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6章 幼年期のオワリ
90.オワリ(36/43)
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「あっ、そうそう。僕たち四人は一緒に遊びに出かけたことになっているから。夏休み前から約束していたということで。君のお母さんには荒井さんから伝えてもらっている。勝手に共犯にして悪いんだけど、話を合わせてもらわないと困るんだ。口止め料は今夜のご飯でいいかな?」
結局パパは、後回しにするはずのめんどうな話を済ませてしまった。
「……ありがとうございます。ごめいわくをおかけしてすみません」
藤井君はそれだけ言うと、黙って足もとを見つめた。
今日はこの後どうするつもりだったのだろう。リュックサックに荷物はほとんど入ってなさそうだし、やっぱり勢いで家出しちゃったんだよね?
夜おそくに、それでも帰る気だった? まさか野宿?
気持ちがいっぱいいっぱいで、考える余裕もなくなっていたのかな。
私までつらくなってきちゃった。
変な同情をされてもめいわくだろうけれど、もし私が藤井君の立場だったら……。
「ああっ!」
「うわっ、葵ちゃん、今度は何⁉︎」
パパが驚いて、銀太郎と藤井君もいっせいに私を見た。
「あっ、ごめんなさい。何でもないです……」
どうしよう。
私がもし藤井君だったら、家出したなんて同じクラスの子に絶対知られたくないし、見られたくないよ⁉︎
……それ、今ごろ気づく? 私って超絶ニブイの⁉︎
思わず銀太郎の後ろに隠れた。今さら何も見ていませんは通用しないけれど、隠れずにはいられない。
「今さらおそいのでし。男の子はデリケートなのでし」
銀太郎はボソッとつぶやくと、私の後ろにくるりと回りこんで、私を藤井君の前に押し出した。
ぎゃーっ、銀太郎のイジワルーーーーっ!!
無理やり銀太郎を引っ張って位置を交代すると、今度は銀太郎が私を前に出す。
二人でぐるぐる回っているうちに、藤井君が声をかけてきた。
「川上さん、なんか、気をつかってくれてありがとう。ホント今さらだし、大丈夫だから」
……。
藤井君に思いきり気をつかわれている。
しかも、何を考えていたのか絶対バレている。
「ほら、今さらなのでし」
銀太郎が後ろから私にとどめを刺した。
ひええええー……。
二人とも察しが良過ぎるんですけど⁉︎
結局パパは、後回しにするはずのめんどうな話を済ませてしまった。
「……ありがとうございます。ごめいわくをおかけしてすみません」
藤井君はそれだけ言うと、黙って足もとを見つめた。
今日はこの後どうするつもりだったのだろう。リュックサックに荷物はほとんど入ってなさそうだし、やっぱり勢いで家出しちゃったんだよね?
夜おそくに、それでも帰る気だった? まさか野宿?
気持ちがいっぱいいっぱいで、考える余裕もなくなっていたのかな。
私までつらくなってきちゃった。
変な同情をされてもめいわくだろうけれど、もし私が藤井君の立場だったら……。
「ああっ!」
「うわっ、葵ちゃん、今度は何⁉︎」
パパが驚いて、銀太郎と藤井君もいっせいに私を見た。
「あっ、ごめんなさい。何でもないです……」
どうしよう。
私がもし藤井君だったら、家出したなんて同じクラスの子に絶対知られたくないし、見られたくないよ⁉︎
……それ、今ごろ気づく? 私って超絶ニブイの⁉︎
思わず銀太郎の後ろに隠れた。今さら何も見ていませんは通用しないけれど、隠れずにはいられない。
「今さらおそいのでし。男の子はデリケートなのでし」
銀太郎はボソッとつぶやくと、私の後ろにくるりと回りこんで、私を藤井君の前に押し出した。
ぎゃーっ、銀太郎のイジワルーーーーっ!!
無理やり銀太郎を引っ張って位置を交代すると、今度は銀太郎が私を前に出す。
二人でぐるぐる回っているうちに、藤井君が声をかけてきた。
「川上さん、なんか、気をつかってくれてありがとう。ホント今さらだし、大丈夫だから」
……。
藤井君に思いきり気をつかわれている。
しかも、何を考えていたのか絶対バレている。
「ほら、今さらなのでし」
銀太郎が後ろから私にとどめを刺した。
ひええええー……。
二人とも察しが良過ぎるんですけど⁉︎
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