宇宙人は恋をする!

山碕田鶴

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5章 星からのキカン

36.キカン(2/20)

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「なーんか葵、元気ないよねえ」

 一緒に登校する美央が心配そうに私の肩をポンポンたたく。

「……そう?   大丈夫だよ?   あ、ほら、蓮君のDVDを見返していたら止まらなくなっちゃって寝不足で……」

 パパのことはもちろん言えない。
 宇宙人の話をするなと銀太郎に言われたわけではないけれど、国も世界も銀太郎の存在をヒミツにしている。
 だいたい、話しても誰にも信じてもらえないと思う。

「放課後の藤井とのこと、まだ引きずっているの?   大丈夫だって。あれくらい目立ったって、どうせ誰も覚えていないから」
「うん……」

 私もすっかり忘れていた。
 その後に藤井君の家に行ってパパが連行されちゃって、もうそれどころではなくなっていたから。

「私は覚えてるよー?」
「うわっ。なんで吉田ひな子が一緒に登校しているのよ⁉︎」

 さっきから後ろにくっついて歩いていたのに、美央は大げさに驚いてみせた。

「えー?   いいじゃん。どうせ向かう先は同じなんだからさあ。ねえ、葵?」
「なあんで、吉田さんが葵を呼び捨てにするのよっ」
「えー?   美央だって、今私をフルネームで呼び捨てにしたでしょ?」
「ああっ、あたしまで呼び捨て⁉︎   あたし、全然仲良くないんだけど?」
「そう?   フツーに友だちでいいじゃん」
「あんた、葵にひどいことしたでしょ!」
「いつ?」

 私の両どなりで、美央と吉田さんがバチバチけんかしている。
 十分仲良しなんじゃないの?

「私は、ひな子でいいよ?   ね、葵」
「え、うん……ひな子」

 名前を呼んだら、吉田さん、ひな子はうれしそうに笑った。美央もひな子の勢いに押されて、いきなり名前で呼び合う仲になった。
 かなり強引だけれど、悪い子ではないんだよね。

「あ、美央知ってるよね?   これ」

 いきなりタタッと走って私たちより前に出たひな子は、両手と左足を上げて叫んだ。

「かめのK!」

 通学途中の生徒がいっせいにひな子を見る。
 ひな子は全く意に介さず、堂々と笑っていた。
 すごいメンタル……というか、やっぱり小学生?

「ひな子おおーっ!」
「美央おおーっ!」

 二人はいきなり抱き合って、いきなり意気投合して、いきなり親友になった。
 推しの存在ってやっぱり神だ。
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