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4章 コンタクト
25.コンタクト(1/10)
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自宅のある集合住宅に帰って来ると、敷地内にワゴン車が何台も停まっていた。
ダンボール箱をかかえた人が、次々と階段を降りてくる。
「こんな時間に引っ越し?」
でも、運んでいるのは背広姿の人ばかりだ。
あれ? こういうの、見たことがあるかも。
サスペンスドラマとかニュースとかで、容疑者の自宅を捜索するという……「家宅捜索」だ!
あ、犯人っぽい人が背広の人に連行されて降りてきた。
「って、パパ⁉︎」
パパだ。え? どういうことなの⁉︎
他の家の人たちが、窓のカーテンのすき間からのぞいている。
なにコレ? なにが起きちゃったの?
「パ……」
銀太郎が私の腕をつかんで引き止めた。
目の前をダンボール箱をかかえた人たちが通っていく。
パパは私に気づいて一瞬だけ笑顔を見せた。
なんでパパは笑っているの?
いつもと同じホワンとした雰囲気のままだ。でも、この状況は全然いつもと同じじゃない。
私は銀太郎の手をふりきってパパにしがみついた。
「パパ! なにしちゃったの⁉︎ もう会えないの? 死刑になっちゃうの⁉︎」
「いや……あはは、ひどいなあ。大丈夫だよ、すぐに戻るから」
パパを連行している背広の男の人が、パパと私と、後ろにいる銀太郎を順番にじっと見た。
誰なのかとパパに視線だけで訊いてくる。
「ああ、娘の葵とカレシですよ」
銀太郎が私の腕を引いてパパから遠ざけた。
パパたちが車に向かって歩き始める。
「銀太郎、葵を頼む」
こちらを見ないままで、パパは最後に小声でそう言った。
見たことのないパパがそこにいた。
あんな真剣なパパの横顔なんて、知らない。
そして、私の腕をつかむ銀太郎の手はふるえていた。
怒っている。
銀太郎がふるえるほどの怒りを必死に抑えているのが、私にははっきりとわかった。
ダンボール箱をかかえた人が、次々と階段を降りてくる。
「こんな時間に引っ越し?」
でも、運んでいるのは背広姿の人ばかりだ。
あれ? こういうの、見たことがあるかも。
サスペンスドラマとかニュースとかで、容疑者の自宅を捜索するという……「家宅捜索」だ!
あ、犯人っぽい人が背広の人に連行されて降りてきた。
「って、パパ⁉︎」
パパだ。え? どういうことなの⁉︎
他の家の人たちが、窓のカーテンのすき間からのぞいている。
なにコレ? なにが起きちゃったの?
「パ……」
銀太郎が私の腕をつかんで引き止めた。
目の前をダンボール箱をかかえた人たちが通っていく。
パパは私に気づいて一瞬だけ笑顔を見せた。
なんでパパは笑っているの?
いつもと同じホワンとした雰囲気のままだ。でも、この状況は全然いつもと同じじゃない。
私は銀太郎の手をふりきってパパにしがみついた。
「パパ! なにしちゃったの⁉︎ もう会えないの? 死刑になっちゃうの⁉︎」
「いや……あはは、ひどいなあ。大丈夫だよ、すぐに戻るから」
パパを連行している背広の男の人が、パパと私と、後ろにいる銀太郎を順番にじっと見た。
誰なのかとパパに視線だけで訊いてくる。
「ああ、娘の葵とカレシですよ」
銀太郎が私の腕を引いてパパから遠ざけた。
パパたちが車に向かって歩き始める。
「銀太郎、葵を頼む」
こちらを見ないままで、パパは最後に小声でそう言った。
見たことのないパパがそこにいた。
あんな真剣なパパの横顔なんて、知らない。
そして、私の腕をつかむ銀太郎の手はふるえていた。
怒っている。
銀太郎がふるえるほどの怒りを必死に抑えているのが、私にははっきりとわかった。
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