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1974ー2039 大村修一
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しおりを挟む「最近浮かない顔をしているな。」
マーカスが、王宮で話しかけて来た。
「イライザ夫人どうだった?」
「それがどんどん疑惑は深まる一方だと言うより、イライザに秘密があるのは確実だ。」
「そうなのか?
イライザ夫人に限って、そんなことあるのか?」
「僕も信じたくないけれど、イライザは、昼間御者を木の下で待たせて、どこかへ行っている。
さらには、渡している給金も何かに注ぎ込んでいるし、医師とのことも認めない。
今はそんな状況だ。
僕が追求しようとすると、キスをして来て、それ以上は話してくれない。
イライザには男がいる、多分。
僕を誤魔化したいほどの大切な男が。」
「待てよ。
でも普通そんな感じなら、リカルドとキスしたり、色々しないだろ?」
「誤魔化すためだよ。
僕は頭がおかしくなりそうだ。」
僕はたまらず頭を抱える。
「結論づけるのは、まだ早いぞ。
まだ、浮気していると決まったわけじゃないだろ?」
「ああ、今邸の私兵に探らせているところだ。」
「なら、最後まで希望を捨てるな。」
「なぁ、僕達に子供ができなかったからだと思うか?
いや、今のは聞かなかったことにしてくれ。」
「子供がいてもいなくても、するやつはするし、しないやつはしない。
でも、イライザ夫人がする人とはまだ思えないんだ。」
「僕もそう思っていた。」
僕は、疑惑が大きくなればなるほど、不安だし、疑心暗鬼になっていく。
最近は、王宮に行っても、心ここにあらずで、何も言わないけれど、多分僕の異変に王子も勘付いている。
侯爵当主として情けないが、イライザを愛している分、僕はどんどん不安定になって行く。
「ねぇ、聞いているの?」
「聞いているよ、母上。」
母がいる棟の庭園で、日課の母のお茶に付き合っている。
同じ邸の中だけど、こちらは、父が亡くなってから、ますます静かになり、母のキンキン声だけが響く。
「もう、リカルドだけなんだから、私の話を聞いてくれるのは。
旦那様が亡くなってからは、あなたしかいないのよ。」
そう言うが、イライザを拒否したのは、母だ。
もし、子供ができなくともイライザを認めていたならば、こんなに一人寂しい思いをしなくても済んだのに、自分のせいだとは、母は気づいていない。
「ねぇ、そろそろ、第二夫人でも娶ったら?」
「何度も言わせないでくれ。
母上だって、父上に認めなかっただろ?」
「一緒にしないで。
私はあなたを産んだわ。
あの人とは違うわ。」
「そうだとしても、嫌な気持ちは一緒だろ?
どうして、自分がされたくないことを人には求める?」
「仕方ないでしょ。
後継は必要なんだから。」
「その話は、親族の者をもらうと言うことで、決着がついている。」
「嫌なものは嫌なの。
あなたにそっくりな孫が欲しいのよ。」
「すまないが、それは果たせない。」
父が亡くなってから、母はますます孫を欲しがるようになった。
いつもなら、それを受け流すこともできたが、最近は僕にも余裕がない。
大声で、無理なんだよ。と叫んでしまう日がいつか来そうで、自分でも怖い。
感情的になることは、貴族として、とっくに無くして来たのに。
僕は最近自分が嫌いだ。
「どうぞ、入って。」
執務室で仕事をしていると、イライザの尾行を頼んだべモートが入って来る。
「リカルド様、報告があります。」
「ああ、待っていたよ。
話してくれ。」
僕とライナスはその話に聞き入る。
「イライザ様が、馬車から離れ向かった先は、ある邸でした。
こじんまりとしてはいますが、誰かの別邸と言う感じで、建物は立派です。」
「なるほど。」
「そして、イライザ様がその邸に消えた後、邸に入った者は、ノーマン医師ただ一人です。
後は使用人の出入りがあるだけです。」
「何と。
では、ノーマン医師との密会場所なのか?」
「それがそうではなく、ノーマン医師も長くいたわけではありません。
多分、どなたかを診察してすぐに帰られたと思います。
そして、イライザ様以外、あの邸に出入りはありません。
なので、イライザ様は誰かの看病をしているのではないでしょうか?」
「なるほど。
イライザは、父の看病もしてくれていたしね。」
母は父が倒れてからは、お茶会だとか、友人と出かけるなどと言って、父に寄り付かなかったから、その隙にイライザは父を心配して、父のいる棟を訪れていた。
「はい、私がキャサリン様がいない時、イライザ様をご案内しておりました。
旦那様は、いつもイライザ様が来てくれるのを、楽しみに待っておられましたから。」
ライナスは、思い出して微笑む。
「だとしてただの看病なら、わざわざ僕に隠す相手とは誰だろう?」
「わかりません。
そうなると、やはり男かもしれませんね。
残念ですが。」
ライナスは諦め顔で首を振る。
「とにかく、イライザ様がもうあの邸に通わせないようにするのは、大変なことでしょうね。
いっそのこと、目をつぶったらいかがですか?
下手に追い詰めると、イライザ様がリカルド様に離縁を申し出るかもしれませんよ。」
「そんなことが?」
「その相手と無理矢理引き離すのですから、覚悟がいります。
反対に子供ができなかったから身を引くと言われたら、こちらとしても離縁を認めざるを得ないでしょう。
不貞の証拠を掴んでいれば、話は変わりますが。
だからと言って、イライザ夫人の不貞がキャサリン夫人に知られたら、大騒ぎでしょうし。
よく考えてみられたらいかがですか?」
「ああ、そうするよ。」
ライナスとべモートが、部屋を出た後、しばらく一人で強い酒を飲んだ。
この前までは、十年経っても新婚生活などと浮かれていたのに、あっと言う間にどん底だ。
人生わからないものだ。
僕はいつ間違ったのだろう。
イライザが、僕以外の男を求めるなど、今でも信じたくないし、受け入れられない。
しかも僕はこうなるまで、全く気がつかないほどの鈍感な男で、それでも、イライザを失いたくないから、動けない。
でも、それならどうしてイライザは変わらず僕を受け入れる?
好きな男がいるとしたら、普通は嫌なものでないのか?
秘密にするためなら、僕に抱かれても我慢するのか?
僕は沼にハマって動けないように、酒に溺れ、そのまま執務室で寝てしまった。
マーカスが、王宮で話しかけて来た。
「イライザ夫人どうだった?」
「それがどんどん疑惑は深まる一方だと言うより、イライザに秘密があるのは確実だ。」
「そうなのか?
イライザ夫人に限って、そんなことあるのか?」
「僕も信じたくないけれど、イライザは、昼間御者を木の下で待たせて、どこかへ行っている。
さらには、渡している給金も何かに注ぎ込んでいるし、医師とのことも認めない。
今はそんな状況だ。
僕が追求しようとすると、キスをして来て、それ以上は話してくれない。
イライザには男がいる、多分。
僕を誤魔化したいほどの大切な男が。」
「待てよ。
でも普通そんな感じなら、リカルドとキスしたり、色々しないだろ?」
「誤魔化すためだよ。
僕は頭がおかしくなりそうだ。」
僕はたまらず頭を抱える。
「結論づけるのは、まだ早いぞ。
まだ、浮気していると決まったわけじゃないだろ?」
「ああ、今邸の私兵に探らせているところだ。」
「なら、最後まで希望を捨てるな。」
「なぁ、僕達に子供ができなかったからだと思うか?
いや、今のは聞かなかったことにしてくれ。」
「子供がいてもいなくても、するやつはするし、しないやつはしない。
でも、イライザ夫人がする人とはまだ思えないんだ。」
「僕もそう思っていた。」
僕は、疑惑が大きくなればなるほど、不安だし、疑心暗鬼になっていく。
最近は、王宮に行っても、心ここにあらずで、何も言わないけれど、多分僕の異変に王子も勘付いている。
侯爵当主として情けないが、イライザを愛している分、僕はどんどん不安定になって行く。
「ねぇ、聞いているの?」
「聞いているよ、母上。」
母がいる棟の庭園で、日課の母のお茶に付き合っている。
同じ邸の中だけど、こちらは、父が亡くなってから、ますます静かになり、母のキンキン声だけが響く。
「もう、リカルドだけなんだから、私の話を聞いてくれるのは。
旦那様が亡くなってからは、あなたしかいないのよ。」
そう言うが、イライザを拒否したのは、母だ。
もし、子供ができなくともイライザを認めていたならば、こんなに一人寂しい思いをしなくても済んだのに、自分のせいだとは、母は気づいていない。
「ねぇ、そろそろ、第二夫人でも娶ったら?」
「何度も言わせないでくれ。
母上だって、父上に認めなかっただろ?」
「一緒にしないで。
私はあなたを産んだわ。
あの人とは違うわ。」
「そうだとしても、嫌な気持ちは一緒だろ?
どうして、自分がされたくないことを人には求める?」
「仕方ないでしょ。
後継は必要なんだから。」
「その話は、親族の者をもらうと言うことで、決着がついている。」
「嫌なものは嫌なの。
あなたにそっくりな孫が欲しいのよ。」
「すまないが、それは果たせない。」
父が亡くなってから、母はますます孫を欲しがるようになった。
いつもなら、それを受け流すこともできたが、最近は僕にも余裕がない。
大声で、無理なんだよ。と叫んでしまう日がいつか来そうで、自分でも怖い。
感情的になることは、貴族として、とっくに無くして来たのに。
僕は最近自分が嫌いだ。
「どうぞ、入って。」
執務室で仕事をしていると、イライザの尾行を頼んだべモートが入って来る。
「リカルド様、報告があります。」
「ああ、待っていたよ。
話してくれ。」
僕とライナスはその話に聞き入る。
「イライザ様が、馬車から離れ向かった先は、ある邸でした。
こじんまりとしてはいますが、誰かの別邸と言う感じで、建物は立派です。」
「なるほど。」
「そして、イライザ様がその邸に消えた後、邸に入った者は、ノーマン医師ただ一人です。
後は使用人の出入りがあるだけです。」
「何と。
では、ノーマン医師との密会場所なのか?」
「それがそうではなく、ノーマン医師も長くいたわけではありません。
多分、どなたかを診察してすぐに帰られたと思います。
そして、イライザ様以外、あの邸に出入りはありません。
なので、イライザ様は誰かの看病をしているのではないでしょうか?」
「なるほど。
イライザは、父の看病もしてくれていたしね。」
母は父が倒れてからは、お茶会だとか、友人と出かけるなどと言って、父に寄り付かなかったから、その隙にイライザは父を心配して、父のいる棟を訪れていた。
「はい、私がキャサリン様がいない時、イライザ様をご案内しておりました。
旦那様は、いつもイライザ様が来てくれるのを、楽しみに待っておられましたから。」
ライナスは、思い出して微笑む。
「だとしてただの看病なら、わざわざ僕に隠す相手とは誰だろう?」
「わかりません。
そうなると、やはり男かもしれませんね。
残念ですが。」
ライナスは諦め顔で首を振る。
「とにかく、イライザ様がもうあの邸に通わせないようにするのは、大変なことでしょうね。
いっそのこと、目をつぶったらいかがですか?
下手に追い詰めると、イライザ様がリカルド様に離縁を申し出るかもしれませんよ。」
「そんなことが?」
「その相手と無理矢理引き離すのですから、覚悟がいります。
反対に子供ができなかったから身を引くと言われたら、こちらとしても離縁を認めざるを得ないでしょう。
不貞の証拠を掴んでいれば、話は変わりますが。
だからと言って、イライザ夫人の不貞がキャサリン夫人に知られたら、大騒ぎでしょうし。
よく考えてみられたらいかがですか?」
「ああ、そうするよ。」
ライナスとべモートが、部屋を出た後、しばらく一人で強い酒を飲んだ。
この前までは、十年経っても新婚生活などと浮かれていたのに、あっと言う間にどん底だ。
人生わからないものだ。
僕はいつ間違ったのだろう。
イライザが、僕以外の男を求めるなど、今でも信じたくないし、受け入れられない。
しかも僕はこうなるまで、全く気がつかないほどの鈍感な男で、それでも、イライザを失いたくないから、動けない。
でも、それならどうしてイライザは変わらず僕を受け入れる?
好きな男がいるとしたら、普通は嫌なものでないのか?
秘密にするためなら、僕に抱かれても我慢するのか?
僕は沼にハマって動けないように、酒に溺れ、そのまま執務室で寝てしまった。
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