているゴブリンだぁ!」
「あのぉオレたち弾がないのですが…。」
「かまわん!相手はヒノキの棒を持った原住民だ!なぶり!蹴り!そして殺せ!」
「大丈夫ですか?」
ジョーは、馬車に乗っていたであろうお嬢様に手を差し上げる。
するとお嬢は、ニヤッと不敵な笑みを浮かべる。
「ぐはっ!」
「うわぁああああ!」
ジョーの後ろで待機していたジョーの兵士たちが悲鳴をあげる。
何事かとジョーは後ろを振り向く。
なんと、ゴブリンとお嬢を守る兵隊たちが、ジョーの連れている兵士たちに襲い掛かっていたのだ!
「これは?!どうなっている!」とアンドリューは現状を見て驚く。
ジョーは現状を理解できず立ち尽くしていた。ジョーが辺りを見渡している時に背後から何者かに襲われる。
「うわ!」
ジョーは背後からの出来事に声を出してしまう。
ジョーは背後から襲い掛かってきたのは誰なのかと振り向く。するとなんということだろうか!?
ジョーを背後から捕まえてジョーを拘束していたのは、先ほど助けたお嬢だったのだ!
「え?!」
ジョーは続けて起こるこの現状についていけなかった。
さらにジョーは、拘束してきたお嬢に「武装を解除しろ!」と言われる。
ジョーは理解できず現状の把握に追いついていない。
お嬢は戸惑っているジョーに再び言う。
「早く仲間の武装を解除するように言いなさい!」
ジョーは、まったく理解できず「…ぁ。」と声に出ない声をだした。
「聞こえないの!?早く言わないとそのクソでも詰まった小さな耳の穴に、このナイフをお見舞いするわよ!」
とお嬢は止まらずさらにジョーを脅す。
そんなやり取りの最中にジョーの連れの相棒アンドリューが気づく。
「そうか!これはスコルツエニー特殊部隊の偽装攻撃だったのか!」
「我々はまんまとはめられたんだ!」
時はすでにおそく、ジョーの連れていた部隊は壊滅状態だった。
わずかな部隊の抵抗もむなしく、ジョーの部隊は次々と蹴られ、地面に倒れる。
弾のない部隊。鎧を身にまとう兵士とヒノキの棒を持つ、体を緑色に塗ったであろう男たち。
勝負は決まっていた。
「どうしてここが!」ジョーはお嬢に聞いた。
「それは、あなたが私たちの知りたい事を教えてくれるまでの、ヒミツ。」
ジョーは頭を力いっぱい振り、お嬢の顔面に一撃を与える。
「ぎゃふっ!」とお嬢は怯み拘束を解いてしまう。
ジョーは、振り返る。お嬢は鼻を強打したようで、ナイフを持っていない片方の手の指先で、強打した鼻を確認する。
指先は真っ赤で、鼻から垂れた血はかなり出ており、口元まで垂れていた。
しかし、ジョーの抵抗はむなしく、また、背後からブリッツ軍に襲われ拘束される。
「ヘヘ、中佐と少佐を捕まえたのは、運がいい。」とジョーの前に高官が現れる。
「おまえは!ブリッツフェンダー!確か聞いた話によると、おまえは敵に希望を持たせて殺すという下劣なやり方が趣味だと聞いた!」とジョーが言う。
「ほぉう、私はもう、こんなにも有名人になってしまったか?」とブリッツフェンダーは言う。
「つまり国際法で、おまえを守ってくれる奴はいないということだ。」とアンドリューは言う。
「ククククク。」と笑うブリッツフェンダー。
「何がおかしい。」と聞くジョー。
「こんな戦場で兵士の行動を監視している者などおらんよ。どの国でも都合が悪いときは、黙って殺すさ。戦死扱いできるしね。」とブリッツフェンダーは返答した。
「クソぉ…敵のりゅう弾砲で異世界に行けたかと思ったのに…。」とジョーはつぶやく。
「残念だねぇ。行けたとしても、それはあの世だ。」とブリッツ・フェンダーは、ジョーに返答した。
「クゥソォ!オレたちで遊びやがったなぁ!」と一人のユミル兵が大声で怒る。
「前の世界で落ちぶれた君が、別の世界に行ったっておんなじだよぉ。だって君は弱いんだからぁ! クヒャヒャヒャヒャヒャ!」と、さらにブリッツ・フェンダーは高笑いをする。
「どうだい?楽しかったか?異世界小説の世界に行けた気分は!」とブリッツ・フェンダーは、目の合ったユミル兵に聞く。
「くたばれ!ポークビッチ!!」
ユミル兵士たちは怒りの声を出す。
「さあて、楽しい気分も味わえたし、心残りなくあの世に行けるねぇ?」
ブリッツ・フェンダーは、腰に下げていた拳銃を取り出す。
「君と大佐は生きてもらうけど、他の奴はいらないからなぁ。」
「待て!そんなことをすれば!国際法に触れるぞ!」
「ニヒヒヒヒ!」
ブリッツフェンダーが下卑た笑みを浮かべる。すると遠くから弓矢がやってきて、ブリッツフェンダーの後頭部に刺さる。
「あひん。」
ブリッツフェンダーが倒れた。
お嬢の兵隊とゴブリンは、この現状に驚く。すると、この現場に、多くの鎧を身にまとった馬と兵隊たちがやってきたのだ!
「な、なんだ?なんだ?!」
「ぎゃぁあああああ!」
ゴブリンたちは次々とやられる。
「我が名はジャンヌダルク!神のお告げを受け、侵略者の排除に来た!」
「…ぁ…ぁ…。」
鼻血をたらしているお嬢は、この謎の展開に驚く。が、お嬢は、この現状を穏便に済まそうと試みる。
「おおう!あなたが、あの神の使いの!ジャンヌダルクですね!」
「ありがとうございます!おかげで助かりました!私は、 地方の貴族のものです。ああ、こうして会えるとは、光栄です!」
「ふっ、話上手な奴だ。それで、彼らは?」
「ああぁ!こいつらです!こいつらがゴブリンを従えていた悪魔の使徒です!」
「なに?」
「あれを見てください。」
「ふむ。」
ジャンヌの視線は、ユミル軍の部隊と合流していた連合王国の部隊の腕章だった。
「へ?」と連合王国部隊のレンジは、嫌な展開が起こりそうだと弱気になる。
「おい、タヴォット。アイツらなんて言った?」とブリーチャーが言う。
隣の男が口を開く。
「知らねえよ。」
彼がタヴォットだ。
「おまえ、フランク語わかるだろ?なんとか説明してくれ。」と男は言う。
ジャンヌは剣を抜いて近づく。そして、ジャンヌは剣先をタヴォットに向ける。
「おい、侵略者。最後に言いたいことはあるか?」
とジャンヌがタヴォットに問う。するとタヴォットは、
「口を閉じな、サレンダーモンキー。ペッ。」
と唾をジャンヌに吐いた。
ジャンヌは剣を振り、タヴォットは地面に倒れる。
剣を抜いた鎧の兵士たちは連合王国の部隊に近づく。
「待て待て待て待て!」
「ぎゃぁああああ!」
「うわぁあああああ!」
連合王国の兵やユミル兵、ブリッツ兵やゴブリンたちが次々と切り伏せられる。
「ハーッハッハッハッハッハ!お見事です!さすが神の使徒!ジャンヌダルク!」
「ジョー!殺されるぅ!」とアンドリューも口にわずかな泥を含みながら悲鳴をあげる。
そんな惨劇の中、一つの銃声が、現場の空気をきる。
ジャンヌは何事かと辺りを見る。
すでに何十人という勢力が森から姿を見せ、大戦期のような銃を持った男たちが現場をうかがっていた。
「よう、Racistes おかげでオレたちは毎日のように泥をすする毎日だ。覚悟はできてんだろうなぁ?」
とリーダーらしき赤いスカーフを首に巻いた男が言う。
「その鎧は、誰の血税でできてると思ってんだぁ?あぁああん!?」
「ナチ公もいるじゃねえか ついでだ 全員殺すか 」
「我らの土地に好きかってしやがって、てめえらは許さねぇ。自分の都合でオレたちを見下しやがって。」
「彼らは一体?」とジョーはアンドリューに聞く。
「奴らは、アンザスの民だ!アンザス・ロレーノの武装勢力だ!」とアンドリューは答えた。
「待て、これは弱いものいじめだ。話し合おう!友よ!」
と黒い軍服を着た男が抵抗勢力に問う。
「違うなぁシュヴァルツ(黒いの)。これは、強いものいじめだ。」
と男は答えた。
「待て!フランク人がソーセージを食べるのはおかしいことだろ!」
と鎧を身にまとうジャンヌの兵士は、命乞いをする。
「違うぜぇ?フレヘール(兄弟) これは祝福だ 」
と対戦時期の庶民の格好をした男が銃を向ける。
「よ、よせ!」
「死ねぇ!ナチズ! 黒カビ掃除だぁ!」
「ぎゃぁあああああ!」
近くにいたブリッツ軍の兵士やジャンヌの連れてきた兵士たちが悲鳴をあげ倒される。
銃声と剣がぶつかる金属音。逃げ惑う兵士やそれを追いかける兵士。現場の惨劇はさらに起こる。
森から馬でゆっくりと惨劇に近づく馬乗りの男。彼らはそれぞれ馬に乗り三人で現場に近づいていた。
三人の男は、鎧を着ていて腰に剣を下げている。男は惨劇の中に入る。
鎧を身にまとう兵士たちと時代に合わない軍服の男たちの奮闘。地面に倒れている緑色の体表をした男たち。
彼らの存在に見も向きもせず、進む。
流れ弾や近くの武器を持った人たちを相手にせず、まっすぐ進む。
そして、男が向かってくるのをジャンヌは気づく。
男がジャンヌに近づき、「ジャンヌ卿。今の音は?」と尋ねる。
「キサマァアアアアアア!」
とジャンヌは大声で怒り、
「見張れとイッタダロー!テメエの目は節穴かゴォラー!」
と男の胸倉をつかむ。
鼻で笑う三人の将軍。
「そろそろ死んでると思いましたよ。」
と一人の将軍が口を漏らす。
「なんだと?今なんて言ったぁ?」
とジャンヌは怒る。
そんな中、ある一人の青年の声が響く。
「やめてください!」
周りは命のやり取りで、聞く耳がない。それでも青年は何度も大きく声を出す。
「やめてください!」
青年が声を出し続けるうちに、また一人、二人と拳が止まっていく…。
軍服の男をまたぎ拳を振ろうとする鎧を身にまとう兵士。
拳銃を辺りの敵に撃ちまくった将校。
血の付いた棍棒を持つ全身緑色に塗った男たち。
「皆さん!戦争はダメです!戦争にいいことなんて一つもありません!」
「ゴブリンも人間も、みんな仲良くするべきです!」
なんなんだ?と思う状況に兵士たちは青年を見る。が、ジャンヌは、青年近づき、怒りを見せる。
「誰が戦争を起こしたと思っているんだぁ?あああん!?」
と怒るジャンヌ。
「戦争は、憎しみしか生まないんです。過去のことは忘れましょう。今ある未来を考えるべきです。」
と青年は笑みを見せる。
「彼は一体…。」とジョーがつぶやく。
「あの胸バッチは。」
気づいたアンドリューは説明する。
「彼は国際平和連合教会の者だ。最近、世界で注目されているカルト教団だ。
ある国家を金で牛耳り民主主義の国を組織票で支配しようと試みたとんでもない団体だ。
確か信徒に治療という意味で暴力を振り、動物の肉を食べるものには、両足を切断するという恐ろしき集団だ。」
それを聞いたジョーは、あまりの展開に言葉を詰まらせる。
「負けたらこの国はどうなる?アホか?バカか?ボケた事ぬかしてんじゃねぇえぞ!」
とジャンヌは青年に怒りを見せる。
「ふふっ!小説やアニメを見た人は 幻滅しちゃいますね!」
と青年が返した言葉に怒りが爆発したジャンヌは剣で青年を斬ろうとする。
「そこまでだ!」
とまた声が。ジャンヌは青年の背後にある影を見て振り向く。彼女の視線には、大きな体格の筋肉を持つ、自慢の肌に密着するスーツを着ている謎の男。
「私はマスクド・ユミル。ユミルの平和のため、ユミルのための世界平和のためなら、過去の世界だろうと異世界だろうと未来だろうとどこまでも駆けつける。悪と戦う正義の戦士!」
と自己紹介するマスクドユミル。
「なんだおまえ?こいつの保護者か?どうなんだ?」
と怒りが頂点のジャンヌがマスクドユミルに聞く。
「罪のない かわいい子どもたちを守るのが私の役目だ 彼を攻撃するなら私が許さん 」
と答えるマスクドユミル。
「ほぉう?こっちは急ぎなんだ。てめえらの平和ボケに付き合っているヒマはないんだ。殺すぞ?」
とジャンヌはマスクドユミルに威圧的な態度をとる。
「フッフッフッフ。最近の若者は血の気があっていいねぇ。」
とマスクドユミルはジャンヌを煽るような返事をする。
「てめえが言うことか? そのダサい格好して、戦地に出るとか。人のこと言えるのか?カス。」
とジャンヌもマスクドユミルの態度に答えるように態度をとる。
「過去を忘れるのは良くないことだ。また調子に乗らないようにしっかり脳裏に焼き付かせないとなぁ?えぇ?!」
とジャンヌはマスクドユミルの胸倉をつかむ。
「よせ、若者よ。私が本気で戦ったら、君が負けちゃうだろ?」
とマスクドユミルは言葉を返す。
それを聞いた三人の将軍はクスクスとジャンヌに聞こえる小さな笑いをする。
背後から聞こえた小さな笑いに機嫌が悪くなるジャンヌ。
「やっちまってください 神の使徒 」
と将軍の一人が煽る。
ジャンヌは怒り、
「コイツを斬ったら、次はおまえだ!」
と言う。
「聞け!諸君!私が勝てば君たちは武器を捨てて故郷に帰るのだ!」
現場の兵士たちは、状況がつかめずマスクドユミルとジャンヌを勝負を見届ける。
「さあ、来い!来なければ私から攻めるぞぉ!」
とマスクドユミルは、いきなり攻撃に出た。
ジャンヌはマスクドユミルの股を蹴り、マスクドユミルは、膝をつく。
そして、ジャンヌは剣を両手で握り、剣先を天に向け、マスクドユミルに振り下ろした。
マスクドユミルは、動かなくなった。
ジョーやアンドリュー、そして、現場にいる兵士たちとゴブリンたちは、その二人の現場の状況に言葉も出ず、見届けていた。
「…おわり?」
ジョーは、この冷めた展開に疑問を投げる。
待ってみるも特になにも起こらない。
ジャンヌは漫画や異世界物で見せるような聖女のような笑みを浮かべ
「次はオマエだ。」
と先ほどジャンヌを煽った将校に優しい笑みを向ける。
「かわいくないっすね。」
と将校は、状況を気にせずそっけない態度をとる。
「あぁああん?」
とジャンヌは眉間にシワをよせ、三人の将校に近づく。
「おいモーリス。言いたいことがあるなら、はっきり言えや?」
とジャンヌは将校の胸倉をつかむ。彼がモーリスだ。
「誰のおかげでうまくやれたと思っているんだぁ!?調子に乗んなよ!このカス!」
「誰がやれとおっしゃたのですか?」
「神がやれとおっしゃったのだぁ!」
「ムフフフフフ!」
「何笑ってんだ?なにかおかしいこと言ったか?こら?」
「そうだ。オマエは敵の待ち構える川を、神のお告げだとかぬかして走らせただろ?あの無謀なやり方で大勢の兵士が死んだんだぞ?うん?」
「オマエがモタモタしているから起こってしまった事だろ!」
「人のせいにするなぁ…」
「お前のせいだぁ!」
モーリスとジャンヌのアツアツホヤホヤのまるで出来立ての取り出したばかりのパンのような怒りのやり取りが始まっていた。
「わかった。そうしよう。オマエがその気ならオレもそうしよう。」
とモーリスも剣を抜く。
「祈りをしない者には、地獄が待っているぞ…!」
とジャンヌは言う。
「はあ?敗戦して探索届作って、行方くらましたオマエが言うことか?」
モーリスの言葉に言葉が詰まるジャンヌ。
この世界のジャンヌは、かなりの悪知恵が働く聖女だったようだ…。
「知らないとでも思ったか?オレは知ってるぞ?あの時オレはオマエを見ていたからな。」
と。
しかし、ジャンヌは負けずと反論する。
「うん?そうだったかなぁ?覚えてないなぁ…」
しばらく三人の将校とジャンヌは沈黙する。
「あのぉ…。」とアンドリューは、口論しているジャンヌとモーリスたちに聞く。
「我々は帰りたいのですが…。」とアンドリューは四人に気をうかがうように尋ねる。
「どうする?」
と一人の将校。
「帰して変な噂を創られてもなぁ…。」
とモーリス。
「殺す?」
ともう一人の将校。
「殺すか。」
とジャンヌ。
「え?え?」
とアンドリューはどうやってこの状況を変えようか考える。
すると突然、辺りに爆風が!
「な!なんだ!?」
とジョーは驚く。
続けて起こる爆発とともに新たな敵の軍勢がやってきた。
爆発に巻き込まれ意識が飛ぶ。
気づくとジョーは腕を縄で縛られ、拘束されていた。
「ここは?」とジョーが聞く。
「気づいたかジョー。我々はまた、敵に不意を突かれた。」
とアンドリューは答えた。
「なあ、アンドリュー ここは、異世界なのか?それとも、あのブリッツフェンダーの仕業か?」とジョーは聞く。
「わからん だが、今も、とてもまずい状況だ。」
とアンドリューは返答する。
「来たぞ。奴らのドンだ。」とアンドリューは言う。
ジョーは顔をあげると、人と人が作り出す人の階段を上から何者かが降りてくる。
その者は男。スタンダートな筋肉を見せるため、服を着ておらず、体の全身を銀色で塗りつくしている。
男が階段から降りるとジョーたちの前に立つ。
ジョーは状況がわからず男に問う。
「あんたは誰なんだ?ここは一体なんなんだ!」
とジョーは聞く。
「言葉を慎め。今キサマは神の王、カルラ・ルーチェさまの御前におられるのだぞ!」
とジョーを見張っている男が言う。
「キサマは我らが神の!」
と隣の男はジョーに説教をしようとすると、神の王カルラ・ルーチェは、右手を上げ、慎むように態度で促す。
男は頭を下げ口を閉じる。
「君は合衆国の人間だね?」
とカルラ・ルーチェがジョーに言う。
ジョーはカルラ・ルーチェの次の言葉を待つ。
「君はある力で別の世界に飛ばされた者だ。」
「君の戦いは終わった。」
「まだ終わっていない。私はまだ戦う使命が!」
「戻る手段があるのか?」
「…わからない。」
「私でも完全に力を操れるわけではない。だが、ジョー。君の役目は終わったのだ。」
「お言葉ですが、あなたに言われる立場ではありません。」
隣の男がジョーに近づこうとするとカルラ・ルーチェはまた右手を上げ慎むように促す。
男は止まりジョーの様子をうかがう。
「君はどうやってここに来た?」
「敵との戦いで…敵の爆撃に巻き込まれて…。」
「君は、その世界の君は、死んだんだ。敵の爆撃にやられて。」
「私は死んでません!」
「いや、今の君じゃない。敵との戦いで戦死した英雄の魂は、天の気まぐれなのだろう この世界に君を連れてきたんだ。」
「まるでヴァルハラみたいな話ですなぁ?」
とジョーは言う。
「わかった。君に見せてあげよう。この世界を。そうすれば信じるはずだ。」
「これが!ユミル合衆国!?建物がない?!人の住んでいる痕跡もない!」
「ホントに我々は!異世界に来てしまったのか!?」
「戻れるやり方は恐らく見つかるはずだ。それまで、我々が部屋と食事と可能な限りの娯楽を提供しよう。君たちの異世界の話をぜひとも聞かせてくれ。」
「…ああ…。」
ジョーはユミル大陸の変わり果てた景色を見て地面に膝をついた。
ボクは、もう帰れないのか…。とあきらめかけた。しかし、ある言葉が脳裏をかける。
「待ってください。カルラ・ルーチェ。」
カルラ・ルーチェは足を止めず離れる。
「あなたは確か、わたしのことを合衆国の人間とおっしゃっていましたよね?」
とジョーが言うとカルラ・ルーチェの足が止まる。
「こんなやり方でだませると思いましたか?よく見れば、見たことある顔だ。」
「あなたの正体を当てましょう あの枢軸側で参戦した独裁者ですよね?」
とジョーが聞くとカルラ・ルーチェは怪しい笑みを浮かべる。
「仮にそうだとしても、もうユミルは存在しない ここにいたければ好きにすればいい ここには何もない」
と言葉を放った。
それを聞き、寒気がしたジョーは、おとなしくカルラ・ルーチェの後についていくことにした…。
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