宇宙人は恋をする!

山碕田鶴

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4章 コンタクト

33.コンタクト(9/10)

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 どこまでも続く草原にオレンジ色の光が広がる。キラキラと朝露が消えていく。
 私は地球のことだって、全然知らないんだ……。

「ボクはこの土地で村のみんなに大事にされて大きくなった。地球人は大好きだよ。自分に宇宙人の記憶が戻ってからも、それは変わらない。だからボクの仕事には恩返しと感謝の気持ちも入っている」

 それから、と言って銀太郎は私の手を両手で包んで自分の胸に当てた。

「ボクには大切な人を守る喜びが加わった。これからのボクは、君のために人生をささげるんだ」

 ……まるで……プロポーズ!!!?

「いやーーーーっ、手ぇ離してっ、離れてっ! あっち行ってーーーー!」

 恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!
 ダメ、顔見られない見せられないっ。

「わあ、アオイちゃん落ち着いて! ごめん、怖くないよ、ボク怖くないからキライにならないでっ」

 いやーーーーっ! ますます銀太郎がくっついてくる。
 あばれる私の横を子どもたちが笑いながら走り抜けた。
 ああ、これは銀太郎の記憶の風景だった。
 銀太郎も、ここでああやって友だちと遊んでいたんだ……。

「あれ? そういえば銀太郎の地球人時代って、なんて呼ばれていたの? 名前、あったの?」
「もちろんあるよ? 村の長老がつけてくれたから」
「ええっ? でも、名前ないって……」
「日本語の名前はなかったけど」

 ……そうだ。そんなことを言っていたかも。

「でも、地球人が発音できる名前があったのなら、私がわざわざ名前をつけなくてもよかったのに」
「ボクはアオイちゃんがくれた銀太郎という名前がとても気に入っているから、ずっと銀太郎でいい」
「そう……なの?」

 私は銀太郎じゃない銀太郎のことなんて、全然知らない。
 この草原の村で、真上にある太陽の光を浴びて、笑って、走って、星を見上げて、宇宙へ帰って……。

「銀太郎はここでなんて呼ばれていたの? 銀太郎の本当の名前はなんていうの?」

 銀太郎は、またうれしそうな笑顔を見せた。
 私がなにか訊くたびに私を見て笑うから、私はこの笑顔を見るたびにドキドキして胸が痛くなる。息が苦しくなる。
 私は銀太郎にとって観葉植物……。
 でも私は、アサガオなんかじゃない。アサガオは銀太郎に優しくされてドキドキしたりしないよ?

「ボクの本当の名前は、銀太郎。もうボクは銀太郎なんだ。あれ、怒っている? からかったわけじゃないんだけどな。ごめんね」

 銀太郎はポンポンと優しく私の頭に手を乗せた。
 観葉植物……アサガオ……。
 よくわからないけれどモヤモヤする。なんだろう、コレ?

「え、と、正式に登録されているボクの名前は『フェザ・アシュール・ラウラ・ロイ・ヤスレイ』。ここで地球人だった時はフェザって呼ばれていたんだ。長老がつけてくれた名前がフェザ。あとは元々の宇宙人としての名前だよ」
「フェザ……」
「そう、フェザ。あのね、フェザっていうのは村の人たちの言葉で『銀』という意味なんだって」
「銀⁉︎」
「うん。たぶん長老は、ボクが来た時に乗っていたUFOを見て名前にしたと思うのだけれど。ふふっ、地球人の発想ってみんな同じだよね」

 銀色だから「銀」って、私も名前につけてたーーーー!
 単純過ぎて今さらながら恥ずかしい。
 私はやっぱりアサガオレベルの地球人です……。
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