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5章 星からのキカン
40.キカン(6/20)
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友好的で過保護な宇宙人は、日々こっそりと地球人を守っている。
そう藤井君は信じている。
「……でも、地球防衛隊が本当に存在するなら、なんで隠されているの?」
銀太郎は地球人の都合みたいな言いぶりだったけれど。
「どこか一つの国や組織が宇宙人を独り占めしようとするとか、宇宙人が登場したら人類の歴史がおかしくなるとか、世の中がひっくり返るくらいの大混乱になるとか思っている人たちがいるからじゃないの? でも、実際に宇宙人が現れたら、みんなあっさり受け入れると思うけどな。『一八五三黒船来航』じゃなくて『二〇XX銀船来航』だね。姿を見せないのはむしろ宇宙人の都合なのだと僕は思うよ。宇宙人の技術を教えてもらっても、どうせ地球人は他の国の地球人を攻撃することしか考えないだろうから。野生動物は保護してもなるべく関わらないようにするのと一緒なんだよ、きっと。そうでなければ、地球人は実験動物とか、ね」
「……観葉植物」
「え、植物?」
「あ、なんでもない。宇宙人から見た地球人なんてペット以下で、花とかと同じあつかいかなって。どこかで聞いた話だけれど」
銀太郎に聞いた話だけれど。
「……もし、川上さんの言うように観葉植物だと思われているなら、地球人って本当に大事にしてもらっているよね。わざわざお世話して大切にして、見て満足して。自分の思いどおりにならなくても責めたりしないで。ただ立派にきれいに育つことを望んでこっそりとサポートしているのなら、宇宙人は神様目線かもしれないね」
「神様……私は、怖いな」
怖い銀太郎を思い出した。直接何かされたわけではないのに、ただそこにいるだけなのに、雰囲気が怖かった。存在が怖かった。
「神様は怖いんだよ。みんなお見通しで、ウソが通用しない。きっと心の声が聞こえているんだ」
「あ、テレパシー?」
「ははっ。急にオカルトっぽくなった」
「UFOもオカルトでしょう?」
「まあ、そうだね。信じられなければみんなオカルトだ。でも僕、テレパシー……使えるよ?」
「え⁉︎」
藤井君が真面目な顔で言う。
「本当……に?」
「うん。……川上さんは今、悩んでいる。不安でいっぱいだ」
「⁉︎」
藤井君がじっと見つめてくる。私の反応をうかがっている。
どうしよう。
ドキドキのシチュエーションなのに……怖さしかない!!
「あはは。信じた? こういうのは、顔色をうかがうって言うんだよ。川上さんは変な宗教とか占いとか気をつけた方がいいね。すぐにだまされちゃいそうだ」
「藤井君ひどいっ! びっくりしたんだからね!」
ごめんねと言って笑いながら藤井君は塾に向かった。
私はドキドキしながら、いつまでもその後ろ姿を見送った。
おだやかで優しくて、やわらかな雰囲気の藤井君は、やっぱりすてきだ。
でも同時に、元気がなさそうだったり、いらだっているのかと思ったら急に笑顔を見せたり、ものすごく不安定な感じがした。
私だって、テレパシーは使えないけれど雰囲気で察することくらいはできるよ。
藤井君は、悩んでいる。
そう藤井君は信じている。
「……でも、地球防衛隊が本当に存在するなら、なんで隠されているの?」
銀太郎は地球人の都合みたいな言いぶりだったけれど。
「どこか一つの国や組織が宇宙人を独り占めしようとするとか、宇宙人が登場したら人類の歴史がおかしくなるとか、世の中がひっくり返るくらいの大混乱になるとか思っている人たちがいるからじゃないの? でも、実際に宇宙人が現れたら、みんなあっさり受け入れると思うけどな。『一八五三黒船来航』じゃなくて『二〇XX銀船来航』だね。姿を見せないのはむしろ宇宙人の都合なのだと僕は思うよ。宇宙人の技術を教えてもらっても、どうせ地球人は他の国の地球人を攻撃することしか考えないだろうから。野生動物は保護してもなるべく関わらないようにするのと一緒なんだよ、きっと。そうでなければ、地球人は実験動物とか、ね」
「……観葉植物」
「え、植物?」
「あ、なんでもない。宇宙人から見た地球人なんてペット以下で、花とかと同じあつかいかなって。どこかで聞いた話だけれど」
銀太郎に聞いた話だけれど。
「……もし、川上さんの言うように観葉植物だと思われているなら、地球人って本当に大事にしてもらっているよね。わざわざお世話して大切にして、見て満足して。自分の思いどおりにならなくても責めたりしないで。ただ立派にきれいに育つことを望んでこっそりとサポートしているのなら、宇宙人は神様目線かもしれないね」
「神様……私は、怖いな」
怖い銀太郎を思い出した。直接何かされたわけではないのに、ただそこにいるだけなのに、雰囲気が怖かった。存在が怖かった。
「神様は怖いんだよ。みんなお見通しで、ウソが通用しない。きっと心の声が聞こえているんだ」
「あ、テレパシー?」
「ははっ。急にオカルトっぽくなった」
「UFOもオカルトでしょう?」
「まあ、そうだね。信じられなければみんなオカルトだ。でも僕、テレパシー……使えるよ?」
「え⁉︎」
藤井君が真面目な顔で言う。
「本当……に?」
「うん。……川上さんは今、悩んでいる。不安でいっぱいだ」
「⁉︎」
藤井君がじっと見つめてくる。私の反応をうかがっている。
どうしよう。
ドキドキのシチュエーションなのに……怖さしかない!!
「あはは。信じた? こういうのは、顔色をうかがうって言うんだよ。川上さんは変な宗教とか占いとか気をつけた方がいいね。すぐにだまされちゃいそうだ」
「藤井君ひどいっ! びっくりしたんだからね!」
ごめんねと言って笑いながら藤井君は塾に向かった。
私はドキドキしながら、いつまでもその後ろ姿を見送った。
おだやかで優しくて、やわらかな雰囲気の藤井君は、やっぱりすてきだ。
でも同時に、元気がなさそうだったり、いらだっているのかと思ったら急に笑顔を見せたり、ものすごく不安定な感じがした。
私だって、テレパシーは使えないけれど雰囲気で察することくらいはできるよ。
藤井君は、悩んでいる。
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