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6章 幼年期のオワリ
75.オワリ(21/43)
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「ケイちゃん、今からマンガンノモリ行きまし」
「えっ! 銀太郎、いくら葵ちゃんの頼みでも……」
パパがあわてている。銀太郎に私を止めてもらうつもりだったのかもしれない。
「前から言っていまし。ワタシの最優先はアオイ様。一番はアオイ様。オールグリーン。モンダイナシ。決定でしよ。彼は能力高い。意志もとても強い。でも、まだ目覚めてはいない。心読まれる心配ないでしが、危険ならワタシがシールド張りましからダイジョーブ」
「いや、問題はそこじゃなくて……」
「マゴはまだ地球人でし。ケイちゃんは娘の大事なお友だち探しに行く、それだけのことでし」
「そうなんだけれど……」
パパにとって銀太郎は、やっぱり絶対の存在だ。何か言いたそうなのに、何も言わない。
「……銀太郎が決めたのなら、もちろん従うよ。荒井さんに連絡するから」
「私も出かける準備する」
銀太郎がお迎えに行くと言ってくれた。
あんなにふきげんそうだったのに、それでも私の望みを聞いてくれた。
最優先はアオイ様。一番はアオイ様。
うれしいけれど、パパも銀太郎も仕方なく私につきあってくれるのがわかる。私も二人にこれ以上迷惑をかけないように、行く先で言いつけは守ろう。
パパが電話をかけた瞬間、応答の声が聞こえた。きっとスマホを握りしめたまま連絡を待っていたのだろうな。
何度も何度も、そうですかあと叫んでいる。
とても安心した声になっている。
確かに、荒井さんは超ラッキーかもしれない。だけど、荒井さんが誰にも知られず宇宙人の子をお預かりしてくれているから、未来のパイロットがまた一人育っているのだよね。
超ラッキーは、地球人全員じゃないの?
私たち地球人は、荒井さんにいっぱい感謝しないといけないよね。
「……それでですね。娘さんにお伝えいただきたいのですが。息子さんはUFO趣味仲間の川上葵と銀太郎と一緒に『万貫の森』に行くことを夏休み前から約束していて、葵の父親である僕が車で連れて行くことになっていたと」
パパが荒井さんに細々説明している。
えっ、約束?
そういう設定にするっていうこと?
「……ええ、そうです。帰りがかなり遅くなるのでご自宅まで送り届けますから、どうかご安心下さい。ああ、そうだ。彼はお家の人から外出許可をもらったと僕たちに話していたことにしないと。ウチの娘は悪くないですからね、ははは。まあ、親に黙って出かけたことは叱られて下さい」
パパってば、ずいぶんと都合良く話を作っている。でも、家出ではなく友だちと出かけていたことにした方が、お母さんは安心するよね。
「え? そうですよ? 前から本当にお友だちですよ。一度家におじゃましたこともあるそうです。……はいはい、ツカサ君は大丈夫ですよ」
前からお友だち? ツカサ君? え?
「司君⁉︎」
今、確かにツカサクンって……。
「そうでしよ。フジーツカサ。アオイ様が今からお迎えに行くの、フジークンでし」
そうなんだ……そうなんだ⁉︎
ええええ? えーーーーっ?
荒井さんの孫って……
「藤井君なの⁉︎」
「えっ! 銀太郎、いくら葵ちゃんの頼みでも……」
パパがあわてている。銀太郎に私を止めてもらうつもりだったのかもしれない。
「前から言っていまし。ワタシの最優先はアオイ様。一番はアオイ様。オールグリーン。モンダイナシ。決定でしよ。彼は能力高い。意志もとても強い。でも、まだ目覚めてはいない。心読まれる心配ないでしが、危険ならワタシがシールド張りましからダイジョーブ」
「いや、問題はそこじゃなくて……」
「マゴはまだ地球人でし。ケイちゃんは娘の大事なお友だち探しに行く、それだけのことでし」
「そうなんだけれど……」
パパにとって銀太郎は、やっぱり絶対の存在だ。何か言いたそうなのに、何も言わない。
「……銀太郎が決めたのなら、もちろん従うよ。荒井さんに連絡するから」
「私も出かける準備する」
銀太郎がお迎えに行くと言ってくれた。
あんなにふきげんそうだったのに、それでも私の望みを聞いてくれた。
最優先はアオイ様。一番はアオイ様。
うれしいけれど、パパも銀太郎も仕方なく私につきあってくれるのがわかる。私も二人にこれ以上迷惑をかけないように、行く先で言いつけは守ろう。
パパが電話をかけた瞬間、応答の声が聞こえた。きっとスマホを握りしめたまま連絡を待っていたのだろうな。
何度も何度も、そうですかあと叫んでいる。
とても安心した声になっている。
確かに、荒井さんは超ラッキーかもしれない。だけど、荒井さんが誰にも知られず宇宙人の子をお預かりしてくれているから、未来のパイロットがまた一人育っているのだよね。
超ラッキーは、地球人全員じゃないの?
私たち地球人は、荒井さんにいっぱい感謝しないといけないよね。
「……それでですね。娘さんにお伝えいただきたいのですが。息子さんはUFO趣味仲間の川上葵と銀太郎と一緒に『万貫の森』に行くことを夏休み前から約束していて、葵の父親である僕が車で連れて行くことになっていたと」
パパが荒井さんに細々説明している。
えっ、約束?
そういう設定にするっていうこと?
「……ええ、そうです。帰りがかなり遅くなるのでご自宅まで送り届けますから、どうかご安心下さい。ああ、そうだ。彼はお家の人から外出許可をもらったと僕たちに話していたことにしないと。ウチの娘は悪くないですからね、ははは。まあ、親に黙って出かけたことは叱られて下さい」
パパってば、ずいぶんと都合良く話を作っている。でも、家出ではなく友だちと出かけていたことにした方が、お母さんは安心するよね。
「え? そうですよ? 前から本当にお友だちですよ。一度家におじゃましたこともあるそうです。……はいはい、ツカサ君は大丈夫ですよ」
前からお友だち? ツカサ君? え?
「司君⁉︎」
今、確かにツカサクンって……。
「そうでしよ。フジーツカサ。アオイ様が今からお迎えに行くの、フジークンでし」
そうなんだ……そうなんだ⁉︎
ええええ? えーーーーっ?
荒井さんの孫って……
「藤井君なの⁉︎」
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