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6章 幼年期のオワリ
92.オワリ(38/43)
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「UFOって夜に出るものなの?」
「万貫の森」山頂の広場で星空を見ながら、ふと思ったソボクな疑問だ。
鉄道駅近くのレストランで晩ご飯を食べてから、ここに戻って来て一時間近く経っている。ぼんやりと空をながめながら、いつ現れるともわからないUFOを待つ。
人工の光が少なくて、びっくりするくらい星がたくさん見えて、木の匂いの風が吹いて、非日常のステキな感じなのだけれど。
ずっとここで待つだけなの?
「アオイ様、もう飽きまし?」
「そういうわけじゃないんだけど」
ぼうっと空を見続けるパパと藤井君がなぜそれほど楽しそうなのか、理解できない。
一時間もつきあって、それでも飽きっぽいと思われちゃうの?
「ケイちゃんたち、星見ながら心の旅していまし」
「はあ、そうですか」
意味不明。
「銀太郎は? 飽きないの?」
「アオイ様見ていたら飽きることないでしよ」
星空は見ていないんだね。
「ケイちゃんたちは山奥の星空が珍しいのでし。ワタシのフルサト、夜に明るいのは月と星だけ。ここはあんまり星見えないのでし」
「葵ちゃん、夜だけじゃないよ。UFOは昼夜問わず現れているよ。夜観測するのは、光るUFOを見つけやすいからだよ」
パパが今ごろ返事をした。心の旅から帰って来たのかな?
「飛行機のパイロットが昼間にUFOを目撃したという証言もたくさんあるよ。日本では『鳥の大群だった』で済まされているけれど」
「それって、UFOを隠しているの?」
「どうだろうねえ。UFOだと言って大さわぎになっても困るしね。UFOを研究しているというウワサで有名なアメリカの空軍基地の周りには、『宇宙人を隠すな、宇宙人を見せろ』と叫んでデモをする人たちがいっぱい来るらしいよ。パンダじゃないんだから、見せ物にされたら宇宙人は大変だよね」
パパは銀太郎を見ながら面白そうに笑っている。
「その基地、本当に宇宙人がいるの?」
「あそこはただの軍事施設だよ。宇宙人の乗り物を解体して未知の技術を得たっていう話もあるけれど、それ、ハブ・ドーナツと呼ばれた敵国の戦闘機だし。元祖ステルス戦闘機ハブ・ブルーの飛行実験もそこでやっていたから、それを見てUFOだとさわがれたのかもね」
「この『万貫の森』もUFO目撃情報が多いから、実は近くに何かの基地があったりするんですか?」
藤井君が訊いてきた。
「うーん、どう思う、銀太郎?」
パパはちゃっかり当事者にインタビューしちゃっている。
「ここはUFOの通り道でしね」
銀太郎は涼しい顔で答えると、空を見上げた。
「地球人は自分たちが作った戦う乗り物も宇宙人のUFOだとかんちがいしまし。区別できない。UFOはもっと高性能でしよ。……たぶん」
「そうだよね。僕はどっちも見たことがないから、見ても区別なんてできないだろうなあ」
「おじさんは、見たことがないのにUFOの存在を確信しているんですか?」
「ん? 確信っていうか……あったらいいなあってね。宇宙人だって、本当にいても姿は見せないかもしれないし」
「フェルミのパラドックス……」
藤井君が難しい言葉を口にする。
フェルミ?
「アオイ様、宇宙には知的生命体がいっぱいいる可能性が高いのでし。それなのにこれまで宇宙人に出会っていないのはなんでだろうと地球人考えますた。それ、フェルミのパラドックス」
「ふうん……」
出会っているよね、もう。ちゃんと、ここにいる。
「万貫の森」山頂の広場で星空を見ながら、ふと思ったソボクな疑問だ。
鉄道駅近くのレストランで晩ご飯を食べてから、ここに戻って来て一時間近く経っている。ぼんやりと空をながめながら、いつ現れるともわからないUFOを待つ。
人工の光が少なくて、びっくりするくらい星がたくさん見えて、木の匂いの風が吹いて、非日常のステキな感じなのだけれど。
ずっとここで待つだけなの?
「アオイ様、もう飽きまし?」
「そういうわけじゃないんだけど」
ぼうっと空を見続けるパパと藤井君がなぜそれほど楽しそうなのか、理解できない。
一時間もつきあって、それでも飽きっぽいと思われちゃうの?
「ケイちゃんたち、星見ながら心の旅していまし」
「はあ、そうですか」
意味不明。
「銀太郎は? 飽きないの?」
「アオイ様見ていたら飽きることないでしよ」
星空は見ていないんだね。
「ケイちゃんたちは山奥の星空が珍しいのでし。ワタシのフルサト、夜に明るいのは月と星だけ。ここはあんまり星見えないのでし」
「葵ちゃん、夜だけじゃないよ。UFOは昼夜問わず現れているよ。夜観測するのは、光るUFOを見つけやすいからだよ」
パパが今ごろ返事をした。心の旅から帰って来たのかな?
「飛行機のパイロットが昼間にUFOを目撃したという証言もたくさんあるよ。日本では『鳥の大群だった』で済まされているけれど」
「それって、UFOを隠しているの?」
「どうだろうねえ。UFOだと言って大さわぎになっても困るしね。UFOを研究しているというウワサで有名なアメリカの空軍基地の周りには、『宇宙人を隠すな、宇宙人を見せろ』と叫んでデモをする人たちがいっぱい来るらしいよ。パンダじゃないんだから、見せ物にされたら宇宙人は大変だよね」
パパは銀太郎を見ながら面白そうに笑っている。
「その基地、本当に宇宙人がいるの?」
「あそこはただの軍事施設だよ。宇宙人の乗り物を解体して未知の技術を得たっていう話もあるけれど、それ、ハブ・ドーナツと呼ばれた敵国の戦闘機だし。元祖ステルス戦闘機ハブ・ブルーの飛行実験もそこでやっていたから、それを見てUFOだとさわがれたのかもね」
「この『万貫の森』もUFO目撃情報が多いから、実は近くに何かの基地があったりするんですか?」
藤井君が訊いてきた。
「うーん、どう思う、銀太郎?」
パパはちゃっかり当事者にインタビューしちゃっている。
「ここはUFOの通り道でしね」
銀太郎は涼しい顔で答えると、空を見上げた。
「地球人は自分たちが作った戦う乗り物も宇宙人のUFOだとかんちがいしまし。区別できない。UFOはもっと高性能でしよ。……たぶん」
「そうだよね。僕はどっちも見たことがないから、見ても区別なんてできないだろうなあ」
「おじさんは、見たことがないのにUFOの存在を確信しているんですか?」
「ん? 確信っていうか……あったらいいなあってね。宇宙人だって、本当にいても姿は見せないかもしれないし」
「フェルミのパラドックス……」
藤井君が難しい言葉を口にする。
フェルミ?
「アオイ様、宇宙には知的生命体がいっぱいいる可能性が高いのでし。それなのにこれまで宇宙人に出会っていないのはなんでだろうと地球人考えますた。それ、フェルミのパラドックス」
「ふうん……」
出会っているよね、もう。ちゃんと、ここにいる。
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