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6章 幼年期のオワリ
89.オワリ(35/43)
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「えーと、めんどうな話は後回しにして、もしよかったら一緒に見学しないかい? 藤井君はここ初めてでしょう? 銀太郎も初めてなんだ。ひとり旅のおじゃまでなければ、僕がご案内をするけれど。ああでも、午前中から来ているから全部見終わっているかな」
「ひとり旅……。あの、その宇宙人バッジ、おじさんもUFO愛好会の人……なんですよね?」
「え? あ、そうそう。僕、愛好会の会長さんとお友だちでね。荒井さんって君のおじいさんでしょう? 少し前に会ったばかりで、今朝も電話で話したんだよ」
藤井君の表情がかたくなった。警戒するようにパパをじっと見ている。
きっと、家出した藤井君を私たちが捕まえに来たと思っているんだ。
なんだか私まで緊張してきた。
めんどうな話は後回しだと言いながら、パパはバッジを見せたり「ひとり旅」を強調したりしている。直接言わないけれど、しっかり家出のことにふれている。
それって「遠回し」なだけで、全然後回しにする気がないよね?
私も藤井君と同じように、じいっとパパを観察してみる。
うーん、ぽやっと笑っているだけで何を考えているのかさっぱりわからない。
「僕のこと、祖父から聞いているんですね?」
「まあ、ね。最初に奇遇だねえって言ったのは訂正するよ。でも、連れ戻しに来たのではないよ? 単純に君に会いたかったんだよ、葵が」
「へっ、私っ⁉︎」
「僕も銀太郎も、放っておけばいいと思っていたのだけれどね。葵が君に会いたい迎えに行きたいと言い出したから、それじゃあ君と合流して一緒にUFOを見ようと押しかけちゃったワケ。それだけなんだよ。あはは」
あははって……。
私が会いたかったのは事実だ。でも、なんでそれをストレートに言っちゃうかな?
男の子に向かって会いたいなんて、誤解されちゃうでしょう! デリカシーないなあもうっ。
「放っておけ」が意外だったのか「会いたい」に驚いたのかわからないけれど、藤井君はあっけにとられた様子で、確認するように私を見た。
うん、うん、そのとおりだから。
少しヤケになって、頭を上下にブンブンふって答える。
もうっ、恥ずかしいからあんまり見ないでっ。
「ひとり旅……。あの、その宇宙人バッジ、おじさんもUFO愛好会の人……なんですよね?」
「え? あ、そうそう。僕、愛好会の会長さんとお友だちでね。荒井さんって君のおじいさんでしょう? 少し前に会ったばかりで、今朝も電話で話したんだよ」
藤井君の表情がかたくなった。警戒するようにパパをじっと見ている。
きっと、家出した藤井君を私たちが捕まえに来たと思っているんだ。
なんだか私まで緊張してきた。
めんどうな話は後回しだと言いながら、パパはバッジを見せたり「ひとり旅」を強調したりしている。直接言わないけれど、しっかり家出のことにふれている。
それって「遠回し」なだけで、全然後回しにする気がないよね?
私も藤井君と同じように、じいっとパパを観察してみる。
うーん、ぽやっと笑っているだけで何を考えているのかさっぱりわからない。
「僕のこと、祖父から聞いているんですね?」
「まあ、ね。最初に奇遇だねえって言ったのは訂正するよ。でも、連れ戻しに来たのではないよ? 単純に君に会いたかったんだよ、葵が」
「へっ、私っ⁉︎」
「僕も銀太郎も、放っておけばいいと思っていたのだけれどね。葵が君に会いたい迎えに行きたいと言い出したから、それじゃあ君と合流して一緒にUFOを見ようと押しかけちゃったワケ。それだけなんだよ。あはは」
あははって……。
私が会いたかったのは事実だ。でも、なんでそれをストレートに言っちゃうかな?
男の子に向かって会いたいなんて、誤解されちゃうでしょう! デリカシーないなあもうっ。
「放っておけ」が意外だったのか「会いたい」に驚いたのかわからないけれど、藤井君はあっけにとられた様子で、確認するように私を見た。
うん、うん、そのとおりだから。
少しヤケになって、頭を上下にブンブンふって答える。
もうっ、恥ずかしいからあんまり見ないでっ。
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