宇宙人は恋をする!

山碕田鶴

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6章 幼年期のオワリ

76.オワリ(22/43)

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 銀太郎は「そうでし」とだけ返事をした。

「へー……」
「あれ? 葵ちゃん動きが止まっているけど。準備できた? 今からだと到着はお昼過ぎちゃうねえ。途中に観光牧場もあるから、ちょっと寄ってご飯かな。銀太郎はもちろんアイス食べるよね」
「いいでしねえ。せっかくなのでモモ味にチャレンジゴーゴーでしよ」

 いつの間にか電話を終えたパパはスマートフォンで地図を確認している。
 さっきまであれほど行きたくなさそうだったのに。行くとなったら二人ともどうしてこんなに前向きなのよ? 

「ケイちゃん、ワタシ宇宙人見たいでし」
「宇宙人? ああ、『UFOふれあう館』の展示だね。『万貫まんがんの森』の敷地内にあるからね。歩道にもあちこち宇宙人の石像とかあるよ。藤井君の目的はそっちかな?」
「前にフジークン会った時に、『ふれあう館』行きたい言っていますた」

 あははって二人で楽しそうに笑っている。
 なにイチャイチャはしゃいでいるのよ?
 さっきまでマゴ、マゴ言っていた銀太郎がフジークンって名前を呼んでいる。パパも藤井君の名前を出している。
 それって、藤井君が宇宙人だという事実を私に教えたくなかったのだよね。お迎えに行くのに反対したのも、適性検査を受けているパイロット志願者が藤井君だと知られたくなかったからだよね。
 なーにが「ケイちゃんのかんは良く当たりまし」よ。荒井さんの孫が藤井君だとわかっていたから「万貫の森」に行くと想定できたし、一人で行けそうな範囲も特定できたのでしょう?
 事前リサーチと銀太郎のテレパシーでばっちりわかっていたんじゃない。

「葵? 夜は冷えると思うから上着を出してきたよ。持って行ってね。あと、虫よけスプレーも、おやつも」

 お母さんがトートバッグに荷物を入れて持たせてくれた。
 あ、プレッツェル型グミだ!

「このグミね、上下逆さにしたらUFOみたいな形よねえ。これ、お母さんの大発見。本物のUFOが見られなかったら、藤井君にはこれでがまんしてもらってね」
「うん! ありがとう」

 お母さんはニコニコしながらうなずくと、私の耳元に顔を近づけて小さな声で教えてくれた。

「パパも銀太郎君も、葵が藤井君のことを知ってショックを受けるのが心配だったのよ。なんだか難しい顔をしちゃって、必死に隠していたものね。今だって、葵がびっくりしていないか不安で不自然にはしゃいでいるでしょう? 二人とも葵が大好きだから、しょうがないわねえ。見ていて変だけど笑わないであげてね、ふふふっ」

 そう言いながらお母さんが笑っている。
 大丈夫。わかっているつもりだよ。
 私、みんなからすごく大事にされている。
 藤井君はどう?
 悩めるお年ごろで、UFO趣味も反対されて、きっと孤独な気分だよね?
 でも、藤井君のおじいさんもお母さんも、銀太郎も、私たちみんな気にかけているよ。
 いきなり迎えに行ったらびっくりするよね。
 それで知らないフリしたり……しないよね?
 藤井君は私のモヤモヤの何百倍も大変でつらいのかもしれないけれど、びっくりついでに一緒に星を見てUFOを探そうよ。
 気分転換くらいにはならない?
 私もUFOが気になるの。もっとたくさん知りたいの。
 銀太郎ってパイロットなんだよ?
 それは教えられないけれど、だからUFOに興味があるの。
 地球人だったころの銀太郎も、藤井君みたいに悩んでいたのかな?
 そう思ったら、藤井君がもっと心配になったの。
 荒井さんの孫が藤井君だとわかったら、私が何か手伝えるなんて思い上がりだと気づいちゃった。
 成績優秀でしっかりしていてイケメンで……あ、イケメンは関係ないけれど、もう完ぺきな藤井君に私が力になってあげられることなんてないもの。
 だから、手伝うとか助けるとかじゃなくて、ただ一緒にUFOを探そうよ。
 藤井君と同じようにUFOバッジをつけたパパと銀太郎も一緒だから、絶対に楽しいよ?
 どう……かな?
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