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5章 星からのキカン
46.キカン(12/20)
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私ひとりがあわてている。私ひとりがさわいでいる。
「お母さんは知っていたの⁉︎」
「パパのお仕事は特別で話せないことばかりらしいのよ。だから何も知らないし、もちろん宇宙人が職員さんにいるのも知らなかったけれど、そうなのかなって」
お母さんはそういう人だった。
「そうだ、地球防衛隊! ……防衛省には、地球防衛隊を管轄する部署があって、直接宇宙人に会えるらしいって。藤井君が言っていた。藤井君は防衛省で働きたいって……。そうしたら、本当に宇宙人に会えるってこと⁉︎ パパは本当に会っちゃったんだよね? 藤井君の話、全部本当だったの⁉︎」
銀太郎は黙っている。
否定する時は即答だから、藤井君の話は本当なのだ。
パパは……ただのUFOオタクではなかったの⁉︎
立ち上がったまま、ふすまが開いているパパの部屋を見た。
今は押収されて空だけれど、本棚いっぱいに納まっていた日本が誇るスーパーミステリー雑誌「月刊ウー」は、パパにとってただの娯楽ではなかったの?
「ん? ああ、パパの荷物かい?」
パパがふり返って空っぽの部屋を見た。
「ははは。すっかり持っていかれちゃったね。でも大丈夫。取り調べが終わったから全部返してもらえるよ。ただ、パパが取りに行かないといけないんだって。送ってくれたら親切なんだけどなあ」
のんびり笑うパパは、ただのUFOオタクにしか見えない。
「『月刊ウー』を読まなくても、パパの方が宇宙人に詳しいし真実を知っていたっていうこと?」
「へ? いやあ、アレには宇宙人だけではなくて、地底人とかネッシーとか他にも面白い記事がいっぱいなんだよ? 宇宙人に関しては……まあ、世の中にどのくらい情報が出ているかとか世間の妄想理解がどの程度なのかとか、すごく参考にしているのだけれどね」
ああ、パパは本当に宇宙人担当のお仕事なんだ。
なんだろう、この脱力感。
パパがスパイだったと言われるよりもショックを受けている気がする。
あの藤井君があこがれる職業が本当にあって、しかもパパがそれをやっている?
オタクを極めるとこんなふうになるのかな。子供っぽいのに超優秀とかアリ?
だいたい、銀太郎がエースパイロットだという設定もちょっと疑っていたくらいなのに……。
「アオイ様。パパ様は超ゴユウシュウにございまづ。パパ様は、地球のオタカラでし」
銀太郎がパパをかばうように言った。なんだか必死だ。
「パパ様じゃなくて、ケイちゃんでいいよ。ずっとそう呼んでいたのでしょう?」
「……ハイ。ワレワレは、ずっとケイちゃんと呼んできましたでし」
うれしそうに、少し恥ずかしそうに笑う銀太郎からは、パパが宇宙人たちに信頼されていることが伝わってくる。
「葵ちゃんもお母さんも銀太郎と直接接触しているから、もう宇宙人のことを隠す必要はないね。無用な心配をかけないためにも、変なトラブルに巻き込まれないようにするためにも、パパのお仕事について話しておいた方がいいね」
パパから座るように言われて、私は自分が立ちっぱなしだったことにようやく気がついた。
それくらい、頭がごちゃごちゃだった。
「お母さんは知っていたの⁉︎」
「パパのお仕事は特別で話せないことばかりらしいのよ。だから何も知らないし、もちろん宇宙人が職員さんにいるのも知らなかったけれど、そうなのかなって」
お母さんはそういう人だった。
「そうだ、地球防衛隊! ……防衛省には、地球防衛隊を管轄する部署があって、直接宇宙人に会えるらしいって。藤井君が言っていた。藤井君は防衛省で働きたいって……。そうしたら、本当に宇宙人に会えるってこと⁉︎ パパは本当に会っちゃったんだよね? 藤井君の話、全部本当だったの⁉︎」
銀太郎は黙っている。
否定する時は即答だから、藤井君の話は本当なのだ。
パパは……ただのUFOオタクではなかったの⁉︎
立ち上がったまま、ふすまが開いているパパの部屋を見た。
今は押収されて空だけれど、本棚いっぱいに納まっていた日本が誇るスーパーミステリー雑誌「月刊ウー」は、パパにとってただの娯楽ではなかったの?
「ん? ああ、パパの荷物かい?」
パパがふり返って空っぽの部屋を見た。
「ははは。すっかり持っていかれちゃったね。でも大丈夫。取り調べが終わったから全部返してもらえるよ。ただ、パパが取りに行かないといけないんだって。送ってくれたら親切なんだけどなあ」
のんびり笑うパパは、ただのUFOオタクにしか見えない。
「『月刊ウー』を読まなくても、パパの方が宇宙人に詳しいし真実を知っていたっていうこと?」
「へ? いやあ、アレには宇宙人だけではなくて、地底人とかネッシーとか他にも面白い記事がいっぱいなんだよ? 宇宙人に関しては……まあ、世の中にどのくらい情報が出ているかとか世間の妄想理解がどの程度なのかとか、すごく参考にしているのだけれどね」
ああ、パパは本当に宇宙人担当のお仕事なんだ。
なんだろう、この脱力感。
パパがスパイだったと言われるよりもショックを受けている気がする。
あの藤井君があこがれる職業が本当にあって、しかもパパがそれをやっている?
オタクを極めるとこんなふうになるのかな。子供っぽいのに超優秀とかアリ?
だいたい、銀太郎がエースパイロットだという設定もちょっと疑っていたくらいなのに……。
「アオイ様。パパ様は超ゴユウシュウにございまづ。パパ様は、地球のオタカラでし」
銀太郎がパパをかばうように言った。なんだか必死だ。
「パパ様じゃなくて、ケイちゃんでいいよ。ずっとそう呼んでいたのでしょう?」
「……ハイ。ワレワレは、ずっとケイちゃんと呼んできましたでし」
うれしそうに、少し恥ずかしそうに笑う銀太郎からは、パパが宇宙人たちに信頼されていることが伝わってくる。
「葵ちゃんもお母さんも銀太郎と直接接触しているから、もう宇宙人のことを隠す必要はないね。無用な心配をかけないためにも、変なトラブルに巻き込まれないようにするためにも、パパのお仕事について話しておいた方がいいね」
パパから座るように言われて、私は自分が立ちっぱなしだったことにようやく気がついた。
それくらい、頭がごちゃごちゃだった。
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