宇宙人は恋をする!

山碕田鶴

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1章 未知とのソウグウ

2.ソウグウ(2/8)

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「まったく。私はあなたなんか呼んでいないよ? なんでかんちがいして来ちゃうかなあ。アイスを食べたらさっさと帰ってよね」
「ごちそうさまで、したで終わりでしか?」
「そう。さようなら」
「早くないでしか?」
「アイス食べたでしょう?」
「いえ、アイスが目的ではありませんで」
「だから、異文化交流はあなたのかんちがいです。さようなら」

 銀色のツルツルにはさわりたくないから、態度で圧力をかける。
 外国の人には、はっきり意思表示しないと伝わらないってどこかで聞いた。宇宙人もきっと同じだ。
 なんだか困っているようなので、気持ちは伝わったらしい。
 良かった。
 ホッとして改めて宇宙人を見ると、オロオロしている姿がちょっとかわいいかななんて思ってしまった。
 キモカワ程度だけれど。

「……アオイ様、スミマセン。帰れません」
「は?」

 キモカワ訂正。ぜんっぜんかわいくない。

「なんでよ? UFOは? さっき光っていた三角形のに乗っていたんでしょう?  UFOを呼んで帰るんじゃないの?」
「勢いで飛び降りてしまいますた。UFO自動運転でし。戻って来るの、ないでしよ」
「じゃあ、歩いて帰れば?」
「いやあ、さすがにこの姿はアヤシイでし?」

 自覚あるのか。

「じゃあ、どうするのよ?」

 ハイと返事をすると、宇宙人は背筋を伸ばしてしっかり正座をした。
 正座の宇宙人って、置き物みたいだ。

「どうかしばらくここに置いて下されなのでし、アオイ様」

 時代劇で見たようなおじぎをして、私の返事を待っている。

「却下。だいたい、なんで後先考えずここに来ちゃったの? だれかに見られて通報されてつかまっちゃうかもしれないでしょう? 宇宙人に人権なんてあるの? 捕まって動物園行きとか見世物にされるとか、解剖されちゃうとか……危ないでしょう?」
「アオイ様、優しいです。ナクペンダ……」
「え?  なく……何?」
「ああ、ごめんなさいでし。日本語だと……ひとめぼれでし。米じゃなくて、フォーリンラヴ。ワタシはアオイ様が好きになりますた」
「好き⁉︎」
「ハイ。好き好きでし」
「大好き……?」
「それでし!」

 人生初の告白が……宇宙人⁉︎

「黒歴史」
「ひどい……。アオイ様はこんなに愛らしくて優しいでしから、みんなアオイ様好きになりましよ。アイスくれますた」
「アイスにつられただけじゃない」
「アイスはチョコ味一番でし。くれたバニラおいしかったでしけど、だからつられていないのでし」
「あー……次はチョコアイス、ね」
「アオイ様、ワタシの愛、信じない」
「初対面で全然知らないのに、なんで好きなのか意味不明。だいたい、ウチにはパパとお母さんもいるよ?  バレたらどうするのよ?  ここ、集合住宅なんだけど?  近所の人にすぐ見つかっちゃうよ?」
「パパと……オカーサン?  そのセット、正しいでし?」
「え?  ああっ、日本語細かいなあ。いいの!  ウチはそう呼んでいるの。パパは仕事で帰って来ないことが多くて、たまに会うと『パパですよー』って言うから、パパでいいの!」
「日本、赤ちゃんに自己紹介、パパでちゅよー言いましね。テレビで見ました」
「……そうだね。ウチのパパは、いまだにそれだ。とにかく、だからウチは無理」

 こんなのと同居なんて絶対にイヤだ。
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