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5章 星からのキカン
35.キカン(1/20)
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週が明けても、パパは帰って来なかった。
それでもお母さんは不安な顔をいっさい見せない。
「パパが帰って来ないのは、いつもと同じでしょう? 防衛省にいるか警察庁にいるかのちがいだけだし」
大ちがいだと思うけれど。
「パパが連れて行かれちゃった時、近所のおうちの人がみんな見ていたよ?」
どの家の窓にも、カーテンのすき間からこっそりとのぞく目が見えていた。私がパパと話していたから、ウチだって知られているはずだ。
「ああ、それなら大丈夫。心配しないで」
「でも……」
変なウワサになるよね?
「誰もウワサはしないし、ウチに何か訊いてくることもないから大丈夫」
お母さんは自信たっぷりだ。
「ご近所の坂田さんに聞いたから。ほら、ここはみんな公務員さんでしょう? 国家機密に関わる重大案件でパパは保護されているって職場の上司に言われたんですって。外で話したりしたら、それこそ出世できなくなるって。どこのお宅でも、職場はちがっても、社宅中の人が上司から同じような注意があったんですって」
なんだかますます大変な事態になっているのでは?
それにしても、お母さんはスパイになれる気がする。ウチのことなのにどうやって聞き出したのだろう。
「あれ? 銀太郎、今朝はアイスじゃないの? かき氷?」
銀太郎はチラリと私を見たきり、下を向いてスプーンでカップのかき氷をつついている。
「……アズキ味でし」
あー…… 昨日のサイバー攻撃でソフトクリームを食べそこねたんだ。
銀太郎に元気がないのはアズキソフトのせいではなくて、やっぱりパパが帰って来ないからだ。
銀太郎が地球防衛隊のエースパイロットということは、行方不明や誘拐が地球の危機に直結するんだよね? しかも、管理の人はまだ銀太郎の安否確認ができていない状態だし。
パパは地球規模の犯罪に関わってしまった。だからすぐには帰してもらえそうにないと銀太郎はわかっているはずだ。
それなりに責任を感じているらしい。
かき氷をつつく銀色のスプーンの向こうに、銀太郎の胸元の宇宙人バッジが見えた。
まあ、何があろうとどれだけ大変なことになろうとも、パパのUFO愛は変わらないと思うけれど。
パパ……元気かな。
それでもお母さんは不安な顔をいっさい見せない。
「パパが帰って来ないのは、いつもと同じでしょう? 防衛省にいるか警察庁にいるかのちがいだけだし」
大ちがいだと思うけれど。
「パパが連れて行かれちゃった時、近所のおうちの人がみんな見ていたよ?」
どの家の窓にも、カーテンのすき間からこっそりとのぞく目が見えていた。私がパパと話していたから、ウチだって知られているはずだ。
「ああ、それなら大丈夫。心配しないで」
「でも……」
変なウワサになるよね?
「誰もウワサはしないし、ウチに何か訊いてくることもないから大丈夫」
お母さんは自信たっぷりだ。
「ご近所の坂田さんに聞いたから。ほら、ここはみんな公務員さんでしょう? 国家機密に関わる重大案件でパパは保護されているって職場の上司に言われたんですって。外で話したりしたら、それこそ出世できなくなるって。どこのお宅でも、職場はちがっても、社宅中の人が上司から同じような注意があったんですって」
なんだかますます大変な事態になっているのでは?
それにしても、お母さんはスパイになれる気がする。ウチのことなのにどうやって聞き出したのだろう。
「あれ? 銀太郎、今朝はアイスじゃないの? かき氷?」
銀太郎はチラリと私を見たきり、下を向いてスプーンでカップのかき氷をつついている。
「……アズキ味でし」
あー…… 昨日のサイバー攻撃でソフトクリームを食べそこねたんだ。
銀太郎に元気がないのはアズキソフトのせいではなくて、やっぱりパパが帰って来ないからだ。
銀太郎が地球防衛隊のエースパイロットということは、行方不明や誘拐が地球の危機に直結するんだよね? しかも、管理の人はまだ銀太郎の安否確認ができていない状態だし。
パパは地球規模の犯罪に関わってしまった。だからすぐには帰してもらえそうにないと銀太郎はわかっているはずだ。
それなりに責任を感じているらしい。
かき氷をつつく銀色のスプーンの向こうに、銀太郎の胸元の宇宙人バッジが見えた。
まあ、何があろうとどれだけ大変なことになろうとも、パパのUFO愛は変わらないと思うけれど。
パパ……元気かな。
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