79 / 85
6章 幼年期のオワリ
80.オワリ(26/43)
しおりを挟む
「わあ。銀太郎、手がすごいことになってる。ずいぶんとヤギに好かれちゃったねえ」
パパが来て、牧場の中のレストランで少し遅い昼食になった。
ソフトクリームでごきげんの銀太郎は、店内のあちこちから視線を集めている。
うん、確かにカッコいい。
こんなに景色の良いところにいたら、さらに百倍増しでカッコいい。
しかも、ソフトクリームでうっとりしちゃって、もう目の毒だよね。
でも。
どこかさびしそうに見えてしまう。さっきふるさとの村の話を聞いてしまったからかな。
私の方を向いていない銀太郎ならいくらでも見ることができるから、ここぞとばかりに観察してみる。
あっ、窓の外から手をふる人に笑いかけた。
あっ、テーブルの横を通った女の人がチラッと見ながら笑いかけてきた。すっごい美人。銀太郎もちょっと笑顔を返した。
あっ、入り口の人が銀太郎を見て固まった。二度見? 三度見? 銀太郎、気づいてちょっと笑ってあげている。
「……ねえ、パパ。お出かけするといつもこんななの?」
「え? ああ、銀太郎? そうだねえ。いつもと同じだねえ。あんまり目立つのもどうかと思うけれど、まあ今だけのアバターだし。休暇で出かける時は離島とか秘境とか人の少ないところばかりだったから、たまにはいいんじゃないの?」
アバター。
そうだよね。あの銀色ツルツルだって宇宙服みたいなものらしいし。
銀太郎が催眠術をかけてきた時に見た光る姿……よく見えなかったけれど、きっとあれが本当の銀太郎なんだよね。
ちゃんとしっかり銀太郎を見てみたいな……。
「葵ちゃん、パパはこの後三十分くらい車でお昼寝するから。その間銀太郎と二人で牧場見物でもしていてくれる?」
「パパ、ずっと運転して疲れたよね。もちろんいいけど、時間は……」
「藤井君なら大丈夫だよ。パパたちは勝手にお迎えに向かっているんだよ? 彼は一人きりで考える時間がほしくて家出したのかもしれないし、じゃましたら悪いでしょう? 急ぐ必要はないよ。位置情報なら銀太郎が把握しているみたいだから大丈夫。きっと夜までいてUFOを探すつもりじゃないかな。どうせならパパもUFOを見たいなあ。楽しみだなあ」
パパはすっかりUFOオタクの顔になっていた。
パパが来て、牧場の中のレストランで少し遅い昼食になった。
ソフトクリームでごきげんの銀太郎は、店内のあちこちから視線を集めている。
うん、確かにカッコいい。
こんなに景色の良いところにいたら、さらに百倍増しでカッコいい。
しかも、ソフトクリームでうっとりしちゃって、もう目の毒だよね。
でも。
どこかさびしそうに見えてしまう。さっきふるさとの村の話を聞いてしまったからかな。
私の方を向いていない銀太郎ならいくらでも見ることができるから、ここぞとばかりに観察してみる。
あっ、窓の外から手をふる人に笑いかけた。
あっ、テーブルの横を通った女の人がチラッと見ながら笑いかけてきた。すっごい美人。銀太郎もちょっと笑顔を返した。
あっ、入り口の人が銀太郎を見て固まった。二度見? 三度見? 銀太郎、気づいてちょっと笑ってあげている。
「……ねえ、パパ。お出かけするといつもこんななの?」
「え? ああ、銀太郎? そうだねえ。いつもと同じだねえ。あんまり目立つのもどうかと思うけれど、まあ今だけのアバターだし。休暇で出かける時は離島とか秘境とか人の少ないところばかりだったから、たまにはいいんじゃないの?」
アバター。
そうだよね。あの銀色ツルツルだって宇宙服みたいなものらしいし。
銀太郎が催眠術をかけてきた時に見た光る姿……よく見えなかったけれど、きっとあれが本当の銀太郎なんだよね。
ちゃんとしっかり銀太郎を見てみたいな……。
「葵ちゃん、パパはこの後三十分くらい車でお昼寝するから。その間銀太郎と二人で牧場見物でもしていてくれる?」
「パパ、ずっと運転して疲れたよね。もちろんいいけど、時間は……」
「藤井君なら大丈夫だよ。パパたちは勝手にお迎えに向かっているんだよ? 彼は一人きりで考える時間がほしくて家出したのかもしれないし、じゃましたら悪いでしょう? 急ぐ必要はないよ。位置情報なら銀太郎が把握しているみたいだから大丈夫。きっと夜までいてUFOを探すつもりじゃないかな。どうせならパパもUFOを見たいなあ。楽しみだなあ」
パパはすっかりUFOオタクの顔になっていた。
1
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる