38 / 106
5章 星からのキカン
38.キカン(4/20)
しおりを挟む
どんよりしていると言われたら、そう見えてしまう。
私にとって藤井君は、その程度の距離だ。
でも、あいさつはできるようになったし、私をただのクラスの女子ではなく「川上さん」と認識してくれている。たぶん「銀太郎の知り合いの」という修飾語がついているけれど。
きっと藤井君なら、パパのことを話しても信じてくれるしわかってもらえる。きっと銀太郎のことだって、藤井君なら一緒に驚いたり笑ったりしてくれる。
……理想の押しつけかな。
それでも、今だけ、勝手に思うだけなら許してほしい。
私、本当はすごく不安なの。
パパはどうなってしまうのだろう。
これまでだってパパがいきなり一ヶ月くらい帰って来ないことはよくあった。仕事だから、どこで何をしていたのか聞いたことはないけれど。
出張のおみやげは、温泉まんじゅうとかカワイイ絵が印刷されたクッキーとか、それこそ日本全国共通の物ばかりだった。たまに海外出張だと気づいたのは、日本の空港で買ったとわかる袋におみやげが入っていたからで、行き先は不明だった。
守秘義務? 仕事の関係でそういうのがあるのだと思って、気にもしなかった。お母さんがパパの仕事内容にはふれないから、そういうものだと思ってきた。
今回は明らかに警察に行ったのだから、堂々とポリスまんじゅうとか買って来てくれるのかな?
……なんてね。笑い話で終わるといいな。
お母さんも美央たちも、みんな私を心配してくれて優しくて、でもそれなのに私は全然元気になれない。
ごめんなさいって思って、元気にしていなきゃって思って、元気にできない自分がイヤになっている。
モヤモヤが、重い。
「川上さん」
「は、はいっ⁉︎」
藤井君⁉︎
「帰らないの?」
「え?」
教室には、ほぼ誰もいなかった。登校したとたんに下校時間?
……タイムワープした?
色々考えていて今日の私は全自動運転だったのかな。記憶がない。
「大丈夫?」
ああ、藤井君にまで心配されている。
私、変だった? どうしよう、変だと思われていないっ⁉︎
「もう出ないと先生に怒られるよ?」
「うん……」
よくわからないまま、藤井君にうながされてとりあえず教室を出た。
なりゆきで一緒に歩いている藤井君のカバンには、ビニールケースに入れてキーホルダーにした宇宙人バッジがゆらゆらとぶら下がっている。
パパと、銀太郎と、藤井君と。
変なつながり。
「川上さん、銀太郎さんってまだ家にいるの?」
校門を出たところで、藤井君が遠慮がちに訊いてきた。
「え、と。まだいるよ。もうすぐ帰るみたいだけれど、たぶんまだしばらくいると思う」
「……もう一度、会えないかな?」
なんだろう。思いつめたような重い空気だ。
藤井君も悩んでいるみたいだって、ひな子が言っていた。
銀太郎になら相談できそうなのかな。
「銀太郎にお願いしてみるね」
「ありがとう」
藤井君は笑顔を見せたけれど、前ほどの元気がない。
なんだか、藤井君も大変そうだよね。
二人して、ちょっと暗い。
私にとって藤井君は、その程度の距離だ。
でも、あいさつはできるようになったし、私をただのクラスの女子ではなく「川上さん」と認識してくれている。たぶん「銀太郎の知り合いの」という修飾語がついているけれど。
きっと藤井君なら、パパのことを話しても信じてくれるしわかってもらえる。きっと銀太郎のことだって、藤井君なら一緒に驚いたり笑ったりしてくれる。
……理想の押しつけかな。
それでも、今だけ、勝手に思うだけなら許してほしい。
私、本当はすごく不安なの。
パパはどうなってしまうのだろう。
これまでだってパパがいきなり一ヶ月くらい帰って来ないことはよくあった。仕事だから、どこで何をしていたのか聞いたことはないけれど。
出張のおみやげは、温泉まんじゅうとかカワイイ絵が印刷されたクッキーとか、それこそ日本全国共通の物ばかりだった。たまに海外出張だと気づいたのは、日本の空港で買ったとわかる袋におみやげが入っていたからで、行き先は不明だった。
守秘義務? 仕事の関係でそういうのがあるのだと思って、気にもしなかった。お母さんがパパの仕事内容にはふれないから、そういうものだと思ってきた。
今回は明らかに警察に行ったのだから、堂々とポリスまんじゅうとか買って来てくれるのかな?
……なんてね。笑い話で終わるといいな。
お母さんも美央たちも、みんな私を心配してくれて優しくて、でもそれなのに私は全然元気になれない。
ごめんなさいって思って、元気にしていなきゃって思って、元気にできない自分がイヤになっている。
モヤモヤが、重い。
「川上さん」
「は、はいっ⁉︎」
藤井君⁉︎
「帰らないの?」
「え?」
教室には、ほぼ誰もいなかった。登校したとたんに下校時間?
……タイムワープした?
色々考えていて今日の私は全自動運転だったのかな。記憶がない。
「大丈夫?」
ああ、藤井君にまで心配されている。
私、変だった? どうしよう、変だと思われていないっ⁉︎
「もう出ないと先生に怒られるよ?」
「うん……」
よくわからないまま、藤井君にうながされてとりあえず教室を出た。
なりゆきで一緒に歩いている藤井君のカバンには、ビニールケースに入れてキーホルダーにした宇宙人バッジがゆらゆらとぶら下がっている。
パパと、銀太郎と、藤井君と。
変なつながり。
「川上さん、銀太郎さんってまだ家にいるの?」
校門を出たところで、藤井君が遠慮がちに訊いてきた。
「え、と。まだいるよ。もうすぐ帰るみたいだけれど、たぶんまだしばらくいると思う」
「……もう一度、会えないかな?」
なんだろう。思いつめたような重い空気だ。
藤井君も悩んでいるみたいだって、ひな子が言っていた。
銀太郎になら相談できそうなのかな。
「銀太郎にお願いしてみるね」
「ありがとう」
藤井君は笑顔を見せたけれど、前ほどの元気がない。
なんだか、藤井君も大変そうだよね。
二人して、ちょっと暗い。
1
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
鬼にかすみ草
梅酒ソーダ
児童書・童話
鬼鳴山に住む鬼の夜丸(よまる)は、人間達を襲って食う鬼の風習に疑問を持ちながら過ごしていたが、遂に集落を追放されてしまう。途方に暮れながらもお気に入りの場所であるかすみ草畑で寝転び、人と鬼が共存して生きる世界を夢見ていると、一人の少女に出会い……。
こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
スペクターズ・ガーデンにようこそ
一花カナウ
児童書・童話
結衣には【スペクター】と呼ばれる奇妙な隣人たちの姿が見えている。
そんな秘密をきっかけに友だちになった葉子は結衣にとって一番の親友で、とっても大好きで憧れの存在だ。
しかし、中学二年に上がりクラスが分かれてしまったのをきっかけに、二人の関係が変わり始める……。
なお、当作品はhttps://ncode.syosetu.com/n2504t/ を大幅に改稿したものになります。
改稿版はアルファポリスでの公開後にカクヨム、ノベルアップ+でも公開します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる