宇宙人は恋をする!

山碕田鶴

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6章 幼年期のオワリ

88.オワリ(34/43)

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「クククッ、こんにちは川上さん。やっぱり……会えたんだね」
「えっ?」

 どういう意味?

「川上さんも地球を見ていたの? ここの展示の主役は飛んでいるUFOの方なんだろうけれど、僕も地球を見ていたんだ。この写真は、人類が初めて月に行った時に宇宙船アポロ八号から撮影したものなんだって。ここに立っていると、アポロではなくてUFOから地球を見ている気分になるね」

 地球人の宇宙船アポロではなくて……

「アレに乗った気分?」

 ぶら下がったUFOを指さすと、藤井君は困った顔でまた笑った。

「いや、さすがにアレは……。なんかちょっとちがう」

 うん。私もアレはちがうと思う。

「あの、藤井君、いきなりだけどこんにちは。えーと……さっきの『やっぱり会えた』ってなに?」
「ホントいきなりだね。おどろいたけれど……今日ここに来る途中で、ふっと川上さんのことを考えたんだ。なんでかなあ。なんだか会える気がしたんだ。そうしたらやっぱりで、そっちにおどろいた」
「えっ、すごい! 予感的中? 私ね、ここに来る途中で藤井君に会いたいってずっと思っていたの。伝わったのかな?」
「……そっちだね。川上さんの思いが飛んできたんじゃないの? でもなんで……」

 急に藤井君が視線をはずした。

「……銀太郎さん」

 パパと銀太郎が私の後ろに立っていた。

「やあ、奇遇きぐうだねえ。葵のお友だちとこんなところで会えるなんて。あ、初めまして。葵の父です」

 藤井君は明らかに警戒しながら、それでもパパを見てキレイな姿勢でおじぎをした。

「こんにちは。初めまして、藤井司です」

 やっぱり完ぺきな王子様だ……。
 つい見とれてしまったけれど、私たちが迎えに来たことを伝えないと。
 そう思うのに、どう話したらいいのかわからなくて言葉が出ない。
 もじもじとうつむく私の横から、パパがいきなり藤井君に向かって腕を伸ばした。

「実は僕、こういう者です」

 満面の笑みで手に持った宇宙人バッジを堂々とばーんっと見せて……って、うわーっ、このシーン前にも見たことがあるけど⁉︎
 銀太郎が藤井君のお母さんにやったのとおんなじなんですけどーっ!!

「ちょっと、パパやめてっ! 恥ずかし過ぎるっ、アヤシ過ぎるってば!!」

 はっ!

「銀太郎までっ⁉︎  なんでおそろいポーズなのよーっ!」

 宇宙人バッジを藤井君の目の前につき出す二人。片手はもちろん腰の位置。あああああ……。

 コノモンドコロガメニハイラヌカー。

 銀太郎の声が聞こえたような気がした。空耳だけれど。
 藤井君ごめんなさい。変なのを引き連れて来て……ああちがう、連れて来てもらったのは私の方なんだけれど、引かれて警戒されて知らないフリをされても文句は言いません。
 恥ずかしい、気まずい……いたたまれないってこういうことかな?
 両手で顔をおおったまま、もうどうすればわからなくて指のすき間からチラッと藤井君を見た。
 あれ? 王子様のほほえみだ。
 リュックサックを前に抱えて、キーホルダーの宇宙人バッジをはにかみながら二人に見せている。
 なにこれ。
 たぶん、もう藤井君はパパに親しみを感じている。
 そしてここは「UFOふれあう館」だ。
 ……オタク仲間誕生?
 うん、よかったね。……で、いいのかな。
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