宇宙人は恋をする!

山碕田鶴

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6章 幼年期のオワリ

55.オワリ(1/43)

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「今日のチョコアイスもおいしいでしね。夏のサッパリ系ってのは氷の粒が大きいでしか。アイス屋さんの職人技、素晴らしいでし」
「製造機械の精度が高いからね。アイスクリスタルっていう氷の粒の大きさを季節によって変えているらしいよ。同じ味を大量生産できる工業技術もさすがだね。ああ、どこか見学できるアイス工場があったかなあ。試食もできるとうれしいよね」

 リビングで、棒アイスを手にキャッキャとデートプランを練り始めるパパと銀太郎がうっとうしい。
 目の前でいちゃつく二人から離れて自分の部屋に入ったとたん、ため息が出た。
 はあ。
 銀太郎は、まだウチに居候していた。
 パパが帰って来てから一週間は過ぎている。
 詳しいことはもちろん知らないけれど、銀太郎のお迎えに許可が出ないとパパは言っていた。
 宇宙人側の都合らしい。
 パパはそれ以上の事情には立ち入らない。
 たぶん銀太郎は理由を知っている。でも、何も言わない。
 遠慮しているとかワザワザ隠しているとか、そういう緊張した空気はどこにもなくて、二人にとってはこれがフツウみたいだ。
 銀太郎が出て行かないから、パパもずっと家にいる。まあ、パパの方は銀太郎と一緒にいるのが仕事だろうけれど。
 それで二人して、今日も楽しいことを考えている。
 銀太郎が近々帰るのは確かで、でもお迎えがいつ来るかわからない状況で、そわそわしたりしないのかな。いつ帰るんだろうって、気になったりしないのかな。
 あの銀太郎でもパパが連行されちゃった時はさすがに元気がなくなったのに、パパは……パパだったら、たとえ無人島に流れ着いて十年経っても変わらず楽しく生きていそうなんだよね。きっと見た目も変わらないままで。
 ……想像したら心がトゲトゲした。パパみたいな万年平常心のポジティブシンキング、私にはマネできない。
 銀太郎はパパの親友なのでしょう? 明日急に帰っちゃうかもしれないのに、いきなりさびしくなっちゃうかもしれないのに、なんで今笑っていられるのか意味不明。
 はあ。
 パパたちが楽しそうなのを素直に喜べない自分がイヤになる。
 はあ。
 お別れの決意をしたのにな。
 何度も何度もさようならってシミュレーションして、いつお別れしても大丈夫なように準備万端で、さあかかってこいって感じになったのに、銀太郎はまだ帰らない。
 ソナエアレバウレイナシ。
 毎日そう思いながら気を張って、そろそろ疲れてきたのかもしれない。
 別に、銀太郎にすぐ帰れと言いたいわけじゃないの。
 銀太郎がいるのはイヤじゃない。むしろ、いるのが当たり前なくらい自然になじんでいる。
 でも、いつか帰るんだよね?
 その日を受け入れられるように必死で努力している私の横で、パパと銀太郎という超ポジティブコンビが脳天気に明るくいちゃついている。
 何があっても動じない無敵な感じが、なぜかくやしい。
 これって、いわゆる反抗期とか?
 はあ。
 だいたい、笑っている銀太郎を見るとモヤモヤするんだよね。
 蓮君をこんなに近くで見られてラッキーって最初は思っていた。銀色ツルツルの銀太郎が変身できて良かったと心底思った。
 それなのに、今はまともに顔を見られない。
 目が合うと落ち着かない。
 なんだろう。
 中身は銀太郎でも、国民的アイドル滝川蓮君の姿がキラキラとまぶし過ぎて心臓に悪いから?
 蓮君疲れ⁉︎
 わー……ぜいたく過ぎだ。
 ……はあ。
 何回ため息をついたら、このモヤモヤが晴れるのかな?
 はあ……銀太郎、いつ帰っちゃうんだろう……。
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