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6章 幼年期のオワリ
65.オワリ(11/43)
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「アオイ様が知っても、意味ないでしよ」
銀太郎はつき放すように答えた。
「適性検査に来て宇宙人に戻れないこと、いっぱいありまし。愛護協会以外だと最初から地球人として生まれるよう手配するところもありましから、地球人型宇宙人いっぱいいっぱいいまし。戻れなければ地球人として生きるだけでし。問題なしでし」
「えっ、問題ないの?」
「地球人アバターは地球人のスピードで大きくなりまし。使っている間は昔の記憶思い出せない。宇宙人だと自覚しても、地球人アバター脱ぐまで記憶しっかり戻らないのでし」
「そうなの⁉︎ じゃあ、パパの写真に写っていたフェザは、パイロットになりたいとは思っていなかったの?」
「宇宙人自覚したら、適性検査は次のステージでし。何も覚えていなくても、もう一度パイロットになりたい思うかテストでし」
「パイロットになるのって、本当に大変なんだ」
「ナルベクシテナル。そういうものでし」
「成るべくして、成る……」
「ナルヨウニナルいう日本語もありましね。アライサンは思いちがいをしていまし。他人から宇宙人だと教えてもらっても、失格ないでしよ?」
「えっ、失格にならないの?」
「当たり前でし」
「それはそうだよね」
パパが笑いながらうなずいた。
「葵ちゃん、考えてみてよ。あなたは実は魔法使いなんですって言われて、すぐに信じる?」
「へ? えー……信じたい」
「そうそう。信じきれない。どうする? 何か調べる? 呪文を唱えてみる? 自分と向き合う? きっと悩んだりあれこれ試したりするよね。もし宇宙人だと知らされても、それはただのきっかけ。言われて素直に『そうなんだ』と思い込んだだけでは自覚したことにならないんだよ。自称魔法使いでも、魔法が使えなかったら意味ないでしょう」
「教えてもらってただ信じるの、洗脳と同じでし。自分のこと見えていないでし」
「洗脳……」
「そうでし。自分の心乗っ取られるの、怖いでしよ。例えば、ほら」
銀太郎は私に腕を伸ばしてきて、目の前で人差し指をクルクル回し始めた。
「アオイ様、あなたは銀太郎が好きになる。好きーになある。大好きなのでし」
はい?
指の向こうの銀太郎は笑っちゃうくらい真剣に私を見つめている。
「さあ、思ったことを素直に言うでしよ。あなたは銀太郎が好きでしー」
なにおバカなことしているのよっ。
チョンッと銀太郎の指が鼻先に軽くふれた。
ふいに目が合う。
「あ……」
その瞬間、私は銀太郎を見た気がした。
蓮君の姿でも、銀色でツルツルのグレイでもなく、地球人によく似た形でまぶしく光っている。ほとんど光のかたまりみたいな存在が私を見ている。
これが、本当の……本来の銀太郎?
「こらっ、銀太郎ダメだろう! テレビでやっていた催眠術、良い子はマネしないでねって注意が出ていたのに!」
「わあ、ケイちゃんごへんははひ、もほひはへんっ」
パパに両手でほっぺたを押されながら、銀太郎は変な顔で謝っている。
ごめんなさい、もうしません。
それ、私に言ってよね。
「銀太郎、好き」
そう言わせたかったのかな?
そんなのわざわざ洗脳しなくたって……。
「え? パパなんで固まっているの?」
「葵ちゃん、今なんて……」
あ! 声に出していた⁉︎
「え、と、ちがうの。銀太郎がそう言わせたいのかなーっていう……」
「銀太郎ーっ!」
「わあっ、ごめんなさいでし!」
パパが銀太郎のほっぺたをぶにぶに引っ張りながら、葵ちゃんの洗脳を解けと怒っている。銀太郎は平謝りだけれど、そもそも変なテレビを見せたのはパパじゃないの?
本当に、二人は仲良しだな。子供みたいにじゃれあってケンカしている。
「ちょっとパパたち! うるさいんだけど、もうっ。下の階に響いちゃうでしょ!」
お母さんが部屋をのぞきに来たタイミングで、三人の変な集会は解散になった。
銀太郎はつき放すように答えた。
「適性検査に来て宇宙人に戻れないこと、いっぱいありまし。愛護協会以外だと最初から地球人として生まれるよう手配するところもありましから、地球人型宇宙人いっぱいいっぱいいまし。戻れなければ地球人として生きるだけでし。問題なしでし」
「えっ、問題ないの?」
「地球人アバターは地球人のスピードで大きくなりまし。使っている間は昔の記憶思い出せない。宇宙人だと自覚しても、地球人アバター脱ぐまで記憶しっかり戻らないのでし」
「そうなの⁉︎ じゃあ、パパの写真に写っていたフェザは、パイロットになりたいとは思っていなかったの?」
「宇宙人自覚したら、適性検査は次のステージでし。何も覚えていなくても、もう一度パイロットになりたい思うかテストでし」
「パイロットになるのって、本当に大変なんだ」
「ナルベクシテナル。そういうものでし」
「成るべくして、成る……」
「ナルヨウニナルいう日本語もありましね。アライサンは思いちがいをしていまし。他人から宇宙人だと教えてもらっても、失格ないでしよ?」
「えっ、失格にならないの?」
「当たり前でし」
「それはそうだよね」
パパが笑いながらうなずいた。
「葵ちゃん、考えてみてよ。あなたは実は魔法使いなんですって言われて、すぐに信じる?」
「へ? えー……信じたい」
「そうそう。信じきれない。どうする? 何か調べる? 呪文を唱えてみる? 自分と向き合う? きっと悩んだりあれこれ試したりするよね。もし宇宙人だと知らされても、それはただのきっかけ。言われて素直に『そうなんだ』と思い込んだだけでは自覚したことにならないんだよ。自称魔法使いでも、魔法が使えなかったら意味ないでしょう」
「教えてもらってただ信じるの、洗脳と同じでし。自分のこと見えていないでし」
「洗脳……」
「そうでし。自分の心乗っ取られるの、怖いでしよ。例えば、ほら」
銀太郎は私に腕を伸ばしてきて、目の前で人差し指をクルクル回し始めた。
「アオイ様、あなたは銀太郎が好きになる。好きーになある。大好きなのでし」
はい?
指の向こうの銀太郎は笑っちゃうくらい真剣に私を見つめている。
「さあ、思ったことを素直に言うでしよ。あなたは銀太郎が好きでしー」
なにおバカなことしているのよっ。
チョンッと銀太郎の指が鼻先に軽くふれた。
ふいに目が合う。
「あ……」
その瞬間、私は銀太郎を見た気がした。
蓮君の姿でも、銀色でツルツルのグレイでもなく、地球人によく似た形でまぶしく光っている。ほとんど光のかたまりみたいな存在が私を見ている。
これが、本当の……本来の銀太郎?
「こらっ、銀太郎ダメだろう! テレビでやっていた催眠術、良い子はマネしないでねって注意が出ていたのに!」
「わあ、ケイちゃんごへんははひ、もほひはへんっ」
パパに両手でほっぺたを押されながら、銀太郎は変な顔で謝っている。
ごめんなさい、もうしません。
それ、私に言ってよね。
「銀太郎、好き」
そう言わせたかったのかな?
そんなのわざわざ洗脳しなくたって……。
「え? パパなんで固まっているの?」
「葵ちゃん、今なんて……」
あ! 声に出していた⁉︎
「え、と、ちがうの。銀太郎がそう言わせたいのかなーっていう……」
「銀太郎ーっ!」
「わあっ、ごめんなさいでし!」
パパが銀太郎のほっぺたをぶにぶに引っ張りながら、葵ちゃんの洗脳を解けと怒っている。銀太郎は平謝りだけれど、そもそも変なテレビを見せたのはパパじゃないの?
本当に、二人は仲良しだな。子供みたいにじゃれあってケンカしている。
「ちょっとパパたち! うるさいんだけど、もうっ。下の階に響いちゃうでしょ!」
お母さんが部屋をのぞきに来たタイミングで、三人の変な集会は解散になった。
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